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色彩  作者: 猫屋大吉
7/15

裏街

守津綾花と横山潤子は警視庁建物内に在る綾花の執務室にいた。

綾花はデスクの椅子に腰掛けると両足を机の上に投げ出すと足首の所で組んだ。

潤子はデスク前のソファーに座り前のテーブルにパソコンを置いて起動させて

「これまでの十五件の事件の発生時間ですが夕方から朝方までの約十二時間になっています」

「十二時間か・・・そうだな、三時間づつに区切って事件発生の順番に並べ替えてくれ。それと」

綾花は潤子に指示をだしながら両手を胸の上で組んで目を瞑る。潤子は綾花のその様子を見ながら暫く待つ事にした。綾花がこの部屋で机の上にすらりとした両足を投げ出し目を瞑る行為は何時もの様にプロファイリングを行っている時に見る行為で有り、彼女の脳細胞が超高速でデータを処理している状態に在る事を示している。

部屋には潤子の叩くキーボードの音だけがパチパチカチカチと響いていた。

キーボードの音が止んだ時、

「夕方まで時間が有る。少し出るぞ」

綾花が言いながら机の上の足を下ろし立ち上がると「はい」と返事をしながら潤子もパソコンの画面を閉じて鞄に収めると立ち上がり鞄を持つと

「時間ごとに纏めた書類は保存しました」

「そう、じゃ、分かったでしょ」

「次も夕方って事ですよね」

「そう言う事。行くよっ」言いながら部屋のドアを開くと二人は部屋を出て行った。

潤子は、(また、私に説明する為に書類を私に作らせたんだ。全くこの(ひと)の頭の中は・・・)と思いながら綾花の背中を追い掛ける。追い掛けながら潤子は、そう言えば、配属された当初、メモを取るな、その場で覚えろ とか メモを取る奴は 自分はバカです、覚えられませんと言っている様な物だ なんて良く怒られた。潤子も要約、その場で覚える癖が付いた時、今度は、メモを取るフリをしろと言われた。

人は自分の話をメモして呉れている相手に緊張すると共に潜在意識で安心すると共に共有感の様な物が生まれる、するとメモを取る側からの質問に答え様とする心理が働くらしいと言われた事を思い出して細かい心理を読み解く綾香の知識に惚れ込んだが、其れなら何故、あんな態度を警察内で取るのか不思議で仕方が無かった。庁内の人間の心理をもっと操れば・・・何故庁内で喧嘩相手を作ろうとするのか、その意図が全く分からなかった、お蔭で潤子自身も庁内で孤立しているし、潤子の所属する綾香の専属チームも又、その影響を受けている。



車を停めた所は 所謂(いわゆる)下町で電気や玩具、工具、雑貨の小さな店が無作為に入り乱れた所に隣接する駐車場だった。秋葉原の裏の顔、裏秋葉、早々、業界関係者や一部のコアなマニア以外の外者は滅多に来ない為そう呼ばれて久しい所。

綾花は戸惑う事無くその閉鎖され時代に取り残されたかの様な町の路地と呼ぶに相応しい道に足を踏み入れて行く。実際、潤子も綾花に連れて来られるまでこの町にこんな所が有った等、その存在すら知らなかった。

綾花が普通の民家の様な扉を開き家屋の中に入って行く。潤子も後へ続く。

「おじさん、コーヒー二つとサンドイッチ二つ、お願い」綾花が大きな声で言うと扉近くのテーブル席へ座った。

奥から「綾ちゃんかい?待ってな」と声が掛かる。

其処はれっきとした喫茶店で奥と思われたのが実は表の出入口で綾花達が入って来たのが裏口であった。潤子は初めてこの店に連れて来られた時から裏口からしか出入りした事が無いので店構えはどうなって居るのか知らなかったが、ここのコーヒーとサンドイッチは 初めて食べた時から好きに成っていた。

コーヒーは自家焙煎は勿論、豆の仕入れやそのブレンド手法もこだわってはいるらしいが メニューにはコーヒーとだけ書かれた物しか無かった。当然、サンドイッチも普通なら玉子サンド、ミックスサンドと書かれたメニューが並ぶはずだが ただサンドイッチとしか書かれていない。従ってメニューは清々しい程シンプルで 上からコーヒー、紅茶、ジュース、サンドイッチ、カレー、スパゲティで終わっていた。

綾花はタバコに火を点け、深く吸い込むと細く長く煙を吐き出して

「やっぱ、落ち着くね〜、ココ」

「前々から不思議に思ってたんですが、警視は何でココを知ったんですか?」

「おや、潤はココ、嫌なのかい」

「いや、そう言うんじゃ・・・ここのサンドイッチとコーヒー、結構、好きですけど」

「綾ちゃん、お待たせ〜」店のマスターがニコニコしながらコーヒーとサンドイッチを二つづつ、テーブルに並べて行く。

「マスター、潤もココのコーヒーとサンドイッチ、好きなんだって」

綾花がマスターに話し掛けた。

「嬉しいね〜、潤ちゃんにも裏口出入り、許可しようかなぁ~」

「えっつ、って言うか、私、裏からしか入った事無いんですけど、それに裏口って許可制何ですか」

「あっはっは、普通、お店に入るのって正面口でしょ、面白い事言うね〜」

マスターが笑いながら言う。

「そうですよね、そうですよ〜アハ、アハ」

潤子は額に汗が流れるのを感じながら答え、黒いが茶色が混じり芳醇な薫りを漂わせる少し熱めの液体の入ったカップを口元に寄せる。

「ゆっくりして行ってね」

潤子がコーヒーを飲んでいる様を見て、綾花の方に向き直ると目で頷きカウンターの中へ戻って行った。マスターは其の後、焙煎室に入り出て来てカウンター越しに腕を伸ばすとVサインを作り その後に手のひらを大きく広げてパーを出した。

