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科学と愛は冒険の始まり  作者: トレア
第1章 
13/72

EX-1 現実世界にて

番外編(?)です。番外編ということで文章も第3者視点で書きました。

 「ふう、ようやく行ったかよあいつ。」

 

 蒔田宗次は8年間にわたる長い長いミッションからようやく解放された。思えば彼の人生もまた天梨樹並みの壮絶なものである。むしろ親友の方は自らの愚かな行為によって引き起こされた悲劇であり、宗次はただその親友の八つ当たりとしか考えられない駄々によって人生を狂わされてしまった悲劇の主人公である。

 

 「さて、俺はこれからどうやって生きていこうか。」


 だが彼はその8年間に及ぶ壮絶な戦いが終焉を迎えたとは思えない曇った表情をしていた。


 時は2017年3月7日、場所は東京都のはずれにある町のさらにはずれにある一戸建ての建物。そのドアには薄汚れた文字で「天梨研究所」の5文字。先ほど熱い友情の別れを交わし過去に飛び立っていった親友を見送った蒔田宗次は、夜通しでメンテナンス作業を行っていた疲れに敗北し、その曇りの表情と共に深い眠りへと誘われていった。


            *     *     *


 そして、時は8時間経過した後の2017年3月7日。深い眠りから解放された宗次は荷物をまとめ、天梨研究所を後にしようとしていた。

 彼は一言も発することなく、ただこの先の彼の人生の筋書きだけを考えていた。24歳という年齢では、数日後に大学を卒業するライバルたちと就職という戦争を繰り広げるには少々難がある。とはいえ、今まで通り天梨家からの仕送りを頼りに生活をするというのも無理な話である。天梨家からは一応、樹がいなくなっても喜んで面倒を見るとの許可はいただいているものの、やはり親友の親に養ってもらうというのは世間体というものがどうやら気になるようである。

 

 「あれ、もしかして・・・蒔田君?」


 一人物思いに耽っている宗次は周りなど全く気にしていない。よく耳を澄ませば、それはだいぶ昔に聞いたことがあるはずの声にも反応することはない。


 「ねえ、蒔田君なんでしょ?」


 彼は心の中のモヤモヤと必死に戦っていた。それの正体が一体何なのかわからない。ようやく悪友の8年間にも及ぶ一大プロジェクトから解放された。それも当初からの計画通り、天梨樹が過去へのタイムスリップに成功するという結果と共に。宗次にとってもきっとそれが彼の目指していた終着点のあるべき形だったに違いない。しかし、その望んでいた結末を得たにも関わらず、彼の心中には得体の知れないモヤモヤが付きまとっていた。


 「あ、私のこともしかして覚えてないかな?ほら、たまに樹君とお話ししてた伊理夜玲那って覚えてないかな?一応中学2年の時に同じクラスだったと思うんだけど・・・。」


 そしてそのモヤモヤは、とうとう聞き覚えのある女性の声を伴って宗次の頭を混乱させようと・・・というところでようやく先ほどからずっと隣を歩いていた一人の女性に目を向ける。


 「うわっ!」


 「ちょ、いきなり大声出さないでよ!こっちがびっくりするじゃない。」


 蒔田宗次と伊理夜玲那は主人公よりも一足早い再会を果たした。


            *     *     *


 「蒔田君、本当久しぶりね!中学以来だよね?」


 彼女は中学時代から変わらない笑顔を見せていた。変わった点と言えば髪型が昔より長くなっていて、立派にカールなんていう高等技術を駆使しているところぐらいだろうか、などと宗次は当時と現在の彼女の姿を比較し始める。なお、過去の彼女の姿はプロローグ2話参照していただこう。


