09-12
山ちゃんのクシ先輩に対する信頼度が凄まじいことになってきてしまいました
「『今の私』では理解できないということは、先日行われたレイドが関わっているということですか?」
「ギルド内に元々あった爆弾が、先日のレイドがきっかけで爆発したと表現できる内容になります」
「元々あった爆弾?」
「ちなみに『例の噂』について高山三佐さんはどこまで知っていますか?」
「そうですね、先ほど聞いた内容を整理しますと」
1、数日前に<DDD>がレイドに参加した
2、レイドではフィールドモニターに似た戦術が用いられた
3、レイドの指揮は『姫さん』という方がされた
4、レイドでは無駄にアイテムを消費して、失敗に終わった
5、ギルドから何人もの人が脱退した
「それだけでしたか?」
「そうですね、間違っている内容もまとめましたら」
A、レイドの指揮はクシ先輩が行った
B、ギルドの上層部に派閥が存在する
「なぜそれらが間違っていると言えるのですか?」
「まず、レイドの指揮をされたのが『姫さん』と『クシ先輩』の二人の名前が被っています。また『上層部』=『メインスタッフ関連の方』という事を先ほど教えてもらいましたので、そこに派閥など存在しないと私が知っています」
「なぜ『櫛八玉』さんの方が間違っていると?」
「クシ先輩が指揮をされたのであれば、たとえ新戦術であろうと結果が失敗であったとしても被害は最小限で済むはずです」
「その根拠は?」
「過去に新規のレイドを一回全滅しただけで攻略を中止した経歴をお持ちです」
「それはただ単に諦めが早いだけでは?」
「そのレイドを最初にクリアできたのは当時のトップランナーで構成された混合パーティーだったそうです。<DDD>からはミロードとクシ先輩を入れた数名だけの参加だったと」
「一回で攻略の可能性が無いことがわかったと。ですが、レイドとは全滅を繰り返して少しずつ攻略していくものでは?だからこそ挑む価値があるはずです」
「私も初めて聞いたときにはそう思い、クシ先輩に聞いてみたのですが『理由?普通に無理と思ったからだけど』と言われ若干ショックを受けました」
「ではなぜそれでも一回での撤退が正しかったと言えるのですか」
「当然、私は納得がいかずミロードに確認しにいったら『彼女が止めなかったらギルド倉庫は空になっていたでしょう』と教えていただきました」
「それはさすがに大げさすぎませんか」
「確かに大げさではありましたが、当時はまだ戦闘モニタリング要員、通称『モニター』の運用はなく、戦闘時の消耗率が明確ではなかったそうです。そのため全滅におけるレイド予算への損害はレイド終了後に集計し算出するという形式だったと。そのレイド撤退後に集計したところ、1回の全滅で当初の予算より大きく消費していたことがわかったそうです」
「確かに数回で物資への影響はかなりのものになってしまいますね。それを初回で気が付いたということですか。それは凄いですね」
「結果としてはそうなのですが、クシ先輩はどうも無自覚らしく、『偶然』『なんとなく』『たまたま』『え、そうだったの』などと言われていました」
「結局は勘ですか」
「いえ、ただの勘ではなく、一緒にレイドに参加するようになってわかったのですが、クシ先輩は無自覚ながら現状把握能力が凄まじかったのです。ですから、そんなクシ先輩が無駄な浪費をするとは思えません」
「ですが『無駄な浪費』ではなく、『無謀な投資』になったこともあったはずですよね」
「確かに最近はギルド間での攻略争いが激しいので、多少の『投資』をすることはしばしばありましたが」
「ちなみに『投資』で得ようとするものは、単なる『名声』のためだけではありませんよね?」
「はい、もちろん(幻想級)や(秘宝級)などの希少なアイテムなどを入手するためでもあります」
「では日本最大級の戦闘系ギルドともなれば、レイドの主力メンバーは数多くの上級装備なのでしょうね」
「当然、必然的にそうなります。どんなにプレイヤースキルが高くてもステータスを補うのには限界がありますから」
「そうなると『櫛八玉』さんも?」
「はい、ミロードやクシ先輩のようにレイド攻略において重要なポジションの方に優先して振り分けていますし、特にクシ先輩は回復職でも比率の少ない<カンナギ>ですからクラス専用装備はだいたいクシ先輩に使っていただいています。現状の日本サーバーでもトップレベルの装備のはずです」
「やはりそうでしたか。ちなみに高山三佐さんは『ヒメちゃんプレイヤー』と呼ばれる方達をご存知ありませんか?」
「そのような呼び名は聞いたことがありませんね。プレイヤー名がなんらかのお姫様の名前を使っている方のことですか?」
「名前ではなく、行動が『わがままなお姫さま』な人達のことですよ」
クシ先輩が『お姫様』?
フッ!寝言は寝てから言ってください