1-8 魔術戦
「ザイロンの娘よ、我がセイクリッドアイの力とくと味わうがいい!セイクリッドアイ、開☆眼☆」
謎の掛け声と謎のポーズとともに魔王を渦巻いていたオーラが途端に活性化を始めた。セイクリッドとかいう名前なのにオーラがドス黒いのは完全に設定間違えている感がすごいけど。そんなことより気になるのが、
「あいつ、急に老けたぞ!?」
何の副作用か知らないけど、今まで20代の爽やかマッドサイエンティスト的だったルックスが、一気にそこらへんにいるアラフォーの男性へと早変わりしている。
「これぞ、我が戦闘フォルム。今までこの姿を見たものは誰一人この場から生きて帰っておらぬ。さあ、慄け!跪け!」
「あら、おかしいですわ。それならお父様はどうしてまだ生きてらっしゃるのでしょうか?」
「私のクソ親父もピンピンしてるわよ?」
「えーい!うるさい!細かいことをいちいち気にするんじゃない!くらえ、我が魔法!「暗黒時代より来たりし邪雷撃」(ヘルスパーク)!!!」
「な、紫の雷がこっちに飛んでくる!」
「勇者様、これが魔法でございますよ。術者の魔力によって威力が変わるのですが、確かにこれはすごい力ですわ。」
「大気よ、我が力に共鳴せよ。風よ、我が呼びかけに応えよ。我らを邪なる力から守りたまえ。」
サラに迫っていた巨大な三本の雷の矢は、サラの周囲に突如現れた大気の壁のようなものに阻まれて消えた。
「す、すげえ。これが魔法戦・・・。」
「通常はこのような高度な魔法の打ち合いなんて滅多に見られませんわよ。お父様の代が誇る最強の闇魔法の使い手と私たちの代が誇る最強の風魔法の使い手の戦いなんてある意味貴重ですよ。」
「風よ、刃となりてかの者を穿て。大気よ、渦となりてかの者を囲め。」
「ふ、その程度で我を滅すことができると思うてか。「混沌より現れし暗黒結界」(ダークパルス)!!!」
今度は巨大な竜巻が魔王を襲ったが、魔王は黒い核のようなもので竜巻を完全に相殺してみせた。というか魔法の世界でもやっぱり厨二病は厨二病ってはっきりわかるんだね。聞いてるこっちが恥ずかしい。
「まだまだ甘いぞ小娘!「漆黒に覆われし気炎弾」(ダークネスフレイム)!「暗雲より降り注ぐ暴雷雨」(ブラックストーム)!「常闇から成る暗黒渦」(ナイトメアシャドー)!」
「風よ、私を空へ誘え。大気よ、強壁となりて全てを打ち払え。風よ、暴風となりて全てを押し返せ。マイヤ様、タツキさん、巻き込まれないように気をつけてください!」
「お、おう。」
「気をつけてサラ!」
魔法と魔法の衝突で発生した爆発の中に、空中に浮いたサラがそのまま突撃していった。
「止めなくていいんですか姫様?戦うのが目的じゃないって言ってたじゃないですか。」
「あなたに魔法を見せるのが目的だったのですが、二人とも少々熱くなりすぎているようですね。困った人たちですわ。」
「危機感ねえなあ!?あいつらは命のやり取りをしてるんだろ!?・・・なんだよ?まさか、蘇生できるっていう理由で命を蔑ろにでもしてるつもりか!?」
「大切な親友が血を流して倒れる姿を見ても何も思わないなどとお思いでしたらそれは大間違いですよ勇者様。知っておく必要があるとそう思ったからです。魔王様がどれほどの魔力をお持ちなのか。私の護衛がどれほどあの人と戦えるのか。・・・あなたがどれほどの力を身につければあの魔王様にも打ち勝てるのか。」
「全く魔術を知らない僕があいつを倒すなんて到底無理な話だろ?だって姫様もサラもずっと今まで修行を続けてやっと魔王と戦えるレベルなんだろ?いきなり僕が勇者になってあいつを倒す力を身につけるなんてどれだけの時間が必要なんだよ。素直に王様に任せるしか・・・」
「俺がどうかしたかタツキ?」
「あ、あんたは!?」
「お父様!」
* * *
振り返るとそこには数時間前に女遊びのために僕を置いて王宮を飛び出していったイケメンキングが立っていた。
