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怪異小話集

作者: まぁまぁ

この怪異小話集は俺自身、家族、関わりがあった知人に降りかかったものを纏めた短編集で全て現実に起こったことである。


勘違いなのか、怪異なのか分からない。


ただこれを読んで、ちょっぴり涼んで貰えたら嬉しい。


日常でふと夜に立ち寄った寺で、あるいは夏の風物詩として友人と出かけた肝試しで、またあるいは寝物語として。


人は怪異にふれる。


その時を生きる人が怪異を語り繋ぎ、何十、何百年もの時間を語られ続けた怪異を、また次の世代の人々が受け取り怪異はつづく。俺も怪異を語った何百、何千の名も無き人たちの後に続こうと思う。たとえその怪異が勘違いでも人はやはり怪異が好きなのだ。

身近な怪異と共にある日々をここに綴ろうと思う。

そういうものにとんと縁がない人もいるだろうが、何故か俺はそういうものに縁がある人間らしいから。


読むに当たり、この怪異話は俺自身、家族、関わりがあった知人に降りかかったものを纏めた短編集で全て現実に起こったことである。


勘違いなのか、怪異なのか分からない。


ただこれを読んで、ちょっぴり涼んで貰えたら嬉しい。

*****

俺の家系はちょっとばかり古い。

母方は武蔵の地で栄えたある家で武家の血が入っており戦時中もお手伝いさんが何人もいて栄えていた。

俺が今住んでる家も実家は古い日本家屋で、石垣で囲まれ、正門から玄関までは石畳を暫し歩く。

庭は数個の石灯籠が置かれ、松や梅や金木犀といった木々が鬱蒼と生い茂り、踏み込めばあの独特の清涼とした木の匂いと涼しさが包み込む。出入りの業者や近所の人たちは空気が違うとよく話していた。

まぁそんな感じで、どこもかしこも古臭い家だ…少しの怪異が生じても仕方がないのかもしれない。

*****

第一夜:足音


俺がまだ幼い時、板張りの木の廊下で足音がした時がある。

ぎ、ぎ、と木が軋む音がしていた。俺は畳のリビングで寝っころがりながらテレビを見て、ぼんやりと兄さんが歩いている音であろうと思っていた。丁度、テレビが置かれた左側に襖があり廊下へ続いている。襖は閉められて誰がいるかは分からなかった。

しかし暫くしたら、兄はひょっこり俺の背後の襖を開けて現れたのだ。

「兄ちゃん、あれ…廊下にいたんじゃないの」

「いや」

じゃあ一体あれは誰だったのであろうと首をかしげたものの、これは自分の勘違いだと思い。

今度は二人でテレビを見ていると。二人しかいない筈なのに先程と同じように、ぎ、ぎ、と人が歩く足音がして、サァッと血の気が引いた。

兄も同じ足音を聞いている、振り返った兄の顔も強張っていた。ぎっぎっぎっと大きな者が歩き回る軋むような音。家鳴りじゃないのは分かる。だって大きな重さがかからなきゃ、あんな音出っこないって子供ながらに分かってた。

恐怖の為に確かめるなんて出来やしない。

一瞬、泥棒かもしれないと思ったりもしたので、一階にいる爺ちゃんに声をかけて二階に上がって来てもらい薄暗い廊下を確認した…やっぱり誰もいなかったのだが。

こんな怪異を俺は身近に感じていた。

*****

第二夜:何十年と継がれる怪異話


ここで俺の家族についてチョット話そうと思うんだが、俺の家族は教育に関係する仕事をしている。皆も知ってると思うが、その中で教師っていうのは同じ学校に長くは務めない。2,3年で移動になるんだが、教師歴数十年ともなると色んな学校を見ることになる。

豊かな自然に囲まれている学校、荒れてる学校…本当に色々だ。

そんな中で俺が聞いた、学校にまつわる話をしようと思う。

皆、学校の怪談は聞いたことあると思う、あるいは小学校に置いてあった怪談本の一冊とかで見たことがあるだろう。ベートーベンの目が動くやら、トイレの花子さんというあれだ。

