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真夏の戦い

俺は毎朝起きると真夏と散歩に出かる。


街の外の林辺りで誰かが待っていて、そのまま合流して午前中は戦闘訓練する。


そして午後はニカナーノ達の授業を受ける。


ここの所そんな毎日を送っているのだが、真夏の様子がおかしい。


真夏がずっと『人化』のスキルを使いっぱなしなのだ。


戦闘訓練の時はみんな喜んでくれていて良いのだが問題は朝の散歩だ。


真夏は人化していても首輪と紐を付けたがるから、俺は朝から中性的な美少年に首輪をつけ紐を持って散歩する変態の様なのだ。


真夏は真夏で慣れない服に痒がったり突然脱いだりする。


「真夏、最近何してんだ?」


「おう、ロック。僕は何もしてないよ、普通の人間さ。」


こうして直接聞いても、どこから突っ込んでいいのかわからない返事しか返ってこない。


特にギルドでは様子がおかしくそわそわしている。


俺はニカナーノ先生に相談した。

「真夏の様子がおかしいのですが?」


「あぁ、それね。」


ニカナーノは魔法の玉を取り出して、真夏に向かって投げる。

「ほら真夏ボールよ、とってこい。」


優秀な真夏は嬉しそうに犬に戻りボールをとってくる。

「はっ、やってしまった。」


「はい、残念。」


真夏は俺から離れるのが嫌で俺と学校に行きたいらしい。


そこでニカナーノが出した課題がずっと人化していて、魔獣だとバレない事だった。


「僕は人間、僕の名前は真冬、雇い主の名前はロック、僕は人間、僕は人間、…。」


真夏はブツブツ言いながら、服のボタンをつけたり外したりを練習している。


絵本を読んだりお箸の練習や文字の練習もしているらしく、俺より忙しそうだ。


真夏は本当にかわいいな。

あとで毛並みを整えてあげよう。


などと考えているとニカナーノが俺の前に本を3冊も置いた。

「今日の課題はこの3冊です。

後でテストしますからね。」


俺は俺で余裕などなく、さっそく本を開いた。


一冊は地図で、もう一冊が各国の政治経済、もう一冊が歴史だった。


ニカナーノの指導は良く出来ていて、地図を視覚的に見ながら、その国の現在を知り、なんでそうなったのかと理解を深める為に歴史を学ぶ。


実に覚えやすかった。

大国とその友好国や戦争中・停戦中の国にチェックがしてあり、地図は大体の勢力図に色分けされていた。


北のウオッカニ、東のチン、中央に俺が学校に通う予定のギリス連邦、西にカクリカ主に4色に塗られていた。


「このギリス周辺は小さな国が多過ぎて覚えられないのだが、なんかアドバイスないか?」


「ギリス周辺なら覚えなくていいわ。

どうせすぐ滅んだり、独立したり繰り返すだけだから。

なんか小さな国と戦争がいっぱいあるな。

くらいの認識でいいわ。」


「テストには出ないのか?」


「今日のテストにはもちろん、学校のテストにもあまり出ないはずよ。

他国から見てこの国とあの国の戦争はどっちが正しかった。

なんてうっかり踏み込めないもの。

あえて言うなら滅んだ方が悪かったって書かれるくらいよ。」


なるほど。

そう言えば俺達の国はどうなっているんだろう?


俺はアリスティーナの項目を探す。


経済。

白大猪の肉の輸出をしている。


歴史。

少数精鋭の戦争国家。

勢力拡大する程の軍事力はないが、攻め込まれた時は無類の強さを誇る。


特に国王の部隊は勝つ為には手段を選ばない血塗られた赤いコートの部隊として有名で、過去には敵兵5千人を生き埋めにした大穴作戦や、敵兵15万人を焼き殺し文字通りの地獄を地上に出現させた地獄召喚が有名である。

なおどちらも使った魔法の詳細などは不明である。


「おい、ニカナーノこれは何だ嘘ばかりじゃないか。」


「だからそう言ってるじゃない。

所詮世界の噂話を集めた程度のものなのよ。

アリスティーナの項目を読んで、肉が有名で戦争を仕掛けちゃいけないんだ。

程度でいいの。

私達もこの方が他国に攻められなくて助かるし、良く出来てるでしょ。」


なるほど。


俺は、ウォッカニ・チン・ギリス・カクリカを中心に覚えて言った。


きりの良い所で息抜きに真夏の方を見る。


真夏の周りにはたくさんの魔法で出来た蝶々が楽しげに飛んでおり、その中で左の皿から右の皿に箸で大豆を運んでいた。


真夏は何度も何度も蝶々を楽しげに見ては我慢して大豆を運んでいる。


俺と一緒に居たい。


そのためだけに、一生懸命頑張る健気でかわいい真夏。


そんな真夏を見て俺は再度自分の勉強をはじめた。


16話の誤字脱字を修正しました。

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