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科学と愛は冒険の始まり  作者: トレア
第2章
25/72

2-10 一難去ってまた一難去ってまた一難

 「な、父さん!メイギス!いつの間にそこにいたの!?」


 突然現れた2人の男は何か抗議でもしたそうな目でこちらを見ている。


 「結構前から聞いていたよ。何か大事な話をしてそうだったからパパが気配遮断と透明化の魔法をかけていたんだけどね、って痛ててて!何するんですかパパ!」


 「いらないことを言わなくていいんだよ。おかげで・・・。」


 と言って周りを見渡すザイロンさんにはきっとその場にいた全員からの鋭いまなざしが見えていたことだろう。男が女を泣かした時くらいに冷ややかな目が集まっている。


 「はあ、そんなつもりはなかったなんて言ったって信じてもらえない流れだろうねこれは。ちょうどメイギスを連れて家のドアを開けると、どうも今日は家の中が騒がしいと思って警戒のために魔法をかけただけだなんだけどねえ。実際、見慣れない顔が1人増えているわけだし、警戒するのはもっともだろう?」


 そう言ってザイロンさんは宗次に目を向ける。いつもの適当な雰囲気ではない・・・とは言っても僕はあまりこの人に詳しいわけでもないけど、あまり感じたことのないオーラを今日の将軍からは感じる。どこか戸惑いというか、それこそ言葉通り警戒をしているような気配が。


 「・・・この人がさっきから散々悪評を流されてたこの家の真の主ということでいいのか?」


 戸惑う宗次の問いかけに周りにいた面々が顔を上下に揺らす。


 「まあ僕の自己紹介はいらないみたいだね。君のこともさっきの会話でなんとなく察しがついている。とはいえ頭がそれに追いついているかと言われると別問題なんだけどね。」


 誰にも話せと言われていないのに延々と一人語りを続けるザイロンさんのせいで、ついに場の雰囲気が不穏なものになってきた。


 「勝手に話を盗み聞きしておいて、最後の最後で水を差すなんて相変わらずいい趣味をしてるわね父さん。」


 「話の流れを理解する必要があると判断したから黙っていただけだよ。別にあのタイミングで水を差せば嫌がるだろうなんていうガルディンのようなゲスい考えは持ち合わせていないものでね。」


 イラつきを隠しきれない娘とは対照的に、父親の方は徐々にいつもの調子に戻ってきた。果たしてどっちの方がよかったのかは知らんが。それよりも、もう一つこちらとしては気になることがある。


 「お嬢、あの子供はいったい誰だ?」


 「あーメイギスは私の弟です。4人姉弟なんですよ我が家は。3つ下の弟と9つ下の双子の弟妹がいるんですってそういえば言い忘れてましたね。」


 3つ下と言うと、15歳だからちょうど中3くらいになるのか。なるほど、反抗期真っただ中と言わんばかりの憎たらしい表情である。双子は9歳だから小3か。あのエネルギー量もまあうなずける。


 「勝手に人の個人情報をばらすなんて相変わらずデリカシーの欠片もないよね姉さんは。ま、いずれはこの国で最強の魔術師になる予定だし、名前なんていつかはバレるものなんだけど。」