大抵、小学校の七不思議と云われる怪談は七つに届かないもんだけど、その学校は七つちゃんと存在し、かつどこにでもあるようなホラだと一笑にふせない理由があった。

学校の隣りが墓地なんだ。

しかも学校を建てる時に墓地の半分を潰して、その上に学校を建てたっていう曰くまである。

ここではあえて伏せるがS県に存在するから知ってる人もいるかもしれない。

その学校は怪異の話にいとまがなく、夜中の池には幽霊が立っていたり。

逆さの鏡は正しく元に戻しても、いつのまにか再び逆さになっていたりする怪異が続いた。

母の同僚が何人も怪異を体験し、それを母も実際に我が身でて知っていた。

母が学校を移っても、まだあの小学校の怪異は受け継がれていると思う。


何十年と継がれた怪異の話って、それだけで重い。

とまぁこれは軽めの話だ。

*****

第三夜:怪我する教室


その母にして、この学校は不味いと言った学校が、やはりS県のK市らへんにある。ここも敢えて名前は伏せさせてもらう。前の学校は序の口だった、大したことない、害はないと母はよく言った。

というのもその母が赴任した学校の二階の教室に霊がいて、怪我が絶えなかったそうなのだ。その霊の姿は男の子でが教室にとどまるばかりでもないらしく、警備の人が夜中に何回も廊下で目撃した。


そしてその不運にも霊のいる教室に当たってしまった生徒は。彫刻刀で手を切ったり、カンナで爪を削ったり、プールで溺れたり。そういった事故が続き、これは不味いと思った先生方は教室に盛り塩をおいて対処したらしい。

そうするとピタリと子供達の怪我が止まるそうなのだが、人間だから毎日欠かさず盛り塩をかかげるってことは中々に面倒くさい作業のため、忙しい担任の先生が盛り塩を少し忘れると途端に怪我する生徒が出るというぶり返しだった。

そしてある時、たまたま教師の子供が学校に遊びにくる時があったらしい。職員室に来て、お茶やお菓子を出されたその子はだがジィッと上を見ていた。「どうしたの」と周りの大人が尋ねると、その子は上を見たまま「男の子がいる」と言ったそうだ。

職員室の真上は例の教室にあたる。

結局、祓いはされていない。まだ霊は学校に居続ける。

教室に盛り塩がされていたら注意した方が良い。

*****

第四夜:木は切るな。


ここまでは俺の母の赴任した学校の話だったが、次は俺の婆ちゃんが定年退職後に同僚に言われた話だ。

俺は何回も聞かされたので、ここに記しておこうと思う。


婆ちゃんは退職前は学校の事務的なものを任されていた。

備品を買ったりそうしたものを決済して学校の環境を整えたりする。

そんなある時、仕事仲間が訪ねてきて婆ちゃんに「貴方がいてくれたら」とこぼしたらしい、どうしたのかと婆ちゃんが尋ねれば、学校に生えていた何百年にはなろうかという巨木を邪魔になるからと切ってしまった、とのこと。

婆ちゃんは木とか好きな人なので、定年退職さえしていなければ、巨木を誰かにあげるなり事務手続きをして計らっていたであろうから、それを同僚だった人は惜しんだらしい…だが話はそこで終わらない。

巨木を切る。

そのことによってその人は原因不明の体調不良に襲われた。高熱が続きながらも、その人は木を切った祟りだと思い、酒や塩を持って巨木の切り株にお参りしたそうだ。切ってしまって済みません、御免なさい、赦して下さいと誠心誠意謝った。

