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犯人特定

 空き教室に、一人の生徒が入ってくる。


「何度もすみません」

「また取り調べですか? もう話せることは話しましたけど……」

「いや、今回は取り調べじゃないんです」


 そう言いながら後ろに控えていた式が姿を現す。


「この殺人事件に決着をつけるためにあなたを呼んだんです」

「決着?」

「ええ。今ならまだ間に合います。だから自首してください」

「……」


 返事はない。

 だがその表情から迷いが見えるのは明白だった。


「言いだしづらい気持ちはわかります。けど普通に逮捕するのと自首するのでは今後が違ってくるんです」

「……」


 まだ口を割らない犯人に対し、式は切羽詰まった表情で説得する。


「……わかりました。じゃあ俺が今からこの事件の真相を話します。もしあなたの分かる範囲で間違いがあったら言ってください。けど間違いがなかったら、自首してくれますか?」


 声には出さなかったものの、式には彼女が頷いている様子が見えていた。


「ありがとうございます。では話しますので、しっかりと聞いててください。……遠野菜々美さん」


 式の言葉に、遠野は力なく頷いた。




「まず何故あなたが犯人だとわかったのか、その理由から話します」

「……うん」

「犯人があなただと気付いたのは、水瀬さんの遺体の傷跡についていたこの破片があったからなんです」


 式は破片が写っている写真を取り出し、彼女に見せた。


「一見木の破片のように見えますが、あなたにはこれが何なのかわかっているはずです」

「……そうね」

「これは木ではなく竹の破片だ。もちろんあなたの持っている竹刀から出たものですよね」


 遠野は何も答えない。反論もないということは肯定を意味するものだと認識した。


「それにこの傷痕。これは凶器の形を表しているんですが、こんな形をした凶器に覚えはない。それもそのはず、こんな形をした凶器は存在しないからなんです」

「……」

「じゃあこれは何なのかというと、あなたの持っていた竹刀です。もちろん普通の竹刀じゃなく、折れた竹刀だ」


 凶器の正体を露わにした式は尚も語る。


「ここからは俺の想像ですが、あなたと水瀬さんは争うことになった。その時あなたは竹刀を持っていて、水瀬さんはナイフを持っていた。彼女のナイフに対して竹刀で応戦したものの、途中で竹刀が折れてしまった。そして折れた竹刀が不運にも水瀬さんの首を貫いてしまったんだ」

「……」

「このことから、あなたは水瀬さんを殺してしまった犯人かもしれないが、俺はあなたに殺意があったとは思っていません。だから水瀬さんの殺人については偶然起こってしまった事故だと思っています」


 当時のことを思い出しているのか、遠野は目に涙を浮かべている。


「では何故こんなことになってしまったのか。そもそも何故水瀬さんと遠野さんが争うことになったのか。その理由は一つ」

「……」

「それは水瀬さんが、井田さんと吉野さんを殺害した犯人だからです」


 その言葉を聞いた遠野は、ぎゅっときつく拳を握りしめた。

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