 「あんなこと言っておいて、あの子ったらなぜか父さんにべったりで未だにパパ、パパって後ろ追っかけているんですよ。全く、あれのどこがいいんだか・・・。」


 「だーかーらー、個人情報をばらさないでくれますか!?マナーというものがなってないよね本当。だからいつまで経っても風魔法しか使えないんだよ。」


 「は?今私を馬鹿にした?したよね?しちゃったよね!?私と風魔法を馬鹿にしちゃったよね!!???」


 あーまずい。これは完全に仲が悪い姉弟のテンプレの流れだ。


 「サラ、落ち着いて!ここで喧嘩したらシャミノ様が・・・。」


 と思ったが姫様のストップで何とか殴り合いの空気は収まりそうだ。・・・いや、殴り合いは起きそうになかったけど・・・。


 「・・・2人揃って何も言わずに勝手に外出しては、堂々と人の話を盗み聞きして、それでこの平和な空気をぶち壊して・・・。覚悟はできているのよね?」


 母親の雷が天を穿つ勢いで降り注ごうとしていた。


            *     *     *


 「それで、さっきの言葉の真意をもうそろそろ問いただそうかしらね旦那様?」


 シャミノさんの雷はザイロンさんの必死の釈明により何とか回避することができた。が、その必死の釈明(土下座)が彼の子供たちやこれから居候する予定の宗次の目の前で行われてしまったものだから、場の空気はより一層微妙なものになってしまっている。ナユリア家一門はもはや日常茶飯事だとでも言いたげな顔をしているが、初めてその現場を目撃してしまった僕と宗次、久々なのか初めてなのかわからないけど同じくその現場を目撃してしまった姫様の3人の表情は、まさにドン引きしている様子を鮮明に表していることだろう。その時に、


 「俺、この環境の中で生活すると思うと少し気が重いんだが。」


 「だ、大丈夫ですよ。ザイロン様はあまり家に帰らないってサラも言ってましたし。帰っても相手にしなければいいんですよ、ええ。」


 という宗次の珍しく弱気な発言と、姫様の久々の毒舌発言が聞けたのは個人的には収穫だった。


 「あ、ああ。その件だけは僕の言い分を聞いてもらわないといけない。君たちがいくら駄々をこねようと、シャミノが雷を落とそうとそこだけは譲れないな。」


 と先ほどまでひたすら謝り続けていた男が急に、毅然とした態度でさっきの自分の発言の正当性を主張し始めてきた。


 「まさか母さんまでもがその案に納得するとは思っていなかったな。馬鹿な姉さんはともかく、この世界の掟をよく知っているはずのあの母さんが。その異世界から来たとかほざく男たちにたぶらかされるなんて、ほんとこれだから女という生き物は・・・。」


 と言い放ったところで、シャミノさんの抑えていた雷がメイギスに直撃した。理解してもらえるかはともかく、とりあえずありのままに起こったことを説明すると、シャミノさんがあのガキを睨んだ瞬間に、シャミノさんの両目から水(涙?)が発射されて、それがガキの顔にヒットしたと思ったら、


 「あっつ!あっつ!」


 と声をあげてナユリア家の地面を這いずり回っているというわけだ。うん、超常現象だね。


 「次変なことを言いだしたら今のを目に当てるわよ。」


 この一言をきっかけにガキんちょは黙り込んでしまうのでした、めでたしめでたし。それはさておき、父親の方は態度を崩さず、


 「メイギスへの対処は最適だったとしても、あいつの発言内容に関しては僕も同じように思うのだが。」


 「素性もよくわからない見ず知らずの男たちに戦う力をつけさせるのはルール違反。そう言いたいのよね?」


 「・・・わかっているなら尚更君の考えを図りかねるな。元々、僕はルール通りだったとしてもタツキ君が戦う力を身につけるのにはどうも賛成しかねると思っていた。何せ今回のことはイレギュラー中のイレギュラーだ。異世界からの来訪者なんて普通は怪しまれてしかるべき存在だ。こんなことはないと信じたいが、万が一彼らが力を手にして、この国を脅かすような悪事を働いたらどうなる?」


 「あら、この子達が力を付けたら、あなたもガルディンもこの子達に負けちゃうというの?王国最強の戦士と魔術師と謳われたあなたたちが随分と弱気なものね。」


 「だから今回はイレギュラー中のイレギュラーだと言っているだろう!?すでに僕らの世界ではありえないと思っていた現象が2度も起きたんだ!少しはそのリスクについても考えたらどうだいシャミノ!」


 壮絶な夫婦喧嘩が起きている中、傍観者の立場でいた僕を含む5名は、傍観という言葉の通り、その様子をただ眺めるしかできなかった。どちらの言い分が正しいのかはわからないが、僕にはきっと今回ばかりはザイロンさんの方が正しいことを言っているのだろうという気がした。いや、きっと他の4人も同じことを思っているのかもしれない。宗次は苦虫を嚙み潰したような顔をしているし、姫様とサラもどこか沈んだ表情をしている。ただ一人ガキんちょだけは喜んでその様子を見ているのかと思ったら、さっき母親から受けた傷を癒すのに必死の様子だった。

