2-3 勇者(職業:僧侶)
「白魔法・・・白魔法かあ・・・」
まさか非戦闘系の魔法があるなんて・・・といってもまあ死んでも生き返らせることができるって聞いていたから驚きはしないけども。でもだからといって、それをまんまと引いてしまうあたり、やっぱりどこぞの夢の世界の誰かさんが言っていたようにこの世界は僕に対する罰ゲームかなんかなのだろうか。いや、罰ゲームって言ったのは今僕の目の前にいる美姫か。
「いえ、誰も戦えないなんて言ってませんよ?むしろ白魔法は使いようによってはどの魔法よりも威力が出る最強の魔法といってもいいんですよ!?」
「さ、最強なんですか白魔法!?」
なんだよ、どうやら僕は最強になれる資格を得ていたらしい。あれ、これってやっぱり異世界転移したら最強の能力手に入れて俺つええええええええってなるやつじゃないの!?僕にもとうとうみんなから崇められる日が来たってことじゃないの!?おい、誰だよ罰ゲームとか言ってたやつ。
「白魔法の神髄はその癒しの力でもなく、目眩ましの力でもなく、他の力と合わせることで発揮されるエンハンス能力にあるんですよ。」
「エンハンス能力・・・。何かを強化するといった感じの力ですか?」
「その通りでございます。白魔法とは本来、最初にも申し上げた通り、癒しの力という他とは大きく異なるそのサポート能力が注目されていたのですが、実は剣技や他種の魔法と組み合わせて使うことで、その力をサポートするという方面にも近年注目され始めているんです。」
「例えばどういったことができるんです?」
「そうですね~。剣に光を宿すことによって相手の視界を奪いつつ攻撃ができたりしますよ。」
「おお!なんか勇者らしくない!?我が光剣エクスカリバーの前にひれ伏すがいい!!!みたいな????白魔法めちゃくちゃすごいじゃないですか!これなら僕のモチベーションも維持できそうですよ姫様!待ってろよ勇者ライフ!僕が白魔法を習得した暁には魔王なんて光の輝きで消し去ってやりますよ!」
いやまあ戦闘経験がないという大きなハンデを負っているにしても、今の説明通りになれたら姫様の言っていた通り最強の名をいただいてしまうんじゃないかな?ちょろいぜ異世界ライフ。
「ただ勇者様の場合、剣技は未知数ですが、魔法に関しては他の魔法の才能に問題があるので、戦えるようになるまでには、毎日ずっと練習してもきっと早くて3年くらいはかかるかと思いますよ?」
「・・・はい?」
え、僕あと3年はここで留年っすか?
* * *
「お、やってますねータツキさん!どうです?魔法の方はうまく扱えそうですか!?」
ピッカピカの三年生になることが確定した僕の前に満面の笑みで現れたのは、姫様の護衛にして、昨日の魔王単騎突撃事件の際に卓越した風魔法を披露して魔王の侵攻を食い止めた凄腕魔術師にして、この国最強のガルディン王の次に腕が立つザイロン将軍の娘であるサラお嬢(姫様と同じ18歳)である。
「聞いてサラ!勇者様には白魔法の適性がありましたわ!」
「白魔法ですか!?これはまた随分と珍しいところを引きましたね~。」
「いや別に自分で選んだわけじゃないからね?なんか自分が好きで白魔法選んだみたいな言い方しないでね?」
最強魔法の才能があると言われても、それを習得するために必要な他のスキルがないと言われた直後だと、やはり白魔法の適性というものがどうも喜び難いものに感じてしまうわけで。
「いやあ、いいですね~白魔法!私は白の適性はほぼ無いに等しいのでちょっぴり嫉妬しちゃいますよ。さすがは勇者様って感じですね!」
「いやそれ褒め言葉として使ってないよねサラ嬢!?」
白魔法の適性があるのがうらやましいなんて言われたところで喜べない自分がいるわけで。
「いえいえ!私は最初、タツキさんには魔法の適性なんてないと思ってましたからね!魔法を知らない世界からやってきて、魔法の適性があるわけないって思ってましたし。おまけに今一番魔術業界で熱いと噂の白魔法の適性だなんて普通にうらやましいですよ!」
「・・・そう?」
なんかお嬢が妙にハイテンションでガチな方向で僕の才能に嫉妬してくれているというのは気分がいいな。というよりなんか普通に美少女に自分の才能を褒められているって考えるとむしろ気分は絶好調といえるな!なんだよ、やっぱ最高じゃねえか白魔法!
