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輝きのクォーツ  作者: ヒガシノ
第一章 【炭鉱の街】
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第一話【炭鉱の町】 02

目覚ましの音はいつも鉄を打つ音。今日は朝からお客さんが店に来ているらしい。

寝起きに顔を洗って、髪をひとつに束ね、寝巻きを脱いで作業着を着る。


「セルフィ、お目覚めかい?」

「おはよう。お母さん。村長さんもいらっしゃい」


母親とともに迎えてくれたのは、お得意様のお客さんで、この村の町長さんだ。一家そろって模型好きということもあって、よくこの店で買い物をしてくれている。

ここはこの国の外れにある炭鉱の町【】。お世辞にも町、といえるほど賑わいがあるわけではないが、職人が多く住んでおり、仕事が多い。外からお客さんが来ることは少ないが、鉱石の輸入や商品の出荷で栄えている。とはいえ、職人気質の人が多いため華やかな町並みになることはない。裏には鉄鉱石や宝石が取れる鉱山もあり、職人には非常に恵まれた土地だ。

私はその中の一人。職人の卵である。


「セルフィちゃん、この間息子の模型を治してくれただろう?そのときつけてくれた綺麗な青い石が素敵でね。妻がそのブローチがほしいって言い出したんだ」

「石、ですって?」

「そ、村長さん!それは内緒に……」


母親の顔が険しくなりこちらを見つめてくる。

我が家は、この町で一番の鍛冶屋であり、武器や宝石加工、模型細工何でもござれの店だ。母親は王都から仕事をもらうほどの技術を持っている。

しかし、私はまだ見習いの鍛冶職人であり、一人で鍛冶場に立つことが許されていないのだ。

昨日は思わず泣いている男の子を見てしまい、少しでも前の模型よりもかっこいい装飾をつけてあげたくてしまった。そして、つい勝手に手ごろな石を使ってしまったのだ。


「セルフィ、あんた裏山で採れるとはいえ宝石は高価だって知っているでしょう」

「ごめんって。ほら、加工場で必要な石じゃなくて、捨てる予定のあまってたものから使っただけだから、ね」


笑顔でへらへらと取り繕っても母親はまったく表情を変えない。


「まあまあ奥さん。息子も本当にうれしそうに持ち帰ってきてくれてさ。その上デザインも少し模様を彫ってくれて、見事な柄だったよ。代金なら支払うから許してやってくれよ。」

「あんた商品に勝手に手まで入れたのかい?」

「あはは……」

「村長さん、代金は要らないよ。うちのじゃじゃ馬娘が勝手なことさせてすまなかったねぇ」

「しかしセルフィちゃんは本当に良い腕を持ってるよ。将来が楽しみだね。」


明るくけらけらと笑う村長さんと、ため息交じりのお母さん。でもどこかまんざらでもないのか、少し口元が緩んでいる。それを見て少しにやりとすると、おばか、と頭を軽く叩かれた。

そんなとき。


「セールーフィー!!!!!!!!!」


店の扉が大きな音を立てて開いた。


「ああ僕の愛しのセルフィ!ただいま!パパが一週間もいなくて寂しかったかい!?変な魔物に襲われたり悪夢にうなされたり友達から陰湿な嫌がらせをされたりママに僕と間違えられてキスを迫られたりしなかったかい!?」


台風が――、いや、父親が帰ってきた。


「あんた、帰ってきて早々かまどにぶち込まれたいのかい?」

「僕と熱々になりたいからってそれはないよトリフェ!」


母さんが表情一つ変えずに父さんを一喝すると、その反応に安心したかのようにあふれるばかりの笑顔を返す。わが父ながら本当に人生楽しそうな人だ。

そんな様子をほほえましく見守っている村長と目があうと、彼はそっと立ち上がった。


「お父さんが帰ってきたみたいだね。一家団欒の時間をお邪魔してはいけない。私はこれで失礼するよ」

「ああ、村長さん。お話があるので少しお時間よろしいですか?」


父親がふと、まじめな表情を見せた。村長さんも何かを察したかのように少しだけ顔を引き締める。そんな空気を読んだのか、母親が自分に微笑みかけた。


「セルフィ。あんたが使ってしまった青い石、実はもう品切れだったんだ。せっかく依頼を受けたのに村長さんの奥さんのブローチの加工ができなくなってしまった」

「え、そうだったの!?」

「そうさ。だからちょっと父さんたちの話が終わるまで暇だし、採掘してきてくれないか?やわらかい石から採れる宝石さ。それならあんたでも掘れるだろ。」

「いいの!?」

「そろそろ石くらい一人で採りに行ってもらえなきゃ困るからね。近くの魔物はこの私が加工したこの銃で倒せるから、もってお行き」


そういって手渡されたのは、片手で持てる小型銃だった。とはいえ強い空気を放射するため、構えるときには両手を添えなければコントロールができない。少し両手でもって構えてみると、母さんが大きくうなずいた。


「いつも隣で見て痛んだ。できるよね?」

「うん!」


背中を大きく押されて私は外に飛び出した。心が躍り、浮き足立つ。

たった裏山だけれど、一人で行くのは初めてだ。


小さな小さな冒険に心が躍った。


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