 ザイロンさんのあの一言が場に沈黙をもたらしたので、少し気になっていたことを僕は問いかけてみることにした。


 「でもザイロンさん。どうして今更そんなことを言い出すんですか。止めるタイミングならわざわざ今日のこの時間じゃなくてもいくらでもあったでしょう。別に今日の朝でもよかったし、昨日シャミノさんに監禁されていて外に出られなかったとしても、こんな大事なことなら意地でも抜け出して王様に文句を言えたはずですよね。」


 そう問いただすと、今度は僕の方に向かって少し呆れた顔で語り始めた。


 「君がそれを言うかあ。いやまあ何も知らない君がそれを言っても責めることはできないよなあ。」


 僕の問いに対する返答の第一声が明らかに僕を馬鹿にしているのが少しイラっとくる。


 「まあいい、じゃあ君のその疑問に答えて進ぜよう。僕が急に君たちの修業を止めようとしているのは、君が今マイヤちゃんとの結婚を破棄したからだよ。」


 そしてその問いに対する答えは予想とは違ったものだった。


 「え、なんでですか?むしろ暗殺を嫌うんだったら傍に置いておく方がよっぽど危険ですよね?」


 言っていることが矛盾している。力をつけられると身に危険が及ぶからという理由で反対しているのに、結婚するなら力をつけてもいい?それこそ身に危険が及ぶ可能性が格段に上がる。単純に距離が近くなるし、その王族血合とやらで僕は更なる力を得ることができる。それこそみんなの言うことが正しければ最強の魔法を使いこなすことができるくらいには強くなれるらしいが。


 「恐らく君が考えていることはもっともだろう。だからさっき僕もルール通りだとしても賛成しかねると言ったんだ。そしたらそのルールすらも破ると君は言ったものだからこれはもう止めるしかないと思ってね。」


 その何度も繰り返し使われているルールというものがどうも引っかかる。いったいルールがなんだってんだ。


 「そのルールって一体何なんですか?姫様と結婚することがルール通りってどういうことですか?」


 「・・・そうだよねえ。おそらく君には、いやタツキ君とそこのもう一人の異世界の青年には話しておく必要がありそうだね。」


 「俺にも・・・ですか。」


 神妙な顔を崩さないザイロン将軍は、そう言って長い一人語りを始めた。


            *     *     *


 タツキ君ならもう気づいていると思うが、この国には王族と、僕らナユリア家のような王族と強いかかわりがあるような者しか戦う術を持つことを許されていないんだ。それはこの国にかつて起きた最悪の事件が大きく関わっていてね。王都全体が血に染まった最悪の事件と呼ばれている出来事が昔あったんだよ。


 ことの発端は一人の魔術師の女にあったと言われている。当時のこの国は現在とは違って、国民の皆が護身のために戦闘技術を身につけることが義務付けられていた。その時代にすでに魔獣は存在していたというのもあったが、それ以上に当時この国が荒れていて治安が悪かったというのが大きな理由みたいだね。国民同士の争いというのも昔は少なくなかったようだ。それこそ武器や魔術による桁外れのレベルの喧嘩ってやつだね。抑止力になっていたかは知らないが、誰かに襲われないように自分も強くなるという思考が全国民に浸透していた時代だったんだ。その一方で、行政の方面でも醜い役職争いが続いていたようで、とても国全体の治安なんてものに心を砕くような者なんていなかった。こうしてこの国は不安定な状態のまま何年もの時を過ごし続けていたんだそうだ。


 そんな時代の中、人一倍黒魔術、今風に言うと闇魔法に長けている少女がいた。彼女はその黒魔術を使ってこの国の外の世界で暮らしていたんだそうだ。彼女にとっては、いやきっと誰もがそう思っていただろうが、あの国はとても住み難い世界だったんだろうね。そんな彼女にとって黒魔術のセンスというのはまさに渡りに船だったんだろう。その地獄のような世界を飛び出して外の世界で生きるという、他の誰にも持ちえない新たな選択肢を与えてくれたのだから。元々黒魔術を扱えるものは極めて稀ということもあって、黒魔術の知識があるものなんていなかった。だから彼女が黒魔術を使って魔獣を使役しながら外の世界で生きていると想像できる人なんて誰もいなかったみたいだ。ましてや彼女は出生が謎だったようでね。王都に知り合いがいたのかどうかもわかっていない。