「それで、白以外の才能はどうだったんですか姫様?」
「他は全て問題ありだったわ。」
「問題ありですか!?それじゃあ白魔法のいいところ引き出せないじゃないですか!ドンマイですねタツキさん!」
「おいさっきまでのちょっとした優越感返せ小娘。」
あ、補足を加えるとサラ嬢は決して「小」娘ではない。高身長(172くらいか?)でスレンダー、出るところはしっかり出ているという、スタイルに関しては非の打ち所がない。ちなみに姫様も背がお嬢よりも低いところを除けば実に整っている。まさに、世の男たちの理想をギュッと詰め込んだ二人組といえる。最強かよ。
てかまず、僕のこの場違い感よ。ただの眼鏡かけた普通の顔立ちの、(本来なら)社会人2年目の男に見合うような方々ではない。並みの身長だし、研究ばっかりしてたから中学までに培った筋肉もすっかり衰えてヒョロヒョロやし。そんな奴がその美少女に対して小娘呼ばわりしている現場を世間の男達に見られた日には、果たしてどんな妬みの罵詈雑言を浴びせられることやら。
「おう、俺の愛しの娘の護衛を小娘呼ばわりとは言うようになったじゃねえか勇者さんよお。」
「頼むから一回くらいは普通に姿を現してくださいよ王様!」
まあ国一番のモテ男に見られた場合は例外ということで。あと、いつもいつも僕がびっくりするようなタイミングで登場するのやめてくださいいつか心臓止まりそうなんで。
* * *
「ほう、お前は白魔法に適性が出たのか。ある意味お前にはピッタリの魔法じゃねえか?」
とりあえず、王様にも今日一日の出来事を全て話してみた。僕たちがこんな内容の濃い一日を過ごしていた間、やはり王様はいつも通り町の警備(自称)を行っていたらしい。よく一緒に警備を行っていたザイロン将軍は、今日はどうやら昨夜帰宅後に奥さんという名の雷に直撃して自宅安静の状態らしい。ざまあ。
「でも、さっきも言いましたけど僕にはほかの魔法の適性がないんですよ?その状態でどうやって勇者なんていう大仕事が務まるんですか。勇者っぽくないじゃないですか。」
「いやあ、だってお前がなんか後ろの方でひっそりとうじうじしながらみんなを回復してる姿が容易に想像できるからな!これじゃあ勇者なんて無理かもしれねえな!はっはっはっはっは!」
「勇者になれっていったのあんたでしょうよ!?」
相変わらずめちゃくちゃな王様に振り回され早くも疲労困憊だけど、それ以上にこの国最強の男にも回復役認定されてしまったのが普通に辛い。勇者から僧侶に転職のお知らせです。
「いやまあ大丈夫ですよ勇者様。一人でもサポート役がいてくれるだけで随分と戦いは変わりますからね。勇者様のお仕事はこの中では唯一無二の存在といっていいのですから。」
「そうそう!これからは私が攻撃して、タツキさんがマイヤ様を護ってくれたら最強の護衛タッグになれるじゃん!?」
まあ必死にさっきまでの発言を何とか前向きな方向にもっていこうとしてくれている美女二人組を見ればもはや何でもいいかと思えてくるんだけど。
「でも、やっぱり女に戦わせて男は後ろでチマチマ回復っていうのはやっぱりだっせえなあ!はっはっはっはっは!!!」
「ちょっと黙ってもらえませんか!?」
といってもやっぱり美女二人組の必死の解釈はイケメン大王様の一声で全て台無しになっちゃうんだけど。
「まあ待てタツキよ。お前に白魔法がピッタリだと言ったのにはもう一つ大きな理由があるんだよ。」
「もういいですよ聞きたくないですよ。」
「お父様、これ以上勇者様を貶すと昔みたいにまた引きこもりになってしまいますよ?」
「えー、タツキさん昔は引きこもりの親のすねかじり虫だったんですかー?引きます。」
「そこも少し黙っていただけますか!?」
フォローのつもりで今日一番のジャブを入れてくるあたり、あの二人組もしっかり父親の血を受け継いでいることがよくわかる。
「話を戻すけどよ、さっきマイヤも言ったが俺たちの中では白魔法の適性者がいねえんだよ。その白魔法っていうのはザイロンの最近の研究で分かってきたんだが、他の力と組み合わせると強ええっていうのは散々聞いたよな?」
「あーはい。この数時間で何度このやり取りしたかわからないくらいには聞きましたよ。でも結局僕にはその他の力がないということも散々言いましたよね?」
「そこで・・・だタツキよ。実は一つだけお前にその他の魔法の適性を与える方法があるって言ったらお前はどうする?」
「え!?マジですか王様!?」
「そのような方法があるのですかお父様!?」
「何ですかそれ!?私にも教えてほしいですガルディン様!」
「わりいなサラ。これはタツキにしかきっとできねえ方法なんだよ。というより今のこいつにはそれすらも拒否される可能性があるけどな。というより俺がそれを認めるのも気にくわねえというか。」
「いいですよやりますよ!僕だって戦えずに後ろで見てるだけなんて嫌ですから。言ってください。僕は何をしたらいいんですか!」
それがたとえいばらの道であろうとなんだろうと、僕にはその提案を断る気はなかった。そんなにサポート役が嫌なのかとかそういった問題ではない。これは男として生まれてきた以上、そして魔術なんてものが存在する世界に来てしまった以上、絶対に引き下がれない夢なのだ。魔法を使いこなして最強になる・・・。これは全中二病男子諸君が抱く、絶対の夢なのだ!過去改変なんて知ったことか!
「それは・・・お前が・・・。」
「僕が・・・?」
「マイヤと結婚することだ!」