「お父様!ようやくこちらの状況に気づいたのね!魔王様が現れた時くらいさっさと来てよ!」
「お前なあ、自分の立場わかってんのかあ?そう魔王の前にひょいひょい姿を現すんじゃねえよ。あいつの狙いはお前だってことくらいよく知ってんだろ?」
「お父様にだけは自分の立場がどうとか言われたくないわよ!そういうくらいなら最初から助けに来てよもう!」
「まだ時間にはもう少し余裕があったじゃねえかよお。おまけにそんな知らん間にいきなり魔術戦始めるのは予想外だ。お前もちったあ頭冷やせ。」
「・・・すいません。」
「そんなことよりあの二人の戦い止めてこなくていいんですか王様?」
「おお、お前数時間ぶりじゃねえか。どうだ、こっちの世界には慣れたか?」
「慣れるかおい!?あんた結局僕のことほったらかしたじゃないですか!どこに行けばいいかくらい言っておいてくださいよ!」
「はっはっは!女を待たせるのとお前の世話のどっちを優先するかなんて決まってんじゃねえか。そうかっかすんじゃねえぜ。」
「僕を選べよ!?・・・っていうのはおこがましいにしてもひどいじゃないですか!姫様に会わなかったら今でもずっとあの玉座の間でボーっとしてましたよ!?」
「行動力がねえなあお前は。それだからお前はモテなかったんだよ。」
「いや絶対関係ないから!・・・ってだから戦いの方は!」
「もう終わる。黙ってみてろ。」
「何を根拠に・・・って・・・。」
その王様の言葉通り、僕が目を向けた瞬間、あの二人の戦いは一瞬で終わった。
* * *
「この爆発の中じゃ私の姿が見えないでしょう!?その首もらったわよ魔王!」
「愚かよのう小娘。我がセイクリッドアイをもってすればあらゆるものを見通すことができるというのに。」
「な、扇で私の斬撃を止めたですって!?」
「ふっふっふ。これをただの扇と思っておったか小娘。これだから人生経験の浅い青二才は。我が波動を受けるがいい。「邪悪なる衝撃波」(エビルインパクト)!」
「!?」
放たれた衝撃波はサラの全身を正面から吹き飛ばした。一方で涼しげな顔をしている魔王は、
「ふっふっふっふっふ。奥義!「不敵な笑み」(ウィナーズラフ)!フハハハハハ!」
とこれまた小物感あふれる笑いを浮かべている。
「わかったかねザイロンの娘。お前の魔法では我を倒すことはできないのだよ。おとなしくマイヤちゃんを我に差し出せばよいのだよ。」
「まだ中級魔法しか使ってないっての!余裕ぶっこいてるんだったらギアをもう一段階上げたっていいのよ?」
「いや、今日はもう十分仕事をした。我は夕飯の支度をしなくてはいけないのでそろそろ帰らせていただきたいのだが?それに今日の目標は戦うことではなかったのでな。戦う気分ではないのだよ。」
「あら、ならなおさらチャンスじゃないの。なら最後に一発私の奥義を味わってあの世に帰ってもらおうかしら。」
「ふ、このセイクリッドアイにまだ喧嘩を売るというのか、面白い。ならば私も最後に貴様を闇に葬ってから晩飯のメニューを考えるとしよう。」
「風よ、大地よ、大空よ、私の下に集え。そしてかのものを滅ぼす鉾となれ。食らいなさい、風魔法奥義、神羅万象天地斬!」
「この世のすべてに宿る我が眷属たる闇の力よ。ここに我の力となりてすべてを無に帰す破壊の波と化せ!セイクリッドアイの奥義、「暗黒界の巨大激流」(イクリプスオブジエンド)!」
自然の力を凝縮したサラの渾身の一撃と、魔王が放った巨大な暗黒の津波はまさにこの世のものとは思えない規模を持ってぶつかり合おうとしていた。こんなもん、人間が少しでも触れた瞬間全身が吹っ飛ぶのは間違いない。なんて感想を抱きながら遠目でこの災害を眺めていると、
「やれやれ、一体こんなところで何をこんな派手にドンパチやらかしているのですか。」
一人の人間が気怠そうな声で二つの大魔法を跡形もなく消し去っていた。
魔王の魔法の名前考えるの大変です。あと戦闘シーン書くのはそれの数倍難しいです。




