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虎こそデッカーザッカー人の命や。

アレックスは貴族街で矢や魔法が降り注ぐなか、部下達に指示を出していた。


前線が大幅に動いた理由は、

ロイヤル戦士ニューサウザントクラスが一人欠けている事だった。


本来ならば塚の担当範囲だったのだ。


街をぐるりと囲う壁の門側が魔獣に壊され、そちらはすぐに乱戦になった。


そして反対側貴族街の壁がデッカーザッカー軍の魔法戦車部隊により壊され、その巻き添えでアレックスは負傷した。


アレックスはあの不思議な生地のコートを軍服の下に隠して着ていたため一命を取り留めたのであった。


破れた軍服の間から見える赤い生地を見てアレックスは思う。

俺もあの時素直にあっちに行ってしまえば良かった。


そんな事を今更考えても仕方がない。

部下にばかり負担をかけるのも忍びないので覚悟を決めてもう一戦交えようかと思ったその時その人物は現れた。


「アレックス無事か?」

一瞬幻かと思ったが確かにその人物はそこにいた。


「何しに来た?」

アレックスはその男を心配して言った。


その男はこう答えた。

優秀な人材を引き抜き登用する為に来たんだと。


そして真夏に俺をくくりつけて言う。

アレックスが信用できる部下がいるなら全員雇いたいと、焼肉仲間は既に全員救出済みとも言ってくれた。


そして老舗服屋の居場所を聞くとそちらに走って行った。

アレックスは嬉しかったが何か騙されている様な違和感も感じた、あれ?アイツあんなキャラだったっけ?



俺はアレックスの救出を終えた後、服屋の私邸に辿り着いた。貴族街にある一際でかい家だった。

壁や庭の一部から火が出ているが、門に武装した使用人達が立っていた。

大丈夫そうだ。

俺は使用人に挨拶すると部屋に案内された。

扉を開けたその先には優雅にお茶楽しむ服屋と何やらめちゃくちゃ派手な虎の服を着た男がいた。


「これはこれはいらっしゃいませ、アリスティーナ国、国王陛下。」


俺はなんか場違いな空気に負けないで答えた。

「いや国王が戦争参加すると問題があるから、三蔵に譲位して助けに来たんだけどなんか余計な事しちゃったかな?」


「左様でございましたか、余計な事など滅相もございません。些か私の想像していた事と違い驚いておりますが。

今頃は国境の警備増加と戦争商戦に夢中になられておられると思っておりました。」


なんか読まれていた感が納得いかないが、そちらの方は三蔵とニカナーノが準備しているのでよろしくお願いします。と伝えた。


派手な虎の服の男が立ち上がって、服屋に目配せする。


「丁度良いタイミングなので紹介させて頂きます。

こちら、デッカーザッカーの市場の元締めテンダイドー様でございます。」

「ご紹介に預かり光栄でございます。

テンダイドーでございます。」


なんだと。


話しを聞いて俺は驚きを隠せなかった。


2人はこの戦争が起こる前から話し合いを重ねていて、お互いの国の殺して欲しい貴族や街の壊して欲しい場所、戦後の商売について決めていた。


この家の一部も偽装の為に燃やしただけで、荷物は運び出しており古い離れや倉庫を中心に燃やしているだけで、保険にも入っているらしい。


貴族街の壁を壊したのも貴族街の壁は値段が高く直ぐに予算が出るだろうとの事だった。


キョトウもデッカーザッカーも古い都市なので貴族が威張り易い体質が残っており、定期的に勘違いして調子に乗っている悪い貴族を掃除しているそうだ。


もはや俺は何も言えなかった。


これが老舗なのだ。

俺も一応元国王だが、貴族とか身分とか家柄と言うのはこういう一部の人間の事を言うのだろう。


「ですが貴方様が国王の座を捨ててまで

アレックス達や我々を助けに来て頂けるとは本当に驚きました。」

しれっと我々の前にアレックス達が付いている。


いや、そんな事より俺の方が驚かされたよ。という言葉を俺は今更ながら飲み込む。


「信頼こそ商売の基本、そして極意でございます。ここは一つ我々も情報をお譲りいたしましょう。北の国ガガが来春アリスティーナに戦線布告予定でございます。」


なんだと!


「北の国ガガとの国境は雪深い山でございますが、今年は暖冬でございます。

キョトウとデッカーザッカーもその頃には戦後になっているので、迂闊に手が出せません。豊富な資源はあれど雪の降らない土地はガガにとっての悲願でございます。」


なるほど。


「このテンダイドーもこの話しには一枚かまして貰い等ございます。

今回の戦争を理由に、ガガの名産品の薬を買い占めさせて頂く事で援護させて頂きます。」


ん?


薬が少なくなれば確かに俺達が有利になる。


俺達が勝てば、キャンセル料や薬の逆輸出で儲けれるという事か。


いや、俺達が負ければ俺達に薬を売ってもいいって事じゃないか。


何俺に恩を売るフリして自分の儲けを確定してるんだ。


「今日あったばかりの俺達の援護を申し出てくれてありがとうございます。


では俺達が勝って薬の売り先がガガに確定になる様に武器を譲ってくれますか。


ガガは雪の降らない土地を所望との事で俺はガガの攻め込む先がデッカーザッカーの土地にならないか心配しています。


俺は人を信頼しない。

俺が信頼できると思った奴を信頼しているだけだ。


「なんやたかだか小国の国王のガキが生意気やな。わいが薬を買い占めてやる言うてるんや。感謝してればいいんや。」


「気づかないとでも思ったかがめついジジイ。薬は俺達が負けたら俺達に売れば良いだけだろ。何恩を売るフリしてやがる。

俺達は戦争するより、ガガに協力して、デッカーザッカーを滅ぼして貰ってガガに恩を売る方が楽だ。」


「この街は今わい等が包囲してるんや、生きて帰れると思うなや。」


俺達が最悪のムードになる中、アレックスを運び終わった真夏が戻ってきた。


「何このダサい格好の人。こいつデッカーザッカーの敵兵?」

「ああ、デッカーザッカーの奴だ。」


「ちょっと待て、そういうやり方は商人として卑怯やぞ。」

「先に街を包囲していると言ったのはお前だろ。それに俺は商人ではない。」


真夏は殺さない様に注意しながらテンダイドーを押さえつけた。


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