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お頭三蔵と師匠。

三蔵は気合いを入れる。

魔獣の真夏や精霊のほのかを抜かせばこの国では一番強いのは俺だ。


一番強い筈の俺が手も足も出ない。

それどころか、相手に稽古を付けられている。


こう来たらこう。

じゃあこうきたら?


言葉にされなくてもわかる。

本当に稽古をつけられている。


俺は一旦剣を納めてきちんと礼をする。

そしてもう一度剣を構えた。


三蔵は山賊の頭をやっていたが、家柄が悪いわけではない。

名家の七男坊だった。

家を継ぐわけではないので、武道の道に進み国に尽くす筈だった。


幼い日の三蔵は武芸に没頭した。

身体だけでなく心も鍛えた。

三蔵の剣筋も拳筋も心も真っ直ぐに鍛えられた。


軍に入った三蔵は家柄の良さもあり、国内の治安維持部隊、日本でいう警察の様な部隊に配属された。


武道により真っ直ぐに育てあげられた、

三蔵の心と身体は、腐りきった警察内部に耐えられなかった。


身分の低い者を庇い、孤児を拾う。

みんなを食べさせる為に、山賊になるまでそんなにかからなかった。


だからだからこそ、この闘いに負ける訳にはいかなかった。


何回も何回も剣と拳の交換が行われる。

三蔵は何回も殴られていたが、三蔵の剣は一回もカスリもしなかった。


こう来たらこう。

この技はこう返す。

このフェイントはこう使う。

こう、こう、こう、こう、こう、こう…。


やはり師匠だ!

三蔵は確信した。


三蔵は剣を振りながら言う。

「お久しぶりです。」

…。

返事はない、無言で拳だけが返ってくる。

三蔵はそれでも話し続けた。

「本当にニューサウザントクラスに入られたのですね、嬉しいです。」


これにはさすがに敵も拳を止めた。


「君は相変わらずだな、僕は君の敵だよ。僕の出世を喜んでる場合じゃないでしょ。」


「いいえ、敵でも師匠である事には変わりありません。喜ばせて下さい。」


昔の師匠はこんなには強くなかった。


いくら家柄が良くてもただの七男坊の稽古にロイヤル戦士ニューサウザントクラスを呼べる筈はない。


当時師匠は一般兵としては少し強いと言った程度だった。


師匠は、

本気で生きても遊んで生きても、

同じ人生が約束されていた三蔵に、

何事もそこそこで生きていた三蔵に、

熱くロイヤル戦士ニューサウザントクラスに入ると夢を語っていてくれた。


当時三蔵はなれる訳ないと笑っていた。

いい大人が子供みたいな事を言っていると笑った。


1週間、2週間、3週間、一緒に過ごしているうちに三蔵は、毎週師匠がちょっとずつ強くなっていくのを感じていた。


三ヶ月も経った頃には、師匠が本気でロイヤル戦士ニューサウザントクラスに入ろうとしている事を肌で直接理解した。


三蔵はただの七男坊として生きる自分との違いに衝撃を受けた。


それから三蔵は武道を極めようと師匠の後を追う事に夢中になった。


「君の話しは聞いていたよ。上司に逆らってでも身分の低い者や孤児の面倒をみていたそうじゃないか。

まさかそのまま国から土地をもぎ取って独立までするとは思っていなかったよ。


自分の力ではなく仲間の力だと三蔵は否定した。


「相変わらず君は剣も拳も心も真っ直ぐだね。そんな仲間がいる事も君の力だよ。自信を持ってかかって来なさい。」


三蔵と師匠は再び構えた。


三蔵は当時から好き好んで使っていた、二連突きの構えだ。


2人は激突した。


師匠は最初の突きを紙一重で避ける。

三蔵は無理な体勢から身体を捻り、強烈な突きを再び放つ。


これを師匠は弾きカウンターの姿勢に入る。


「おかしらー。」


草むらに隠れていた部下達がカウンターを止めた。


三蔵の隠し必殺技三日月。

二連突きの威力を全て自分の筋肉で無理矢理受け止めて、身体をきしませながらとどめの突きを放つ。


三蔵の突きが師匠の腹に突き刺さった。


「見事だ三蔵。」

「いえ、仲間の力です。」

「さっきも言ったよね、君の力だよ。」


「最初に君の仲間の女性の指示で兵が散った時、確かに相性良く組まれていたが勝てないと考えたよ。万が一勝ててもそのまま逃げると思ったし、今も周りに居たのは気づいていたが、命の危険を犯してまで、君を助けないと高を括っていた。私の完敗だ。強くなったな三蔵。」


「師匠…、ありがとうございました。」


三蔵は部下達に師匠を拘束してから動けない程度に治療して、一緒に小屋に連れて行けと指示した。


「おかしら、俺達もこのままお頭と一緒に…。」


「だめだ、ニカナーノにも言わわた筈だ。」


「お頭。」

「おかしらー。」

「おかしらー。」

「おかしらー。」

「おかしらー。」


「小屋で待っていろ。必ず生きて帰る。」


三蔵は仲間を置いて、振り返らずにほのかのもとへ走り出した。


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