 「ああ、伊理夜はしばらく見ないうちに随分とまた綺麗になったんじゃねえか?樹が見たらきっとびっくりするな。」


 「う、うん。きっと樹君なら私のこと褒めてくれるのでしょうね。・・・・・樹君は元気にしてる?」


 当然投げかけられることが容易に想像できた質問だったが、あいにくとそれに適切な答えをどうやって返せばよいのか宗次にはわからない。とりあえず笑ってごまかしてみる。


 「元気に・・・してるんじゃねえかなきっと。」


 「樹君とは連絡取り合ってないの?」


 「とってたさ、つい数時間前まではな。それからあいつとはそれっきりだ。」


 「それっきりって、数時間前ならいたって普通でしょ~。相変わらず言い回しが独特よね蒔田君って。」


 そういって彼女は8年前と同じように笑う。決して笑わせようとして言った言葉ではなかっただけに宗次は言葉に詰まる。


 「いや、まあ言葉の通りだったんだけどな・・・。伊理夜は中学卒業してからどうしてたんだ?」


 「私は・・・。何事もなく志望校に行って、平和に高校生活を送っただけよ?大学だって実家から通える範囲で選んだ普通の大学に行って普通の大学生活を送ったわ。こう振り返ってみると中学の頃が意外と一番楽しかったのかなー・・・なんて思ったりするかな。」


 「普通・・・か。普通が一番じゃねえの?普通に日々を過ごせるってある意味幸せなことだと俺は思うぜ?」


 「あら、蒔田君は随分とこの8年間大変だったみたいだね?」


 「それはもう、人生を棒に振る勢いでこの8年間生き抜いてやったさ。」


 「ふふ、それはお疲れ様です。その8年間がいつか実るといいわね。」


 「・・・実ったんじゃねえかなきっと。それは俺にもよくわかんねえけど。実っててくれたところでもう俺には関係のない話だしな。」


 そうしてまた宗次は心の中のモヤモヤの存在を思い出す。その得体の知れないモヤモヤは相変わらず心の中でおくつろぎになっているようだ。


 「さっきからずっと浮かない顔してるね?道歩いてる時からずっと気になってたんだけど、何があったのか聞くのは遠慮した方がいいのかな?」


 「言ったところでもう終わった話だ。特にお前にこれを話してしまったらいよいよ俺の8年間無駄になる気がするしな。」


 そう、これは考えないようにしていた一つの可能性。8年前に提案したのにあっさりと断られてしまったもう一つの可能性。そしてきっと最善策であったはずの可能性。

 宗次は知っていた。タイムマシン作りなんて最初からきっと必要なかったであろうことを。わざわざ過去を遡らなくても、この伊理夜玲那という人間にだったら誠心誠意を込めて謝罪をしたら、昔のようにとはいかなくとも、きっとまた会話をするくらいのことなら許してもらえたであろうことを。

 なのに天梨樹はその可能性を一番最初に捨ててしまった。彼自身が、それをすることを頑なに拒み続けた。理由なんか知らない。きっと説明されたところで到底納得のできるものではなかっただろう。でも、その対案として天梨樹が出したもう一つの可能性には、もはや理解すら追いつかなかった。どうしてその決断に至ったのか、どうしてその決断が最善だと思ったのか、どうしてそんな馬鹿みたいな話を思いつき、実行に移そうと思えたのか。

 宗次にはもう笑うことしかできなかった。こいつがどこまで馬鹿なのか見届けることしか頭の中にはなかった。それほどまでに天梨樹という男は、宗次にとって刺激的で面白くて、かけがえのない友だった。

 

