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科学と愛は冒険の始まり  作者: トレア
第1章 
6/72

1-4 一回でいいから玉座に座って人に命令してみたいよね

 「若!いったい何をお願いしているのですか!?」


 「よいではないか爺よ。タツキが勇者になって魔王討伐に行きがてら、素材を集めてタイムマシンの修理もできる!うん、我ながら素晴らしいアイデアだ。」


 「いや、待ってください!なんで魔王討伐の旅をさせられそうになっているの僕!?」


俺の名は天梨樹。現状報告といたそう。超絶イケメンは実はこの世界を統べる王様で、おそらく異世界転移をしたのであろうという僕の話をなぜか信じてくれたと思ったら突然勇者になれと言われましたとさ。


 「逆に問うが、お前はこの俺の厄介になろうという身の上で、何も俺に貢献するつもりはないということか?世界の王の預かりの身になるという栄誉を与えてもらえるというのに何も俺に恩返しをするつもりはないということか!?」


 「いや、もっと他になんかあるでしょ!?なんでこの世界についてを一切知らないやつに世界の命運託す勢いのお願いしちゃってるわけ!?」


王宮の召使いとかまあ百歩譲って警備員あたりだろうか。うん、どっちも嫌だ。


 「ガルディン様、魔王討伐は貴方様に与えられたこの国を守る義務でございます!それを他人に任せるなど言語道断でありますぞ!そもそもこやつには戦う術など身に付いておらんではありませんか!」


 「そんなもん俺が一から伝授してやればいいだけの話だ。おまけに、あんな奴の相手なんか俺がわざわざ出向くまでもないだろう。俺がちょいとタツキを鍛えてやれば魔王なんかあっという間に倒せるようになる。」


 「教える暇があるなら若が直接行った方が早いではありませんか!?」


そうだ。戦い方も知らないやつに一から教えるなんてそんな面倒ごとをする必要がどこのあるんだ。面倒くさがりがもっと面倒くさい道を選んでどうする。


 「だからそれだとこいつの目的が果たせなくなるだろう。どのみちこいつの願いを叶えるためには、こいつ自身の手で身を守る術を教える必要がある。」


「え・・・?」


思わず耳を疑いたくなるような理由がそこにはあった。どうしてそこまで尽くしてくれようというんだ?そんなに勇者とやらにはなりたくないのか?なんで、たった今最悪の出会いを果たした男にここまでしてくれる?


 「なぜこの者にそこまでしてやる必要があるのですか?この者は王を騙している可能性だってあるのですぞ!?魔王の手先かもしれないのですぞ!?」


普通ならこういう反応になる。本人である僕ですらそう思う。でもやっぱり王様は高らかに笑っている。


 「そんなの面白いからに決まってんだろ。」


 「若!?」


この王様は根っからの面白いもの好き・・・というわけではなさそうだ。こんな王様でも国として成り立っているのはこういう人柄にあるんだろうな。


 「あ、やべ。もうそろそろ行かねえと。この前の酒場の女の子に会うって約束があったんだった。じゃあ爺、後のことは任せたぞ!」


 「な、若!?まだ話は終わっておりませんぞ!?ていうか何堂々と遊びに行く宣言してるんですか!お待ちください!待たれよ若!待ってくだされ!おい、待てやクソ坊主!」


 「いや最後の方心の声漏れてるよ?」


 王様と爺さんはそのまま玉座の間を飛び出していってしまった。せっかく人が感心していたのにやっぱりこうなってしまう。ん、待てよ?


「ちょっと、僕はどうすればいいんですかあああああああ!?」


    *     *     *


 「あの、よくわからないんですが、一応王様の管理下に置かれたようなので拘束を解いてもらえますか?」


 ただずっと無言で僕の動きを拘束していた兵士を説得し、ようやく自由の身になったわけだが、結局僕はいったい何をすればいいのかさっぱりである。  


 「僕はいったい何をすればいいと思います?」


 「知らぬ。」

 「存ぜぬ。」


 「ですよねえ。」


 とまあこの調子なのでこの兵士Aと兵士Bには相談するだけ無駄である。遊ぶ約束とか言ってたしここで待っててもしばらく帰ってこなさそうだしなあ。あの爺さんごときじゃ止められそうにないしなあ。王様無責任というか自由すぎというか。この世界本当にうまく回ってんのか?いや、魔王とかいう言葉が出てきてる時点でお察しか。なんかちょっとだけわかってきたぞ。これってよくある・・・


 「異世界にタイムスリップしたら王様に会って、仲間とか最強の武器とかもらって魔王討伐しに行く系のやつか!」


 昔観ていたアニメの知識を引きずり出しずつ、少しずつ状況を把握してきた。よく考えると、この世界に来てからタイムマシンの中で籠って、王様に宮殿に連行されては、怒涛のイベントラッシュだったからこうしてこの世界について冷静に分析する暇がなかった。今ここにきてようやく外に出ることができたんだ。もう少し宮殿の中を旅してみようか。でもあの王様のことだ。きっと僕の変態騒動の釈明なんて行ってくれているはずがない。外に出て下手に騒ぎになるのはもうごめんだなあ。せっかくだしもう少し状況を考えてみるか。

 タイムスリップ当初、ここが過去なのか未来なのかという疑問に至ったわけだが、答えはおそらくそのどちらでもなくここは全く違う世界、異世界であろうという分析がおそらく成り立つ。そもそもガルディンなんて名前の王様が統べる国なんて聞いたことがない。それも、世界で一番偉いと言われているくらいだから、僕の知っている世界でも、その過去でも一度くらいは耳にしているはずだ。未来説は未だに謎が多いけど、ここが異世界とほぼ断定できる理由が、さっきも言ったアニメ展開にそっくりだということ。まずそもそも、この先の未来に魔王なんてものが現れていたらたまったもんじゃない。

 ここで気になるのは、どうして時空の超越ではなく世界線を超えてしまったのかという問題。ここに関しては本当に謎が多い。まさか、タイムスリップの反動についていけなくて死んでしまったとか!?そうか!死んでしまったから、アニメのように異世界で転生したっていうパターンもあり得るのか!いや、でも僕はずっとタイムマシンに乗っていた記憶はずっと持っている。空間を超越した光だってこの目で見ている。実際、こちらの世界と扱いこそ違えど、タイムマシンは僕とともにこっちの世界にやってきている。タツキは死んでしまった!説はないか。だとしたらなぜこの世界に・・・?


 「あーもう!ますます謎だ!さっぱりわからん!まだ情報が足りなさすぎる!こっちに来てからこんなことばっかりじゃないか!」


 僕が胡坐をかいて玉座の前でひたすらぶつぶつ物思いに耽ってからどれほどの時間が経ったのだろう。兵士ABのコンビは僕のことを未だに警戒しているようではあったけど、いつの間にか興味が失せたといった様子で玉座の間の扉の両端という警備員の定位置といえるポジションで姿勢を正していた。第三者が見たらすごくシュールな絵面だなこれ。


 「ん?」


 そんな感じで静寂が支配していたこの空間の外から、徐々にこちらに近づいてくる足音が聞こえた。そして玉座の間の扉が開かれた。そして開かれた先で見たのは、



 「お父様、また魔王様からこんなにも手紙が届いたのですが・・・ってあれ?」



 一目で心を奪われてしまいそうになるほど可愛らしい姫様のような女の子だった。


 

アイドル的な子登場なるか!?

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