そうしたらその人の体調不良はピタリッと治ったらしい。

木を切るって木を殺すっていうことだと、覚えときなと婆ちゃんは俺に真剣な顔でよく言う。


小話:あともう一つ婆ちゃんの友人の祟りの話がある。

その人の親戚が原因不明の病にかかってしまった時の話なんだが。

その親戚の人はどうもトイレをするたびに痰を吐き続けたらしいんだ。

そうしたら原因不明の病にかかって臥せり、医者に見せても原因不明で。

おかしいと思い最後の最後で霊能者の人に見せると、その人は何も聞かずに「貴方がトイレに痰を吐き続けているから罰があたった」と言い当てたらしい。

それからトイレでお酒などを捧げて、払ったら体調不良が治ったそうだ。

トイレに痰を吐き続けるっていうのは俺でも不味いと分かるのに、なぜやったとしか言いようがない。

*****

第五夜:伸し掛かる者


これは俺自身が体験した話。切っ掛けになった夜は、足音が天井からずっとしていた。

その一週間前かそのぐらいから夜になると誰かが歩くようなトトトッともドドドッともつかぬ音がして、家鳴りがピシッともビキッともつかぬ音で鳴ってて、その日の天井からの足音は人がギッギッと歩いているようで、ぼんやりと俺は寝ぼけながら、(座敷童みたいだ)と思った瞬間。


耳元で男だと思うのだがクスリッと笑う声が響いた。ゾッッと身の毛がよだち、心臓が冗談じゃなくドクリッと嫌な脈を打って、不味ったと直感で思った瞬間に、上からドーンと乗られた。ずっしりとぎちぎちと重く。

丁度、お腹のあたりで強烈な痛みと重さがグググッと俺にかかり、痛い痛い重い重い!と思いながら…でもどこか冷静で。

目を開けたら更に不味いことになると直感で分かっていたのと、知識としても霊と目を合わせるのは不味いということを知っていたので、目は決して開けずに、般若心経を諳んじた。(俺は仏壇に般若心経を捧げるうちに暗記できるようになりました。)

流石、般若心経。

詠みはじめれば直ぐに効果が表れて徐々に重さと痛みが引いていった。けれど空気がまだ重かったので、般若心経を何遍詠んだか分からないぐらい夜中に詠み、さらに産土大御神と天照様と竜神様と、数々の神様に祝詞をささげた。

するとどれぐらいの時間が経ったのか空気も大分落ち着いてきたんで。

恐る恐る目を開けると、何かがいた後のような、人がいたけれどいなくなったような、けれどまだ居るような空気が部屋に流れていて。俺は急いで部屋の電気をつけて両親を起こし、母と一緒に寝て、父を俺の部屋で寝かせた←

それ以来、上に乗られたことはない。

今は盛り塩をして守り刀を近くに置き、産土大御神に守って下さるようお願いしてあります。

小話:俺の隣りの部屋の兄は、俺がこれを経験するずっと前。中学の時に白いもやもやっとした幽霊を見たそうだ。夜中にふと目を覚ました兄は寝ぼけ眼で窓際になにか白いものを見て、何ともなしに見ていたら、「それ」がくるりと振り返ったのが兄には分かったらしい。瞬間、金縛りにあい動けない、「それ」には顔もなくて白くもやもやとしている。だが手たしきものを伸ばしてくるのが兄には分かった。

金縛りで動けない兄。そしてその手は兄の顔をすぅっと擦り抜け消えたらしい。

そして兄は両親を起こし、父のところに自分が寝て、父を自分の部屋で寝かせました←

*****

第六夜:おとなう者


最近のことだが、ある夜に俺のうちの玄関を叩く音がした。「ガンガンっ」と強くせわしなく拳で叩きつけるような音だった。俺は一階の居間でテレビを見ていたのだが、はいはいと思いながら玄関に向かった。

すりガラスと組み木で出来た古臭い引き戸の玄関だ。

俺の家は最初も言ったとおり正門と玄関が大分離れているので、誰かが正門を通り玄関を叩いたのだと思ったのだ。祖父母も耳が遠くなったから、そんな事情を知っている近所の人ほど正門をくぐって玄関を訪うから特に気にしていなかった。だが叩く音がした筈の、すりガラスの向こう側には誰もいない。誰かしら立っていたら、すりガラスから姿はぼんやりと見えるし。瓦屋根の突き出した下に位置する玄関は、台風であってもガタガタと揺れるだけで決して大きな音は立たない。