 「・・・ふふ、やっぱりこの8年間は君にとってかけがえのない8年間だったんだね。」


 「・・・ああ。きっとこの世のどの高校生や大学生よりも刺激的で、楽しい8年間を送ってきたと俺は思ってるよ。」


 宗次は笑った。親友がいなくなってから初めて、彼は心の底から笑いたいと思って笑った。


            *     *     *


 宗次は玲那と近いうちにまた会う約束をして再び帰路についた。それからほどなくして、宗次は約1日ぶりの自宅へとようやくたどり着いた。


 「しっかし、あいつが旅立った直後に伊理夜に会うとはねえ。なんというか偶然というにはあまりにも気持ち悪いタイミングというか。」


 自室に戻った宗次はさっきまでの出来事に再び疲れている頭をフル稼働させている。

 あのあまりに急な出来事は宗次に少なくない衝撃を与えていた。まるで、樹がいなくなったのを見計らって自分の前に姿を現したのではないか、なんていう妄想をしてしまうほどには今回の出来事は衝撃的だったようだ。まあ、自分の顔を見た時のあの驚きようは間違いなく8年ぶりに再会を果たした時のものだったと頭では納得しているようではある。


 「素直に、樹が巡り合わせてくれたという解釈にしておいてやるとしますかね。」


 そう口に出すと、宗次はベッドの上で大の字になり、今度は自分のこれからのことについて頭を稼働させ始めた。

 現在の彼は、親のすねをかじるしか生きる手段を持たないいわゆるニートというご身分である。親には世紀の大発明をしているからもうしばらく自由に生きさせてくれと懇願し、一応の承諾は得ている。実際、その世紀の大発明は名前通り、前人未踏の大発明の領域へと至った。残念なことに、その作り方を覚えていないせいでその作り方を広めることはできそうにない。いや、実は多少の過程は覚えているが、これで人類が次々に過去の世界へとタイムスリップした挙句、この世界の人口が減ってしまってはたまったものではないと考え、タイムマシンを世にお披露目することはしないと心に誓っていた。


 「ん、待てよ?」


 そして、その自分が立てた誓いに一つの疑問が生まれた。


            *     *     *


 「やばい、これはやばいんじゃねえかおい!?」


 それからというもの、宗次は一人で勝手に妄想に走り、その妄想に惑わされていた。


 「よく考えたらおかしいんだよ!どうして樹はこの世界からいなくなっちまったんだ!?」


 一人でたどり着いた結論に、一人で翻弄され始めていた。


 「過去に戻ったとしたら、あいつは今どうなってるんだ!?どうして何も変わっていない!?よく考えたらおかしいことだらけじゃねえか!本来なら、あいつがタイムスリップした時点でタイムマシンの存在なんてあったらおかしいんじゃねえのか!?あいつが過去に戻って伊理夜とうまくいったんだとすると、もうタイムマシンを作る理由なんてねえはずだ!というよりそもそも、俺が未だに8年間あいつと一緒にタイムマシンを作ったっていう記憶があること自体おかしいはずだ!いったいどういう理屈だ!?」


 一人こうやって謎の思考に囚われては・・・


 「いや待て、そもそもタイムスリップと言ってもこの世界の過去に飛ばされていない可能性が存在するか。別の世界線に移動したみたいな感じで。」


 と一人勝手に新たな可能性を見出しては・・・


 「待て、そもそも別の世界線って何の話だ。そんなもん本当に存在するのか!?」


 やはり一人で再び混乱に陥る。そして最終的には・・・


 「タイムマシンなんてとんでもねえものが、実際に俺たちみたいな奴らでも作れちまうんだから、もっと先の未来でこれがとっくに発明されててもおかしくねえ。じゃあなんでこの世界にはタイムスリップしてきた奴らが誰一人と存在してねえんだ・・・?」


 核心を突くような疑問へと至り、不安がいよいよ現実のものになってきていた。


 「樹はいったいどこに行っちまったんだ!?これだけの疑問があって、杞憂でしたで済むはずがねえ!あいつはタイムスリップなんかきっとしちゃいねえんだ!」



 そして彼は、とうとう気づいてしまった。彼らが8年かけて作ったものは、タイムマシンなんてものじゃなかったということを。

 

投稿遅れてすいません。というよりこれからはこんな感じで不定期になります。夏休みが終わると授業とバイトできっと定期的な更新ができないんで。なので時間に余裕ができ次第という感じになってしまいますがご了承ください。まあ、読んでくださる方がいらっしゃるのか謎ですが。

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