第一話
誤字があっても直すかわかりません。
たぶん、面白くないと思います。
現在、制作中の小説を休憩の合間で作った作品なので、この物語も続きがいつになるか分かりません。
それぜも良ければ、暇つぶし程度にお楽しみ下さい。
「また、ぼっち確定かな……」
五月下旬、桜の花びらは既に地面で散らばり、新入生の大半は違う中学だったようだが、難なく新しい友人を作ることに成功させて、高校生活をスタートさせていた。
しかし、僕はというと、コミュ症という訳では無いのだけれど、どうも相性のよさそうな同級生がクラスに居らず、だからといって無理してまでほかのクラスを覗く理由もなく、素直に諦めていた。
中学の時からあまり友達を作ろうと思わなかったから、図書室に行くなりして、面白そうな銀河鉄道やブラックジャック等の本を読んで時間を潰せばいいやと考え、今回も三年間を過ごせばそれでいいかなと思っていた。
教室の窓際、後ろから二番目にある自分の席に座り、昨日のお昼休みに図書室で借りた本のページをめくる。ほんの数十秒ほどが経って、教室でよく聴こえる人工的な雑音が僕の耳に入ってきた。
「学校が終わったら映画に行こうぜ」
「え、いい映画でもあんの?」
教室の真ん中、自分の席でもない無人の机に尻を乗せて向き合い、無駄に大きな声で盛り上がる二人の男子。周りもあまり気にしている様子がなく、彼らは休み時間のあいだ、ずっとそんな会話をしていた。
こんなことが日常で頻繁に起こるのだから、人と関わることに興味がない僕には苦でしかない。いっそのこと、耳を塞ぎたいものだ。
放課後、いつもの様に鞄を持って、僕は二階の図書室へ向かった。三階から二階の図書室まで歩いて二分とかからない。横引きの閉ざされた扉の前で立ち止まると、窪みに手をかけてそっとスライドさせる。
「失礼します」
だれかに聞こえたかも分からない小声で言った。当然、誰ひとりとしてこちらを振り向かない。一歩足を踏み入れると、いつもの癖で周囲を眺める。すると、正面に向かって左の壁際では、カウンターの上に置かれた一台のパソコンを前に、六十後半の女性、渡辺先生がまじまじとにらめっこをしていた。どうやら図書委員の人達は先に帰ったらしい。
「はぁ……無責任だな」
本来、この学校で図書委員は先生のサポートとして、借り出されている本を確認し、期限を過ぎた本が無いかを調べる義務がある。それなのに、お昼休みの時には居た生徒達の姿が一人も見当たらない。
まあ、用事がある可能性もあるけれど。
「渡辺先生。どうしました」
「ああ、貴方は確か、いつも本を借りに来てる……えっと、名前は」
「柊木です。柊木優人です。今入ってきたばかりですが、さっきから先生、ずっとパソコンを眺めていたようでしたので」
「そう、柊木くんだったわね。思い出したわ。歳をとると目が悪くなって、画面がチカチカしてよく見えないから困っちゃうわ、まったく」
眼鏡を外してこちらを振り向いて、先生は首を傾げて苦笑した。僕も吊られて苦笑する。
いつもなら白い額縁の眼鏡をかけた男子生徒が率先して、慣れた手つきでパソコン扱い管理してるけど、どうやら今日は用事で帰ってしまったらしい。
それなら仕方ないかと納得して、お人好しな僕は一言「ちょっと失礼します」と言って、カウンター越しから慣れた手つきでマウスを動かして、先生の指示のに従って戻ってない本が無いことを確認した。
「いつも悪いわね」
笑顔を絶やさない先生に、これくらい全然と挨拶して、僕は借りていた本をついでに返却した。
いい事をした後は気分がよく、軽い足取りで下駄箱へ向かう僕は途中、廊下の窓から見えたオレンジ色の空に思わず見とれていた。
「――柊木くん?」
不意に聞こえた、自分の名前を呼ぶ女の子の声に、僕はきた廊下を振り向く。
「えっと……」
名前が出てこない。何となく見覚えのある顔だけど、クラスメイトの顔や名前もまだ覚えきれていないのに。もしかしたら他のクラスの可能性も、そう考えていると、先に彼女から口を開けた――
「無理に思い出さなくても大丈夫だよ。だって私も、貴方と話したのは今日が初めてだったから」
「……」
だったら仕方がない。話したことがないなら、覚えていなくても当然だ。しかし、僕より少しだけ背が低い彼女が何故声を掛けたのか。その疑問だけが残る。
「じつは、さっきまで図書室で椅子に座って本を読んでたんだよ。気づかなかったでしょ」
気づくはずがないよ、そんなの。僕は図書室に入ってから、周囲を見たのがほんの一瞬のこと。友人が居ない僕には他人を気にする習慣は全くと言えるほど備わっている訳がない。
そんな名前も知らない彼女の口から出てきたのは、僕には無縁と思える言葉だった。
「えっとね。私、柊木くんと友達になりたいの」
何かの聞き違いか、聞きなれない言葉を言う彼女に、僕は耳を向けて質問した。
「……ごめん。よく聞こえなかったから、もう一度言ってほしいんだけど」
「だから、友達になりたいの。友人、フレンド、オーケー?」
「いや、言い方の問題じゃなくて。友達って、なんで僕が君と」
素直に意味が分からなかった。僕と居ても得がない。なんのメリットもないのに僕なんかと、廊下に敷かれた木製の床を眺めながらそんなことばかりが頭を渦巻く。
黙りする僕を見かねて、困った顔で彼女はもう一言。
「無理にと言わないけど、黙ってるのはいただけないかな。私もすぐに返事が欲しいわけじゃないから。それとも、柊木くんは私みたいな女の子が友達だとかっこ悪いとか思ってる?」
「いや、そうじゃなく。僕はなんと言うか、友達作る理由が分からないから。それに初めて知り合ったばかりで君の名前も知らないし……」
「ホントだ! 私、まだ自己紹介もしてなかったんだね」
まだ涼しい季節、長袖の彼女は鞄を持っていない方の手で頭を軽くぽんと叩いて、明るい笑顔で笑った。自然に笑顔ができるのは羨ましいが、実際のところ、名乗らない時点で彼女のやってることは失礼だ。色々と言いたいことはあるけれど、なんかこの子と話していると疲れそうだから、ここはキッパリ断っておこう。
「名前を言わなくていいよ。僕、友達を作らない予定だから」
そう言って、名前も知らない彼女に背を向けて下駄箱を目指して歩き始めた。
「恵だよ。私の名前、紺野恵だから! 柊木くん、また明日、会おうねー」
大きな声で自己紹介をした彼女の声は、廊下の壁を反響して階段を降りる僕の耳まで余裕で届き、どういう訳か、少し心臓の鼓動が高なったような気がした。
最後まで読んで頂いて有難うございます。
感想の返事を返せないと思いますので、あらかじめご了承ください。




