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殺し屋少女と憑かれた高校生  作者: 山猫系
第一章 4月8日〜4月12日 雨男ストレンジラブ
4/22

雨男ストレンジラブ 3

そんな返答はされたところで、俺はこいつを殺すことなんかできなかった。俺は人を殺すことに慣れてない。ここで慣れてないなんて言葉を使うことは不気味だと思うが、俺は確かに人を殺したことがある


「二人ともー!!お昼ごはんー!!」


一階から聞こえてきたのは霊音の声だった。俺はイリスと話したところで結局答えが見つかる訳でもなく何かを得ることもないため会話を切り上げた。


「とりあえず食べにいこ」


イリスはうんと頷いて、俺たち二人は一階へと降りた。テーブルには4人分のオムライスが並べられていた。できたてで湯気がまだ立っていて今すぐにでも口に運びたい気分だ。それにしても昼からオムライス作るとは霊音も中々頑張るなあ。


「霊音お昼から張り切ってるな」

「いやー料理が上手な女の子は男受けいいしねー♪ 料理を征するものは男を征する!」


エプロン姿に片手でケチャップを持って、一人ずつオムライスにケチャップをかけていった。 ケチャップは何故かケーキの生クリームのように出てくる。

それを指摘してみるかしないか迷ってる途中で喰奴が霊音に言った。


「おいおい霊音、この形はオムライスに合わない合わない♪食欲失せるねー へへ」

「それは喰奴だけ! ほらイリスと桜は今にも食べたそうに待ってるよー  これね、使い切った生クリームのケースの出し口のとこ付けてみたの! こりゃあ面白いでしょ!」


普通思いついても誰も実行しないよ。うん


全員分のケチャップをかけ終えた霊音はエプロンを外してイスに座った。それと同時に皆で手を合わせていただきますをしスプーンでオムライスをすくって食べる。

霊音の作る料理は食べ慣れ今や家庭の味として美味しくいただいている。


「そういえばイリスも早く料理作れるようにならないと」


霊音が心配そうにイリスに言った。しかしこの殺し屋イリスさんはにぐーに手を握って胸に当て自信満々に、誇らしげな顔をした。


「大丈夫。カップラーメンなら一昨日桜に作り方教えてもらって作れるようになったから。 料理なんて余裕よ! 日清は偉大だ」


ブフー!と喰奴は飲んでいたお茶を吹き出して下を向きながら引き笑いしている。いつも笑って明るく冗談ばっかり霊音はというと苦笑いしながら横目で俺を見た。


「桜色々作れるんだからちゃんとした料理教えてあげようよ」

「本当にカップメンが限界だったんだって!」


あまり言うとイリスがかわいそうだから霊音と喰奴には伏せておくがこの銀髪っ子最初カップラーメンはなんとか作れると言いながら、ボウルにお湯をためてその中にカップを沈めて「ほら完成ぇー」とか自慢気に言っていた輩だからな。 

これから先料理など作れるのか?


「イリスがお嫁さんになったら朝昼晩毎日カップ麺だね♪ いやぁそりゃあ 最高に面白すぎだろ♪ 勿論そんなの最高に辛いだろうけどネ。 ヘヘ 」


満面の笑みで喰奴がスプーンをイリスに向けて言ったこの言葉でイリスが若干涙目になり始めた。

おいおいこんな様が見えるなんて今日はなかなかおもしろいじゃないか。だが逆手に考えればプライドの塊だとも思えるこの殺し屋。

そうなんだって彼女の職業(ジョブ)は残忍で冷酷で無心な殺し屋だ。

かつて"蛇巻甲冑"と呼ばれ恐れられた彼女がそう簡単にくじけまい。


「く、喰奴のバカァ!!ついでに桜はもっとバカァ!! もうおやすみぃぃ! グスン」


へ?


イリスは泣いた幼稚園児のように両手で目を覆って席を後にしそのまま部屋を出て階段をかけあがっていった。


「二人とも女心わからないなんてダメだよぉ。 ちょっと様子見てくるね」


そう言って霊音はイリスの後を追っていった。

世話好きで人思いな性格の霊音らしい行動だ。

彼女の奇怪とも言える行動に喰奴も少々驚いた顔をして眉をぴくんと動かして俺に目線を合わせた。


「やっちまったね」

「やっちまったな」


今まで感情ですら見せたことが無い彼女があそこまでになるとはいくらなんでもギャップが激しすぎるだろ。ツンツンして実は心が弱くて泣き虫

ツンジャクか。あやつは。


「桜、やっぱ女の子に家事とかそういう女らしさを否定すると結構傷つくものなんだね」

「あいつにそういう(女心)女らしさがあったんだな。ギャプ萌えならずギャップ引きだよ。まさに。」

「人の内蔵引きずり出して腸を体に巻いていたあの頃がまるで嘘のようだね。まったく。」 


003


高校2年生2日目、現時刻は12時30分。

お昼の時間皆は教室を抜け出して廊下で友達たちと弁当を食べたり、群がるヌーの如く購買へと駆けていく生徒たちの姿があった。

窓から差し込む日差しは春ながら少し暑いとまで思えるほど強いものであった。

そう今日は珍しく快晴である。

奇跡と言うべきなのかごく普通と言うべきなのか。

この2週間の雨が続いた中この天気は異常気象ではないのかと思えるほどである。

そんな天気良好の中俺は弁当を食べているのだが、俺の机に向かい合わせになって購買で買ったクロワッサンを丁寧にちぎって食べているのは驚くべき異名の持ち主、麒麟凛獅南さん。