あの音は何だという疑問を俺に残して、その日は終わった…最初は聞き間違いだと思った。


だがその数日後の夜、俺は爺ちゃんと居間で同じようにテレビを見ていた。また「ガンガンっ」と誰かが拳で叩くようなガラスを打ち付ける音が響いた。その日は嵐でもない。

何十年とこの家で生きてきて、こういう音がするのは誰かが訪ねて引き戸を叩いた時だ。

それも客人はそんな乱暴なことはしない、家族が家から間違って締め出された時に叩く。そんな音だ。


俺は数日前を思い出しつつ玄関へ行ったが、やっぱりすりガラスの向こう側には誰も立っていない。

どういうことだろうと、後から来た爺ちゃんと顔を見合わせ。そして玄関の横の寝室から婆ちゃんも起きだしてきた…丁度その時に「ガンガンガンガンっ」と玄関を叩きつける音が響いた。


俺も爺ちゃんも婆ちゃんもハッとして玄関のすりガラスを見る。

だがそこには、すりガラスの向こうの、のっぺりとした薄闇が広がるばかりで…やはり誰もいなかった。

すると爺ちゃんが真剣な顔で玄関を見て言った。

「俺の弟が死んだ時と同じだ」と、死んだ人が訪うときにまま見られるのだと。

その後に、第二次世界大戦の戦没者の霊が玄関を叩く怪異話を聞いた俺は少し背筋が寒くなった。

*****

第七夜 稲荷さん


そしてそんな俺は稲荷さんと縁が続いている。家系に理由があるのかもしれないが伏見稲荷大社にも行ったことがあり、行く先々で稲荷神社に出会い、その度に詣でたりしている。(食事に行った先の隣りの敷地に稲荷神社があったり)

ある時、某駅で狐を見たことがある。正確には稲荷に憑かれた人間か、稲荷神自身が俺には分からないんだが。

人々が行き交う雑踏の中であって頭がにょっきりと出ていた、目がつりあがり、顔が霞のような紗がかかっている…狐憑きより強烈な。

俺はあれが稲荷だったと思う。見た瞬間に全身が凍りつきそうなほどの感覚を覚えたのに、周囲の人がなぜ普通にしていられるのかが俺には分からないぐらいだった。


あとこれは旅行先でのことなのだが、散歩したら稲荷神社を見つけた。こんなことはざらなので俺は神社を見つけるたびに詣でるようにしている。

海に出る道を逸れた場所にある、その稲荷神社は、鬱蒼と茂った木々の遊歩道をいった先にある。

自分でも旅行先でよく気付いたもんだと思った。

海岸近くに建てられた石階段の稲荷さん、あまり詣でられてないのだろう、草木が勢いよく茂っていた。

何かの縁だ、そう思って詣でることにした。

自分の名、どこから来たのか、旅行で楽しかったこと、海がとても気持ちがいいということ、これからもどうぞこの地をお守り下さいと思いつくままに心の中で思って手を合わせたら、周囲がざわざわとしたのが分かった。

何故か体がふるえそうになる、圧倒的な存在感を感じたからだ。

でも怖がるのは失礼だと思って、礼をはらい後にした。

だが話はそれだけでは終わらない。

海岸側のホテルを引き払って別の場所に行き、飛行機の時間まで少しあると分かった俺たち家族はもう一度あの稲荷神社がいる海へ行くことになった。

勿論近くの観光地目的。そうしたら何故か狐がつままれたように、降りる予定でいた高速を降りるのを忘れ、そのまま空港へ行ってしまった。それだけなら別に人為的ミスなんだが。

俺たちが帰ってきた日の新聞に。

その海で一人子供が溺れて死んだという記事を見つけ、俺は驚きと共になにがしかの意図を感じた。


死亡事故に行き当たらないよう稲荷さんがはからってくれたと考えてもいいのかもしれないと思っている。

*****

第八夜:牛の刻参り


俺の爺ちゃんは中々パワフルな人だ。

米寿になった今も隣町まで自転車を乗り回し、グランドゴルフでカコーンと球を打ちホールインワン賞をもぎ取り、平日は台所に立つ程にパワフルだ。

だがその大正生まれの爺ちゃんもやはり色んな経験をしている。

これは爺ちゃんがまだ若く、日本が戦後の混乱から抜け出せていなかった時代。

今よりもっと自然が残り身近な闇が濃かった時代…爺ちゃんの友人から聞かされた牛の刻参りの話。

友人は爺ちゃんのところへ来て「牛の刻参りを見てしまった」と言ったらしい、その人が爺ちゃんに語って聞かせたのは。(今より開発されていない東京には林が多く残っていた。)

