森のピエロの十九楽章

５.

少女はじつに気まぐれに。

森の広場を訪れた。

きょうは来るのか、来ないのか。

森のピエロはやきもきとして。

近ごろめっきり、おちつかない。

あの美しい少女がきたら。

こんどは手品をみせてやろう。

いやいや、喜劇(コント)で笑わせてやろう。

ピエロは少女に魅(み)せてやろうと。

新たな芸の、技術を磨く。

少女はじつに気まぐれに。

森の広場を訪れる。

きょうは来るのか、来ないのか。

予定も知れぬ少女のために。

ピエロはひとり、芸をする。

きょうもひとりで技術を磨く。

少女はピエロの芸を観ては。

楽しそうに笑ってみせて。

ピエロが少女をからかえば。

むうとむくれて怒ってみせる。

いろんな顔を見せる生き物。

いつしかピエロは少女に惹かれた。

少女に恋を抱きはじめた。

森のピエロは少女から。

人の芸(こころ)を学びはじめた。