真夏はじめての失言。
俺は真夏を抱きしめながら一緒に無言で海を眺めていた。
真夏は嬉しそうだった。
俺は慎重に言葉を選んで真夏に言う。
「真夏は最高の相棒だよ。
真夏が助けを求める動物をほっとく様な犬で無くて良かった。
散歩は俺が背負って毎日してやるから心配するな。」
真夏は嬉しそうに首を振った。
「歩けない犬なんて群れのお荷物だよ。
僕はさっきの言葉だけで満足だからもう行って。群れのトップがこんな所で立ち止まってたらダメだよ。」
いつもみんなの事を見ている真夏が珍しく失言した。
「俺がそんな奴に見えるのか?
うちの群れのみんなはそんな奴なのか?
久しぶりに僕って言ったな。
甘えてもいいぞ。」
真夏は泣き出した。
「ちゃんと毎日背負って散歩してよ。」
「うんうん。」
「毛並みもちゃんと毎日整えてよ。」
「うんうん。」
「毎日くっついて寝てよ。」
「うんうん。」
「お風呂の後はブルブルしてもいい?」
「うんうん。」
「ご飯は毎日お肉。」
「野菜もな。」
「それからそれから…。」
寒くなって来たので焚き火をし、真夏とたくさん話した。
はじめて会った日の事。
焼肉パーティの事。
仲間達の事。
理想の散歩コースの事。
住みたい家の形と間取り。
これからの事。
「真夏が大きくなってから、いつも真夏が抱きしめて寝てるよね。
今日は真夏を抱きしめて寝てよ。」
「ああ、そうだな。」
俺達が少しうとうとしてきた頃、突然海が荒れ出した。
竜巻が起こり海水を巻き上げ、大雨を降らし、そこかしこに雷が落ちる。
「真夏、僕を置いて逃げろなんて言ったらぶっとばすからな。必ず2人で逃げるぞ。」
「うん、わかった。」
海から巨大な蛇が現れた。