夜に林の側を通りがかった。すると、かこーん、かこーんと何かを打ち付ける音がする。

不思議に思って、その人は林の中へ分け入っていった。

暫く行くと林の中で白い着物を着た女が牛の刻参りをするのを見つけてしまったらしい。

ここで物語とかなら足音を立てずに、その場を立ち去るなんて神業が出来るんだろうが、人間ならそんなことが不可能に近いと分かるだろう。

その人は牛の刻参りをしている女に見つかってしまい「見たなぁ」と女は叫びながら林の中を猛然とその人を追いかけて来たのだそうだ、その人は恐怖で叫びながらも何とか林を抜けて逃げたのだと爺ちゃんに話した。


そしてその暫く後に、友人は亡くなったらしい。

果たして因果関係はあるのか分からない、分からないが俺は怖かった。

*****

第九夜:狐ツキ


またこれも爺ちゃんの経験した話なんだが、爺ちゃんは戦争のときは疎開してS県のT市に来ていた。

山深いそこは大昔に空いっぱいに巨大な稲荷が空を飛び、星を降らせたという伝承が残る地で。

昔から狐ツキが多く出る土地柄であったらしい。


そんなある日、近所の人が若い爺ちゃんの家に来て「大変だ!Hさん隣りのKに狐がついちまった!」と駆け込んできたそうだ。当然若い爺ちゃんは「面白そう」とちょっと見に行くことにした。

爺ちゃんの父さんは(警官をやってたんだが)「嘘だろう、下らない行くな」というようなことを言ったそうなんだが、爺ちゃんは好奇心に負けて隣りの家を覗きに行った。すると隣の家には周辺の長老集や多くの人が集まっていて、その家のKは四つん這いになり家の中に居たらしいんだ。

爺ちゃんが現れると「誰だぁっっ」と激高し「隣のHだ」というと「知らんっ」という、目は吊り上り正に狐顔だったと爺ちゃんは言っている。

そしてこの時、どうにもこうにも狐を祓う方法が皆分からなかったらしい。


いろいろ試しはしたらしいのだ、当時は珍しかった犬をけしかけたり、近所のお寺に行ったり…けど全て失敗に終わった。犬は目を抉らせそうになり、お寺の住職には無理だと断られた

そして困り切った人々が最後の頼みとある呪い師に頼むと、彼女は関東の稲荷神社の総元締めである王子稲荷へ狐ツキにあった人間の服を持って祓ってもらう遣いを出すように言ったそうだ。

当時は東京へ出る電車代を出すのも大変な時代だったが、占い師に注意されたのが「どこも寄り道をせずに真っ直ぐに行って帰ってくること」。そんな時に遣いとして白羽の矢が立ったのが若い爺ちゃんだった。


そして爺ちゃんが憑かれた男の服を持って王子稲荷神社へ出発すると、爺ちゃんは後から聞いた話なのだそうだが。狐ツキの男が誰も何も言っていないのに、「誰か俺を苦しめるために王子の稲荷へ行ったな…隣のHか」と

話したそうだ。


そして爺ちゃんは王子稲荷から帰り、村の連中がKの部屋を囲ってる中で「もう体から出ていけっ」と大音声で叫んだそうだ。男はかわりとばかりに「俺は尾裂き狐だから、こんなものには負けねぇっ」と叫んだのだが、爺ちゃんが周りの人たちにも手伝ってもらって「もう出ていけっ」と王子稲荷で祓いをして貰った服をその人に被せると

「ああああああっ」と苦しそうに叫んで、尾裂き狐は出て行ったらしい。

狐ツキの祓いはそこで終わるのだが話にはまだ続きがある。


というのも爺ちゃんが婆ちゃんと結婚して東京に出てきてから、狐ツキにあったその人が家族を惨殺して自分も死んだという事件が新聞をにぎわせたからだ…因果関係は分かっていない。

*****

もう少し書こうかとも思ったのだが文字数の関係で短編怪異話を終えることにする。


勘違いなのか、怪異なのか分からない。


ただこれを読んで、ちょっぴり涼んで貰えたら嬉しい。









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