 王都を抜け出して、外の世界に住むようになっても彼女はクランジア王国のことを忘れることはできなかった。なぜなら、彼女が使役している魔獣が次々と王国の者の手によって狩られてしまうからだ。彼女も頭では理解していた。王国の民にとって魔獣は大切な食料であり、魔獣狩りをやめろと言ったら王国の民は間違いなく餓死してしまうことを。しかし、理性ではわかっていても、やはり友である魔獣が次々と殺されてしまうこの現状がどうしても彼女には耐えられなかった。


 そんな中、とうとう事件が起きてしまった。魔獣狩りの部隊が彼女の姿をとらえてしまったんだ。人間の姿の魔獣だと気味悪がりながらも襲い掛かってくる兵たちを、彼女はやむを得ず闇魔法で殺害してしまった。この出来事が王都で大騒ぎになってしまってね。魔獣を狩ることができないと、自分たちの食料が無くなってしまうのだから、王都は必死になって例の魔獣を狩るための大組織を派遣した。だが、彼女は王国の誰もが知らない闇魔法なんていう特殊な魔法を使うものだから、誰も彼女を倒すことができず骸の山を築き上げていった。

 一方の彼女も、初めは護身のためとはいえ襲ってくる兵士たちを手にかけてしまったことを悔やむ日々を続けていた。住み慣れたコミュニティーを離れて遠くの方へと足を運ぶことも考えたが、彼女の仲間であり、移動手段であった魔獣が人の手により狩りつくされていたため、それもかなわなかった。・・・今とは違い、王国の人口は多かったし、魔獣狩りも現在のように国が規制していなかったから、魔獣を狩るペースが現在とは比較にならない程に早かったんだろうね。移動手段もなく避難ができないことに加え、最強の魔獣がいるなどという噂を聞きつけて自分を殺そうとしてくる人間たちを殺めないといけない苦痛が、彼女の心は負の方向へと蝕んでいった。そして彼女は、歪みきった末に王都に大きな悲劇をもたらした。


 ここから先は黒魔術の領域だから僕もうまくは説明ができない。方法が解明されていないんだ。だから結果だけを伝えると、ある日突然王都の国民のあらゆる負の感情が爆発して、内乱が起きたんだ。国に対しての革命なんてものじゃない。ただ突然狂ったように一人一人が正気を失い始め、他者に危害を加え始めたんだ。記録によると、魔術回路が丈夫な者、まあいわゆる上級魔術師たちや、精神状態の維持が特に優れていた者には影響がなかったようだが、最終的には国民のほぼ全員が混乱状態に陥るという大事件が起きたと言われている。それが黒魔術の仕業だと気づいたのはそれからかなり後のことらしいけどね。それでも未だにその方法が明らかにされていないんだ。恐ろしい話だろ?


 とにかく、この事件は最悪な形で終結したんだ。正気を失った国民とそれを鎮圧しようとする上級魔術師の間の争いは、多くの死傷者をだしてしまった。人口の約7割が亡くなり、生き残った者たちにも大きな精神的ショックが残った。

 そして生き残った国民たちや行政に携わっていた人間たちはこの事件を神の天罰、呪いだと噂した。いざこざが絶えなかった街はすっかり大人しくなり、権力争いをしていた行政官たちは、天罰が起きた原因の擦り付け合いを始め、最終的には全員が恐怖のあまり、王宮を去って行ってしまった。


 それから数年かけて徐々に国は混乱から回復し、この過ちを繰り返さないようにと当時の王様が国民の永久の武力放棄を義務付けたんだ。 


            *     *     *


 「話はとりあえずは以上だ。わかったかい君たち?」


 長い昔話を語り終えたザイロンさんは少し疲労を浮かべた表情でこちらを見つめる。なのでこちらは素直な感想を述べることにしよう。


 「あのー、それで僕が姫様との結婚を断ったこととどう因果関係があるんですかねえ?」


 「あ、わからない?いやまあそこらへんの話は結構割愛したから仕方ないか。うん、ドンマイ!」


 「いやドンマイじゃないし!むしろ僕にとってそこが本題なんですけど!?」


 その闇魔法の少女とやらの話は知ったことではない。今国民は誰も闇魔法なんて持ってないんだから、将来的に僕がその正気を失う魔法とやらにかかって暴れまくるなんて言う心配もないでしょうに。


