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4.
森のピエロが芸をするたび。
少女は顔をかがやかせ。
すごいすごいと拍手する。
おかしいおかしいと笑いだす。
こんなにいろんな顔をする。
生き物に会うのははじめてのことで。
ピエロはなんだかうれしくなって。
芸をつぎつぎ披露する。
日がおちて。
ピエロの芸もひととおり。
題目をおえた、そのときに。
少女ははじめて口をひらいた。
やさしくピエロに声をかけた。
あなた、いつもここにいるの。
また観にきても、いいかしら。
ピエロは芸の口上いがい。
言葉を発したことがなく。
答えの言葉にこまってしまうが。
お美しい、お嬢さん。
光栄至極にございます。
是非とも当座をご贔屓に。
最上級の一礼をして。
はじめての観客を送り出す。
また来るわ。
少女の背中を見送るピエロ。
その胸は。
なぜだかぎゅうと、しめつけられて。
ピエロはさびしいという気持ちをおぼえた。