1-5 清楚系美少女マイヤ姫
「ど、どちらさまでしょうか?」
とりあえず、動揺を隠すように僕は突然目の前に現れた美少女の名前を尋ねてみることにした。
「あら、お客様ですか?お父様に呼ばれてここに?」
「まああながち間違ってないけど・・・ってちょっと待った。お父様っていったい誰のこと?」
「え?」
「ん?」
なぜかその場に微妙な空気が流れた。僕なんか変なこと言ったか?
「あのー、恐縮ですがあなたのことをお聞かせ願えますか?」
「あ、そうですよね。僕はあまな・・・いや、タツキと言います。さっき王様っていう人から面倒を見てもらえるみたいな話になったのに、女に会う約束があるって言って急いで出て行っちゃったから一人取り残された感じです。」
「また女の人と遊んでるの!?もう、お父様ったら客人まで放っておいて遊びに行くなんて本当何考えてるのよ!どうやら、ご迷惑をおかけしているようで申し訳ありません。申し遅れました。私はマイヤ・クランジアと申します。」
「え、やっぱりあの王様の娘さん!?」
「はい。ご存知ありませんでした?」
僕が登場人物のビジュアルを大雑把にしか説明していないせいで、僕の驚きが十分に伝わってないかもしれないから説明しておく。まず、目の前にいるマイヤと名乗った美少女はすでに高校生、いや大学生といっても過言じゃないくらいの見た目をしている。対して、イケメンイケメンと呼んでいるせいで王様のイメージがピンときていないかもしれないけど、王様の見た目も今時の大学生と言われても違和感なんて微塵も感じないレベルだ。あの王様マジで何歳なんだよ。いや、前の娘さんが大人びているだけで実はもっと幼いとか・・・?
「私は今年で18になりますよ?」
いや、全然そんなことなかった。ていうか心の中を読まないでくれ怖い。
「ちなみにお父様の年齢は不詳ということになってます。まあ、国のみなさんはお父様が産まれた瞬間を知っている方も多いし、生誕祭を行う際に第◯回ってついてるからみんな知ってますけどね。」
「今年で何回目なんですか?」
「今年39回目が行われましたよ。」
マジかよ。あの見た目で39かよ。若すぎだろ。てか娘いるのに女と遊びに行くなよ!堂々と浮気してんじゃねえよ!?あ、もしかしてこの国って一夫多妻制だったりするか。あの王様のことだから「俺は何でも許される!」とか言って何人も奥さん作ってそうだなあ。大奥かよ。
「ところで、あなたはお父様のお知合いですよね?どういったご用件だったのかお尋ねしてもよろしいですか?」
うわ、すごく嫌な質問が飛んできた。まあ馬鹿正直に答える必要もないし適当に・・・。
「道で困っているところを王様に助けて・・・。」
「こやつは町の真ん中で下半身を露出して用を足そうとした罪で王宮に連行された犯罪者でございます。」
「兵士Aええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
ひきつった美少女の笑みが僕の目に映ったのであった。
* * *
「・・・とても信じられる話ではありませんね。」
「その反応が普通だということは重々承知していますがこれが事実なんですよ姫様。」
無言を貫き通していたはずだった兵士Aのまさかの裏切りによって全ての事情を話すことになった僕は、何とか自分の身の潔白を証明した。覚えてろ兵士A。
「つまり、あなたはこの世界の住人ではないと。」
「はい、元の世界に帰れるまでは王様が面倒を見てくださるということになっています。」
「そうですか!それはよかった。ちょうど今、私からお父様にお願いしようかと思っていたところでしたのよ。」
さっきからたまに見せてくれるこのとびっきりの笑顔が眩しすぎる。これに惚れない男はいないぞマジ。
「でも確かにこれで少し納得しましたわ。自分で言うのも変ですが、私ってこれでもまあまあ有名人だと思っていましたから。私のことを知らないって言われたときはさすがに少し驚きました。」
なるほど、それでさっきのあの微妙な空気ね。
「それにしてもお父さんと違って随分とまたしっかりしてますねえ。あの人も少しは見習えばいいのに。」
「お父様にはお父様の事情がおありなのですよきっと。あんな女たらしでいつもみんなや私に心配や迷惑をかけて、やれって言われた仕事も全部放棄して遊びに行っちゃう、どうしようもないくz・・・呆れちゃうような人ですけど、私含め国民のみんなはお父様を尊敬していますから。」
「今、クズって言いかけたよね!?絶対尊敬してないよね!?」
「いえ、ちゃんとしていますよ?お父様は世界最強の剣の使い手にして世界最強の戦士の称号を持っています。その力で、表面上では面倒だ帰りたいと言いながらも、国の治安を第一に考え、私やみんなのことを全力で守ってくれます。遊びと名目上では言っていますが、本当は町で何か不審なことがないか警備しているという面もあるんだと思います。」
確かにそれは一理あると僕は思った。何せ僕があの王様に捕まったのも、不審者がいるという通報をいち早く聞きつけてやってきたからということだろうし。それに近くにいた爺さんも王様が魔王討伐に行った方が早いだなんて言ってたし、相当な手練れであることは間違いないんだろう。
「いやまあそれでも、突然やってきた僕に突然勇者になって魔王を倒せだなんてムチャぶりを言ってくる人だしなあ。とてもまともとは思えないよ。まあ立派な人だっていうのも否定するつもりも・・・」
「・・・今なんとおっしゃいました?」
「え、いやご、ごめん!君のお父さんの悪口を言うつもりはないんだ!ただ、この短い間でいろんなことが起きすぎているせいで・・・。」
「そこではありません!その前です!」
「え?・・・僕に勇者になって魔王を倒せって言ったってとこ?」
「・・・本当に父はそう言ったのですか?」
「うん、面倒を見るんだからそれくらいしてくれみたいなニュアンスで。」
「あのクソおやじいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」
姫様の裏の顔が少し垣間見えた。そんな気がした。
なんかこの作品の登場キャラってみんな叫んでる気がする。ていうか誰かが叫んで話が終わること多いよねこの作品。