8/19
8.
森から少女の姿が消えて。
もうしばらくと時が経ったが。
森のピエロはきょうもひとり。
広場で少女を待ちつづけている。
きょうは来るのか、来ないのか。
ひとりで少女を待ちつづけている。
芸を忘れた不思議なピエロ。
うさぎがでてきて、やあねえ、やあねえ。
イタチがでてきて、やあねえ、やあねえ。
森のみんなはとてもしょうじき。
だからピエロは気がねなく。
きょうもひたすら待ちつづけている。
森のピエロは思い出す。
いつしか少女は言っていた。
ねえ、あなた。
こんどわたしの街へと来てよ。
街のみんながあなたを見たら。
きっとかならず人気者になるわ。
少女はいつも街から来ていた。
街がどんなところであるのか。
ピエロには知る、はずもないが。
少女がいるならいってみたい。
少女がいるならいってみよう。
森のピエロは森を出た。
生まれてはじめて森を出た。