クロワッサンを口に入れる度に若干笑顔になっている。

よほどおいしいのだろうか。   彼女は俺と同じくクラスで知り合いがいないため彼女からの誘いでこうして食べている。

周りからの視線に若干戸惑うが獅南さんはというと大して気にしていない・・・というわけでもなく最初に「カップルと思われてないよね?」と苦笑いで俺に言っていたので気にしているのだろう。

にしてもあの引きつった苦笑いはちょっと傷つくよ・・・。


「獅南さん弁当持ってこないの?」

「んーとね、今日3時間目くらいで終わるかなーって思って作らなかったらどんでん返しくらっちゃった」

「おいおい考えが甘いぞ。てか獅南さん弁当作れるの?」

「女の子なら高2にもなったら誰でも作れるよ! ウチ結構料理得意なんだよ。よかったら作ってきてあげようか?」


女の子はこう言う男子が自意識過剰になってしまうようなことを普通に言ってのけるから怖いものだ。高2の歳になれば女の子は料理作れるという仮説、残念なことにその説はわが家にいる一人の女によって砕かれてしまっているのだよ。

イリスという正論で論破されている。ちなみに昨日はたった5分でリビングに戻ってきてなにくわぬ顔で冷蔵庫から牛乳を取り出してストローで飲んでいた。

「なんだお前ら?そんなに牛乳が恋しいか? 残念極まりないがわたしが略奪したのだからお前らにはあげないよ。」とどや顔をしながら二階の自室へと階段を上っていった。どっからどうみても泣いた件の恥隠しとしか思えず俺と喰奴は目を合わせて呆れたように笑った。そんな女とこの獅南さんを比べると、比べるのにももったいないくらい獅南さんは天使のようだ。 


「獅南さんの手料理とかなんか楽しみだなあ」

「自信ありますよぉー 幼なじみにもたまに作るんだけどすごい良いって言ってくれたし」

「昨日言ってた同じ蓋付高校の幼なじみ?」

「そうそう。サッカー部の家矢蔵馬(いえや くらま)。知ってる?」


やっぱり何事も上手くいくわけでもなく、優越感に浸っていたさきほどまでの自分が恥ずかしくなってきた。だけどそれはふいうちだよ獅南さん。 今のテンションを表すならジェットコースターみたく上がってそのまま急降下、迷走中って感じかな。

そして家矢蔵馬

高1の時からサッカーの大会関連のことで何回か表彰されるのを見たことがある。

背が大きい方である俺より少し高くて茶髪、目が少しつり目で一番印象に残ってるのは歯がすごく綺麗だと言うこと。

知っているのだが、ここで彼女に言ってしまうと家矢蔵真の話題で話が出てしまいそうなのでやめておいた。ただなんとうか家矢蔵真と俺とは全く逆な存在。

彼と獅南さんが幼なじみで昔から遊んだり同じ学校の中でありながらメールをしやう仲なのだと思うとなんだか彼女が近くにいるながらも遠い存在のように思えてきてしまった。


「んー、聞いたことあるような。でも知らないなあ」

「そっか。今度紹介してあげる♪蔵真優しいし話しやすいと思うよ」


そう言って彼女はクロワッサンの最後の一切れを満足そうに口に入れて、入りきらなかったから人差し指で軽くつついて無理矢理押し込んだ。すると突然瞳孔を開き慌てるように噛みはじめた彼女は一気に飲み込んで立ち上がった。

まるで何か大事なことでも思い出したかのような顔をしてスクールバックからファイルを取り出した中からメモ帳ほどのカードを取り出した。


「早く借りた本返さないと! ちょ、ちょっと図書室行ってくるね」


どうやら本当に思い出したらしい。獅南さんはバックから取り出した本と図書カードを持って教室から出ようとしていた。思ったのだがまだまだ休み時間はあるのだからそこまで慌てる必要も無いのだと思うのだが。

「あぁちょっと獅南さん! まだ休み時間あるよ!」

「そうじゃんか。 うわあなんか恥ずかしい」


教室には生徒がたくさんいるし人前であまり大きな声とかは出したくない性格の獅南さんの声の音量はいつも通り一定音だった。

そんな中恥ずかしいのだけれど俺は恋愛攻めも大切だと思い、頭を真っ白にして声を張り上げた。


「俺図書室あまり行ったことないからついてってもいい!?」


「ん、本当に? ありがとう。本のことなら得意分野だしおすすめの本教えてあげる。」


まあ何事も言ってみてなんぼ

ってことなんだろうなあ。

人生挑戦が大事。高校生が人生語るのはちと生意気かな。


こうして俺と獅南さんで別校舎にる図書室に向かい、着いた訳だが

彼女のテンションは異様なものとなった。


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