 「その武力を放棄しろっていう条約にはいくつか条項があってね。この国を統べる者、王族やこの先王族に名を連ねる可能性がある者、国を統べる者を補佐する役目を担う者、その他この国の生活を維持するための役割を果たすために武力を持たざるを得ない者のみ、武力の保持を許可するってことにしたんだ。」


 「だから要は、樹が姫さんと結婚することになれば、いずれ王族として名を連ねる可能性のある者として

樹は戦う力を保持する権利が与えられる。けど、今樹が結婚を断るとその条項にどれも該当しないから修業することはできねえってそう言いたいんですよね?」


 今まで黙って聞いていた宗次がここにきて抜群の理解力を見せている。こうして口をはさみ始める時の宗次は何か言いたいことがある時と決まっている。現に宗次は、何かに気づいたと言わんばかりの口ぶりで話し始めている。


 「ですが結局は姫さんと結婚しなくても樹は武力を持つ権利があると思うんですが?」


 「ほう、どうしてそう思うんだい?」


 自慢気な口調で宗次は話し始める。


 「聞いたところによると樹は今、姫さんの護衛という役割を担っていると聞いた。それに勇者なんて肩書を与えられて魔王退治に行く予定だとも聞いた。それは国を統べるものを補佐する役目を担う者とこの国の生活を維持するための役割を果たすために武力を持たざるを得ない者に値するはずだと思うんですが?」


 「残念ながら、それはどれも正式な決定ではないんだよ。あれはガルディンが勝手に言いだしていることで、正式に任命されたわけではないからそれを理由にするわけにはいかないんだよ。」


 正式な決定じゃないのに、だいぶ無茶なことを今朝言われた気がするんだが僕。


 「それに僕とサラでそれぞれガルディンとマイヤちゃんを十分護衛できている。さっき伝えた歴史のことも考えると、いたずらに戦力を増やしたくはないんだよ。」


 「俺らは戦力になったとしてもこの先元の世界に帰るつもりですから、いつかはいなくなります。その心配は必要ないかと。」


 帰るつもりはないと言ってここで水を差すのはさすがに空気が読めなさすぎるのでやめておこう。


 「それをどう証明するつもりだい?それにそのタイムマシンとやらが修理できる保証もないんだろう?そんな状態で君の言葉を鵜呑みにするのは、僕の立場上できないな。」


 「別に俺たちも戦いたいわけではないですけどね。別にタイムマシンさえ直ればこんな論争をする必要なんてないですから。」


 うん、全くもってその通りである。


 「そうだ、そもそも外の世界にタイムマシンを修理する素材があるだなんてそれすら証明されていないじゃないか。」


 それがあると信じさせられたのはむしろこちらの方である。


 「それは俺が証明してほしいくらいですね!でも外の世界に行けば修理できると聞いたからこうして問題になっているんでしょう!?」


 「全く誰だ!そんな無責任なことを言い出したのは!」


 「王様です。」

 「お父様です。」


 「やっぱりあいつかああああああ!!!!!」


            *     *     *


 現在の時刻はすでに270界(午後11時)を過ぎているが、宗次は未だにザイロンさんを論破できてはいない。姫様もお嬢もシャミノさんも度々口を挟んではザイロンさんに攻撃をしているが、彼は一歩も譲る気配はない。あ、ガキんちょはすでにお休みになりました。

 僕にとってこの論争はただただ不毛なものなんだけどねー実際。別に宗次が論破しようがしまいが、僕はいずれ姫様と結婚するつもりだし。ただ、周りに言われたから結婚するんだという雰囲気になってしまうのがどうしても気になるが、まあそれは致し方ない。こうなると宗次の了承もきっと得られるだろうし、望んだ形とは少々違うかもしれないが、最終目標は達成できるというところに変わりはないし。

