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記憶の残滓っす

「くぷくぷくぷ。この程度。なら問題ない」


どうもクゥトアヌっす。

なんやかんやでお姉さんの国に向かって歩いていたんすけど、人間大のカエルとか、牙と角の生えた馬とか、殺意高めのイノシシとかがひっきりなしに襲ってきて怖いことこの上ないっす! この国物騒っすよ!?


『堕神も言ってるがこの程度なら問題にならねえよ。人間も魔族もな』


この世界の人たち強くないっすかね。

前世的に考えて今出てきた生き物はクマに襲われたのと同じくらいの脅威があると思うんすけど。


……ルルイエさんは拳一つで全て薙ぎ払ってたっすけど明らかに異常っす。

イノシシの牙は突撃槍みたいに鋭かったっすけど、ルルイエさんの拳に真正面からぶつかって砕け散ったっす。どう考えてもあれ拳に突き刺さるっすよ。というかそのまま串刺しになるっすね。


『言っとくがてめえもあの程度の相手ならやろうと思えば対処できるからな? 石魔猿(ウェルイスティティ)は防刃素材として重宝される程度には硬えからな』


ん? じゃああの牙は自分には刺さらないんすか?


『おう、とりあえず今んとこ出てきた魔獣共相手ならてめえが一方的にやられる相手はいねえよ。まあ一方的にやれる相手もいねえけどなキヒャヒャヒャ!』


んー自分は弱いから仕方ないっすね。

でも見つかったら即死って状況じゃないだけマシっすね! それだけで大分心に余裕ができるっす。


『……なんでぇ張り合いのねえ。プライドが高すぎると扱いにくいが無さ過ぎんのも問題だな……』


輪っかさんがなんかぶつぶつ言ってるっす。

まあ何を言っている(・・・・・・・)のかわからない(・・・・・・・)ので安定の放置っすね。


「くぷくぷ。クゥトアヌ。もう日が暮れる。どうする」


そんなことを考えていたら、ルルイエさんからお声がかかったっす。

おお! 確かに夕焼け小焼けがさようならしそうな時間っすね!

流石にこんな何もないところで寝てたら明日の朝には誰かのご飯になってること請け合いっす。

キャンプできそうなところを探して、焚き火とかしとけば多分野生動物は近寄らないっすよね?


『キヒヒ、確かに森に潜む存在は本能的に火を恐れる傾向が強い。焚き火なんてもの作れるなら一晩は安全だろうよ、作れりゃなキヒャヒャヒャ』


何か含みがあるっすけどとりあえずルルイエさんに野宿する旨を伝えるっす。

んで焚き火と食べ物の準備もっすね!




その後、良さげな空間をルルイエさんが見つけてくれて、食べられそうな木の実をルルイエさんが採ってくれて、焚き火をルルイエさんが熾してくれたっす。

……自分何もしてないっす!!


ルルイエさん万能説っす。開けた所を探したいと言ったらすぐに見つけてくれて、食べられそうな木の実と焚き火用の枝を探すと言ったらすぐに持ってきてくれて、流石に火起こしは自分がやるといって始めたんすけど、この手じゃやりにくく……苦戦してたら魔法ですぐに火をつけてくれたっす……。

日が落ちてしまったので仕方なかったんす……不甲斐ないっす……。

がっくりと項垂れていたらルルイエさんが、焚き火で焼いた焼き林檎(ぽいの)をこちらに差し出してくれたっす。


「くぷくぷ。くぷくぷくぷ。クゥトアヌ。食べるといい。何故うつむいているのかわからないけど。クゥトアヌは元気な方がいい」


感情の読めない瞳でこちらを見ているルルイエさん。

でも声は自分のことを心配しているのがよくわかるっす。駄目っすねぇ……本当に不甲斐ないっす。

自分にできる事なんて大して無い事くらい昔から(・・・)よく知ってるじゃないっすか。

親父殿だって落ち込む暇があるなら修練に励めと――


――今の……自分の記憶っす……?


修練……? あれは確か…………おもむろに立ち上がり、焼き林檎をルルイエさんに預かってもらい、体を動かしたっす。

自分は知っている(・・・・・)っす。体の動かし方(・・・・・・)気の流れ(・・・・)


こう(・・)やって……こう(・・)っす!!


空気を穿つ音が奔り、触れていない(・・・・・・)前方の木の幹が殴られたかのようにしなったっす。

……自分はバランスを崩したっすけど、出来たっす。


記憶を思い出した瞬間、その瞬間から記憶が消えるようにどんどん朧気になったっす。

だから、忘れる前にやらないといけない! そう思ったっす。


やったら忘れそうだったのが嘘だったかのように思い出したっす。と言っても体の動かし方や型を少しだけっすけど。

でも間違いなく、自分が人間だったときの記憶っす。


やはり自分は人間だったっす! 最近若干自信が無くなってきてたんすけど、やっぱ自分猿じゃないっすね!


「くぷくぷくぷ。クゥトアヌ。元気になった」


ルルイエさんが優しい声でこちらに焼き林檎を差し出してくれたっす。

突然意味不明な事をやった相手に対して寛大すぎるっす! ルルイエさんは本当にいい人っすね!

ありがたく受け取りほんのり暖かい焼き林檎(ぽいの)を頬張ったっす。











『――――――キヒッ』











なんか言ったっすか? 輪っかさん?


『何でもねぇよ! それよかさっきの何だよすげえじゃねえか!』


珍しくテンション高く話しかける輪っかさんと、静かなルルイエさんとともに火を囲んで楽しい時間を過ごしたっす! さあ、明日もお姉さんの国目指して歩くっすよ!

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