綾花と潤子はサインを見る。

潤子は最初、何の事か分からなかったが やがて意味が何と無く分かる様に成った。

Vサインは そのままOK、了解の意味に成り、パーは これは恐らくだが 五掛ける五で二十五分後と思われた。色々なパターンが有り、パーの次にパーから小指指を一本曲げて 二十分、パーを出す前に親指を曲げて出して次に薬指と小指を曲げて明日の正午等に成っている様だった。

サインを見た二人はサンドイッチを食べ始めコーヒーとサンドイッチを平らげた。

丁度良いタイミングで初めて見るウェイトレスが お代わりを御持ちしましたと言いながらテーブルのカップにコーヒーを注ぐと 失礼しますと言ってサンドイッチの乗っていた空き皿を持って帰っていった。

ウェイトレスはカウンターへ戻るとマスターにあの奥に二人は?と問い掛けるとマスターはウェイトレスににっこりと微笑みながら

「そう、特別な人達」と言い、「もう少ししたらヒョロヒョロとした目のキツイ男が来るから奥の席に通してね、うーん、その残ったコーヒーでもついでに持って行って」

「えっ、この苦いだけのコーヒーですか」

「水だけでも良いんだけど、ほら、見栄えがね、見栄えって大事だから」

と言って笑ったが目は笑っていなかった。

其れから半時近く経ってマスターの言っていた男がやって来た。

ウェイトレスは、コーヒーと水をトレイに乗せて男に声を掛けて奥へと案内して行く。

席に着くと男は彩花に頭を下げた。

男はウェイトレスがカウンターへと戻ったのを目で確認して漸く口を開いた。

「お嬢、御久しぶりに御座います」

「お前、もう一寸、身形みなりを何とかしろ、其れにこの匂い・・・」

彩花は言いながらセカンドバックから財布を取り出して一万円札を三枚渡すと

「取り敢えず、風呂に行って来い、其れから服屋に寄って新しい服を買って来い。時間は三十分、行け」

と言い、男を裏口から放り出した。

「やれやれ、あれじゃ、店で話も出来ないわ」

「良いんですか、あんな言い方して・・・」

「あぁ、気にするな」

潤子は言いながら、彩花が相当機嫌が悪い事を察知した。

「一寸、マスターに詫びて来る」

言うと立ち上がり、行こうとするので、

潤子は私もマスターにもう一つサンドイッチを頼みますと言い立ち上がろうとするのを彩花は左手で制止すると私がついでに言っておこうと言いカウンターへと歩いて行った。

潤子が暫く待っているとウェイトレスがサンドイッチを運んで来て

「お待たせしました」と言いながらテーブルにサンドイッチを置いて行った。

潤子は、手持無沙汰になったので鞄からパソコンを出して事件の経過をもう一度、最初から見直す事にした。多分、綾子は、犯人像がすでに解っているのだろうが、彼女の性格上、聞いてもはぐらかされるだけなので聞きはしない。

潤子はふと、思う時がある。綾子の目の輝きと彼女の性格、彼女の目は、本当に綺麗だと思う。容姿端麗で洋服のセンスも良い。嫌、何を着ても似合うのだ。ブランド物であろうと無かろうと洋服はそのデザイナーの意図に関係無く着こなしてしまう。潤子もそんなに容姿は悪い方では無いと思っていた。現に学生の頃は、言い寄る男達も何人も居た。しかし、彼女はそれを完全に凌駕している。本当に羨ましい。神はやはり平等なのだろうか、言い寄る男もたくさん居たのだろうが、あの性格だ。大抵の男は、言い負かされてしまうだろう。

ヒールのコツコツと言う音が近づいて来る音で我に返った潤子はパソコンの蓋を締めてサンドイッチを一口撮んだ。

「遅い、もうそろそろ三十分経つ」

席に座るなりタバコに火を点けながら彩花は言った。

正面口の自動ドアの開く音と共に走り込んで来るバタバタと言う音がした。

「やっと来たか」彩花は、呟くと

「遅いっ」大きな声で叫んだ。

「お嬢、すいません。でも、まだ三十分経ってませんよ」男は、息を切らせながら謝る。

「関係無い、遅いと言ったら遅い。良い訳せずにまず、謝れ」

「ご、ごめんなさい」男は頭を下げた。

潤子は、少し、男に同情しながら頭を下げた。

男は黒のズボンに白のノーアイロンのシャツに黒い細目のネクタイと黒の革靴に着替え、髪の毛は、軽く後ろへ流して額を出していた。

「お前のセンスだとまぁ、そんなとこか。それで頼んであった件の報告」

彩花は静かに言った。

男は、A4が入る茶封筒から中の書類を全て引っ張り出すと封筒を机の上に置き、その上に引っ張り出した書類を置いて、とんでも無い事を語り出した。

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