真夏回再び。
巨大なサメくらいなんとかなると思っていた時が俺達にもありました。
真夏に至っては食べる気満々でいたそうです。
想像以上に巨大なサメに俺達は闘う事を諦め話し合う事にした。
「あのー、風の精霊から紹介されて水の精霊を迎えに来た物なのですが…。」
「すいません実は僕、海で寝ているうちに入り江に来てしまいまして…。」
ようは動けなくなったから水の精霊に助けて貰っているという事だった。
真夏なら引きずって運べる様だが、それではサメが怪我をしてしまう。
う〜ん困った。
土魔法で海中を掘り入り江の開口部を深くするなんて到底出来ないし、水魔法で海の水を増やして水深を深くするなども出来ない。
やはりサメに紐をかけて引きずるくらいしかないが、それではサメが死んでしまう。
う〜んやはり無理だ。
「今回は諦めて帰ろう。」
と言ってみた。
あの優しくてかわいい真夏がこちらを睨んでいる。
真夏はいつも大正義なのだ。
いくら考えても何も思いつかないので俺は何もしないよりはいいと思い、とりあえずこの入り江から陸を通って水深の深い海へ繋がる道を滑り台の様に整備していった。
この時点で一度サメを真夏に引っ張って貰ったがやはりサメの皮膚を傷つけてしまい無理だった。
そこで俺は大量の丸太を切り地面に並べてみたがやはりサメの肌を傷つけてしまう。
う〜んやはり無理だった。
サメを滑り台に乗せてから入り江を爆破しちゃえばウォータースライダーの様になどというアニメの様な事も考えたが、サメが怪我をしてしまうし、そもそも入り江を爆破する様な魔法が使えるなら入り江の開口部を爆発させて水深を稼ぐことができる。
こうしている間にも巨大なサメがどんどん弱っていく。水の精霊が入り江の水を浄化してなんとか、サメが生きる事が出来る状態だった。
俺は詳しくないが入り江の水ではこの巨大なサメが生きる為の量が足りず、水中酸素濃度の低下やphが変化してしまっているのであろう。
俺は最後の手段に出た。
滑り台横に等間隔に巨大な水槽を土魔法で作り真夏に海水を運び入れて貰った。
そして入り江の近くの滑り台の上に土魔法で巨大な水槽を作り巨大なサメに入って貰った。
そして水槽に紐をかけ真夏に水槽ごと引っ張って貰う。
ズズズズッ、動いた。
信じられない事に真夏は巨大なサメと水が入った水槽を動かした。
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
少しずつ少しずつ1時間かけて3メートル引きずった。
ここでサメが苦しみ出した。
真夏を休ませ俺と水の精霊で滑り台横の水槽からサメの入った水槽に水を移し変える。
するとサメは息を吹き返した。
成功だ。
真夏も作戦成功に息を吹き返し、また紐を引き出した。
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
何回も何回も途中で水を入れ換えやっと三分の一程進んだ頃、サメがもういいと言い出した。
よく見ると真夏の手足の爪から血が流れ出していた。
真夏の強靭な身体も、水入りの巨大水槽の重さに耐えられなかったのである。
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
それでも真夏は水槽を引くのをやめなかった。
真夏の出血はどんどん酷くなっていった。
その様子に俺もサメも水の精霊も、もう涙が止まらなかった。
サメが「もういいです、もういいです。」と泣きながら言う。
俺と水の精霊は泣きながら水を入れ換えていく。
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
真夏は水槽を引くのをやめない。
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
真夏は時々笑顔でサメの方を振り向いた。
手足は血だらけで痛くない訳ないのに、「ぜんぜん平気だよ。」とサメを気遣っていた。
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
俺は真夏に抱き着いた。
言ってはいけないとわかっていたが我慢出来なかった。
「もうやめてくれ。俺が世界で一番大事なのは真夏だ。これ以上は真夏の足が…。散歩大好きな真夏の足が動かなくなったら…。」
「そんな事言わないで。
大好きな群れのトップの飼い主様がそんな事言うの聞きたくないよ。」
ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ、ズズズズッ。
真夏は7時間かけて水槽を海岸まで引きずった。
俺は水槽の下に履いてローラー代わりにしていた丸太を集め砂浜を掘り水槽の下に敷き詰めて縛りあげ巨大丸太船を作った。
疲れ切った真夏を陸で寝かし、何回か水換えをして待っていると、満潮が近くにつれ丸太船は水槽ごと海に浮かびだした。
巨大サメは泣きながら何度も何度もお礼を言う。
俺は真夏に伝えておくよ。と言いながら丸太船を沖に向かって漕ぎ出した。
もう大丈夫だろう。
俺は丸太船の紐を切った。
丸太はほどけ、水槽は海に沈みサメは無事に海に帰れた。
サメは何度も何度も振り返り沖に向かって泳いで行った。
俺も真夏の待つ陸へ泳いでいった。
真夏はもう起きていて、サメの泳ぐ姿を見ていた。
俺と水の精霊は契約し、早速水の精霊に水系回復魔法を習い真夏の足を治療する。
真夏は立ち上がれなかった。
火系の回復魔法、水系の回復魔法、土系の回復魔法、持っていた回復薬や薬草も全部使ってみたが立ち上がれなかった。




