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ローズマリー


 予約投稿するのを忘れていました……申し訳ありません。

 全体的に暗い上に短いです。


 この世で一番怖いものは何か? そう聞かれたらあなたは何と答えますか?


 例えば、幽霊が怖いというかもしれない。あるいは暗闇。断崖絶壁に立つことと答える人もいるだろう。虫や高井場所が苦手という人もいるかもしれない。

 このように、人が怖いという物はその人によって違う。


 そして、私はこう答えるだろう。


 人間が怖い、と。






「それじゃ、私はここで」

「あ、そう?じゃ、バイバーイ」

「お疲れー」


 おとなしそうな地味な女の子が一人、分かれ道に進む。やがて角を曲って姿が見えなくなると、残された二人は別の道へと歩き出し、会話を再開する。


「あの子、ほんと無口だよね~」

「確かに!気を使うというかさ」

「あーわかるわかる。話し合わないしさ。なのに一緒に帰ってあげる私たちって優し!」

「ちょっと~何いい人ぶってんのよ」


 けらけら笑う二人の顔は先ほどの地味な少女へ向けていた顔とは全く違う、醜悪に満ちた笑顔だった――そう言えたらまだ楽だったかもしれない。

 だが、実際の二人はごく普通の少女。楽しそうに微笑み二人は現代の風景に溶け込んでいる。話の内容以外が。


 こんなとき、人が怖いと私は思う。


 コインの裏表のように突然入れ替わる。それでも、どちらの表面ともに同じコイン。何でもない顔をして人の悪口を口にする人にどうしても恐怖を感じる。

 いっそ白と黒にはっきり分けられていれば簡単な事なのに。どうしてもそう考えてしまうのだ。






 昔、見た映画がある。


 戦後作成された洋画で、主人公の新妻は夫とともに不吉な噂のあるアパートに引っ越し、そこで妊娠する。しかし、不吉な夢、医師にのまされる謎の薬、やけに構ってくる隣人――やがて彼女は周囲の人々が悪魔信仰者であり、自分が儀式の末に悪魔の子供を宿してしまったことを知ってしまう。


 この映画で一番恐ろしいのが周囲の人間だ。

 冒頭ではどこにでもいるような普通の人々だというのに、悪魔信仰が重なったとたん、誰もが恐怖の対象となる。誰よりも信頼できるはずの夫でさえ彼らの仲間。数少ない味方である友人も事故に見せかけられて殺されてしまう。

 主人公が追い詰められていく中で彼らはどこまでも普通の姿なのだ。その落差がとてつもなく恐ろしかった。


 ちなみにこの映画の監督夫人は公開の一年後、カルト教団に殺されている。しかも妊娠八カ月だったというのだから恐ろしさは倍増である。




 何が言いたいかと言えば、普通の人ほど恐ろしいものはない、ということなのだ。

 現在、私の周囲でもその恐ろしさが当たり前に存在している。


「次の授業何だっけ?」

「まだ学校に来ているよ」

「今度の週末どこかに遊びに行かない?」

「じゃ、モールでも行く?」

「はやくやめちゃえばいいのに」

「数学だよ」

「はいはーい!私も行く」

「ヤバい!私今日あてられるーノート貸して!」

「そう言えばあの人、この間、男と歩いていたらしいよ?」

「えー。マジビッチじゃん」

「じゃあ三人?了解」


 日常の中に隠された悪意。

 するりと姿を現すナイフに、今すぐにでも窒息しそうだ。


 映画の主人公は最後に悪魔の子供を出産してしまう。赤ちゃんの顔を見てショックを受けるも、主人公はそれでも我が子を愛すると決断する――話はここで終わっている。


 私自身も、彼女のような強さを手に入れることができるのだろうか。

 彼女と同じ名前の青紫色の花を見つめて、目を逸らした。




 難産でした……おまけにストックが切れたのでちまちま溜めるためにもしばらく更新しないかも。

 次回予告は今回なしです


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