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3.
あるとき風のつれづれに。
1人の少女が森へ来た。
森の広場へやってきた。
森のみどりにそぐわない。
奇抜なピエロを少女は見つけ。
小首を傾げて不思議にみつめる。
ジャグリング。
謡いに踊りに小芝居。
ピエロはひとり、いつものとおり。
芸をつづけていたのだが。
クスクスと。
楽しげに笑う少女の目線。
初めて受けた観客の目線。
なぜだかピエロの胸は高鳴る。
いつもよりなぜか、張り切ってしまう。
美しい。
少女の前でピエロはひたすら。
得意の芸を披露し続ける。
はじめて出会った美しい生き物。
みたこともない美しい生き物。
話しかけたら。
少女がいなくなってしまう。
なぜだかピエロはそんな気がして。
ピエロはひたすら芸をつづける。