 でも、このまま2人が言い争っているのを見ているのもいい加減面倒だ。何か手を打つべきだろう。


 「ザイロンさん、結局あなたは僕たちにいったいどうしろと言いたいんですか?」


 そう尋ねると、将軍は困り果てた顔でこちらを見つめてくる。


 「・・・そこが問題なんだタツキ君。ようやくそこの議論にたどり着くことができた。」


 かかった時間およそ4時間ほど、ようやく彼は本題に移ろうとしているようだ。


 「この国を護る将軍という立場としては、本当は君たちを地下に幽閉したいと思っているくらいなんだ。」


 「ちょ、ちょっと父さん!いきなり何言いだしてんのよ!」

 「ザイロン様、それはあまりにも!」


 思わず擁護の声をかけてくれる美女2人。ああ、幸せである。


 「だが!一個人としては僕も君たちが望む形でこの国に住むなり元の世界に帰るなりしてほしいとも思っているんだ。そこは信じてほしい。」


 まあそこは疑う必要はないとは思う。宗次がどう思っているかは知らんが。

 それはともかくザイロン将軍にも解決策の持ち合わせはないようだ。なんだ、散々文句ばっかり言って、じゃあお前が意見を出せって言ったら何も言わないクズみたいなことをしやがるなこの人。このままじゃ全く埒が明かんやん。


 「はあ、わかりました。じゃあとりあえず今日はここでお開きにしませんか?もうこんな時間ですし僕も姫様も王宮に帰らないといけないんで。」


 「そうよ旦那様、一国の姫様をこんな時間まで拘束したらダメじゃない。ほら、私が送っていくから今日はもう終わり!続きはガルディンがいる場でやりましょう?」


 「うーん、今日はそうするべきか。っていうかよく考えたら君、これから僕たちと一緒に住むんだったな!どうだい、初日の夜くらい一緒に風呂でも入ろうじゃないか!何か相談があるなら乗ってあげよう!」


 「ほう、風呂でもう一試合やるつもりですかい家主さん?」


 この2人、果たして仲良く共同生活を送ることができるんだろうか。とにかくシャミノさんの援護射撃もあって、今日は何とか終わりそうだ。あー疲れた。


 「じゃあタツキさん!マイヤ様!また明日です!」


 「ええ、ソージさんのことよろしくお願いねサラ。」

 「僕からも頼むよお嬢。手を焼くと思うけど粘り強く付き合ってやってくれ。」


 笑顔で手を振るお嬢に手を振り返し、僕と姫様とシャミノさんの3人は夜の街へと歩き出した。あーもう毎日毎日内容が濃すぎるんだよ。


 「何かいろいろ大変ですね勇者様。」


 「本当ですよー。次から次へと問題が出てくるんだからやってられませんよー。」


 姫様との結婚がまさかこういう展開になるとはさすがに予想外だった。姫様も自分の一生を勝手に決められてはこんな騒ぎにされてたまったもんじゃないだろう。かわいそうに。


 「勇者様が来てからいろいろ起きてますものね。何もない毎日というのも平和でいいですが、こうして色んな出来事がある毎日の方がやはりいいものですね、ふふ。」


 と思っていたが姫様は迷惑と思うどころか、意外にもこの状況を楽しんでいるのか?この状況を楽しめるというのもある意味才能じゃないかと思いますよ姫様。


 「でもきっと何とかなります!勇者様の願いはきっと叶いますよ。」


 姫様が言う願いとはきっと元の世界に帰ることを言っているのだろう。そうじゃないんだよなあ。


 「いや、まあこちらの世界に長くいられるならそれでもいいかなーとか思ったり?王宮暮らしもいいなーとか実は思ってたり?」


 とさりげなくこっちの世界にいたいアピールをしてみたけど、よく聞くと誰かに養ってもらえるのサイコー!!!って言ってるだけな件について。


 「あら、ならやっぱりマイヤちゃんと結婚すればいいじゃない!」


 「そりゃーいずれはそうするに決まってるじゃないですかシャミノさん!」



 「え?」

 「え?」


 「・・・ん?」


 あれ、今変なこと口走ったか僕? 


昔話にかなり時間を割いてしまっていつの間にか一か月ほど経ってしまいました。申し訳ない。

ストーリーも全然進んでいない。申し訳ない。

モンハンと読書とギターとオリンピック観戦のせいで書く時間がない。申し訳ない。←おい

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