逃げるっす!!
ヒタヒタと何か湿ったものが頬に触れてるような……ってうひゃひゃ! くすぐったいっす!
思わず目を開けると目の前には小さな顔……?
ど、どちら様っすか!?
ガバリと身体を起き上げるとそこに広がるのは大自然。
あー、自分気絶してたんすねぇ……。
「チッチチ! チッチチ!」
鳴き声の聞こえた方をみると先ほどの小さなお顔の方が楽しそうに跳び跳ねてたっす。
猿っすね。たぶん。
毛皮がピンク色だし、かなり小柄っすけど。
リスザルのご親戚っすかね?
……そして、自分も……猿っすね……。
いや! 贔屓目にみればかなり毛深い人間と言う可能性もあるっす!!
尻尾はあれっす、きっとアクセサリーっす。
めっちゃ自由自在に動くけどきっとおしゃれアイテムっす!
「ウッキー」
だめだぁ! 声出したらウッキーっていっちゃったっす!
6:4で猿だったのが9:1で猿になったっす!!
しょんぼりしていたら、小さなお方が心配そうに近づいてきてくれたっす。
ああ、小さいお方、体は小さいけどその心はきっとでっかいんすね。
こんな見ず知らずのお猿相手に優しくできるだなんて、何て出来たお方なんすか!
ありがとうっす! 自分昔から無駄にポジティブなのが取り柄と言われてきたっす!
こんなことじゃへこたれないっすよ!
「ウッキー!(よっしゃあっす!)」
俯き気味だった顔を上げ、自分は元気っすよと笑顔を小さいお方に向けたっす。
「チッチーチッチチチ!」
小さいお方も自分が笑ってるのをみて笑ってくれたっす。
非常に可愛らしいんすけど、自分すごいことに気づいてしまったんす。
顔を向けた先、前方二、三十メートルほど先で異様にでかいゴリラと蛇が争っていることに。
そして、そいつらは明らかにこちらに近づいていることに。
ドシンドシンと地面を揺らす音が聞こえてきたっす。
「ウ、ウッキョーー!!(お、お助けーっす!!)」
情けない声を上げながら自分は一目散に逃げ出したんすけど、なぜか小さいお方が動こうとしないっす!?
「ウッキッキ! ウッキャー!?(小さいお方! 逃げないと危ないっすよ!?)」
「チッチィ?」
こてんと首をかしげる小さいお方。
非常に愛くるしいんすけど今結構切羽詰まってるので感想言う余裕がないっす!
そして気づいたんすけど、多分猿語通じてないっすね!
とにかく、今は一刻を争うっす!
あの大怪獣戦争から逃げるのが優先っす!
というわけで、小さいお方を抱き上げて走るっす!
「チッチーィ」
小さいお方が無邪気に笑っていらっしゃるっす。
……もっと危機管理能力を持った方がいいと思うっす。
出会って数分の猿に連れ去られて喜ぶのはさすがに危険っすよ小さいお方……。
それにしても走りにくいっす!!
完全に骨格が二足歩行用じゃないっすね。
出来なくはないっすけど負担が大きすぎて、メリットがあんまりないっす。
小さいお方、背中に移動して欲しいっす。とりあえず抱っこの状態からおんぶに変更っすね!
そんでもって尻尾で小さいお方の体を固定して……よし!これで四足歩行できるっす!
ドスンドスンという音が近づいてきたので、ちらりと後ろを振り向くとうぎゃぁ! 近いっす!! デカいっす! こっちに来てるっす!!
なんでこっちに進んでるんすか?! 木よりも大きなゴリラっぽいのとそれに巻き付いてるデカい蛇が、来てるっすぅぅぅ!!
遠近感狂ってて気づかなかったっすけど、デカくないっすかね?! 全長が動物園でみたキリンさんよりデカいんすけど!!?
あとよく見たら蛇に足生えてたっす! あいつトカゲだったんすか!? それとも恐竜!? 絶滅してなかったんすか!!
とか、そんなこと考えてたらめちゃくちゃ距離が縮まってたっす!!
潰されるっす! 逃げるっす!! もっと早く動くっす自分!
必死に走ってると、目の前に洞窟が見えてきたっす。
自分達は余裕で通れるけど、蛇(トカゲ?)やジャイアントゴリラは通れないであろうサイズの入り口。
中に何がいるかわからないっすけど、今ここで走り続けるよりは生存確率が高そうっす! ええと、あのアレっす! シチューにカツってやつっす!!