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殺し屋少女と憑かれた高校生  作者: 山猫系
第一章 4月8日〜4月12日 雨男ストレンジラブ
3/22

雨男ストレンジラブ 2

時は午前8時40分。

先生が教室にやって来たのであったがただいま俺が人生で11回目であろう試練の壁にぶち当たろうとしていた。夏休みの始まる前に配られる悪魔の手紙と同じようなことかもしれないのだろうが、それが処刑ならば今からは始まるのは公開処刑だ。

「はいでは1番から自己紹介してってなー」


彼は気楽にそう言ったが俺にとってはそれは醜態を晒す、しかも自ら。俺の名字が"こ"から始まることを深く恨んだ。 すぐに俺の番がきた。ここは時間勝負だ。

さっさと終わらせてやろう。

俺は立ち上がりまあ普通に普通の声でごく普通に自己紹介した。


「えーと弧都瀬 桜 です・・・好きな食べ物は抹茶アイスです」


周りがざわめき始めた。

女みてぇー 桜? 変わってる

もうちょっと俺に聞こえないように言ってほしい。 あと俺が座ってもこっちを見てくるのもやめてほしい。どういう顔をすればいいのかわかんなくなるから!


名前の由来は、知らない。

何故女の子みたいな名前なのか。何故桜なのか。俺は男だ。

髪だってそんなに長い訳でもないし言動体型もまるっきり男。♂よ♂。 さくら♂


俺の席の横に座ってる女子も俺の方を見てなにか可愛そうなものを見るような目をしていた。


「その気持ちウチわかるよ 名前が異性みたいなの」

「お、同情してくれるの?」

「うんうん もうすぐウチの自己紹介だから教えてあげる」


まさか彼女の名前は男の名前だったりするのか?

いやそれは可哀想すぎだろ。まあ俺自体可哀想すぎだけれども。


そして彼女の自己紹介の番がやってきた。若干わくわくしている自分がいるがこの際それは誰にも内緒ということで。

彼女は立ち上がって一端スカートを手で整えて口を開いた。


「きりんりん しなです 好きなことは本を読むことです」


俺の時のように周りがざわつき始める。

彼女は若干顔を赤らめ周りの頑張って視線を誰とも合わせそうとせず席につき俺の方を向いて、ふぅとため息をついた。


「お疲れ。きりんりんってどういう漢字なの?」

「うーんと口じゃ難しいから今紙に書いてあげる」


しなさんは鞄からノートを取り出しシャーペンでスラスラ書いてそれを俺に何か自慢でもするかのように見せてくれた。


麒麟凛獅南


「すっごい強そうでしょ」

「思ったよりすごいなぁ•••古来伝説に伝わる仙人みたいな名前だね」

「結構言ってくれるじゃんか」

「ごめんごめん」


少し本気で落ち込み始めたのであまり変なことは言わないでおこう。うん。だけど彼女に麒麟の要素も凛の要素も獅の要素もまったくないのが皮肉だ。

しなさんは小動物みたいで守ってあげたくなるようなそんな雰囲気な女の子である。


「ウチ弱いのにこんな名前だから本当に自分が情けなくなるの」

「人って自分のことを強いと思うほうが弱いんだと思うよ」

「どうして?」

「強いって思ってるとそこで終点になるけど弱ければ弱いほど高見をめざせるじゃんか」


「お、なかなかうれしいこと言ってくれるね」


しなさんは安心したような笑顔をして俺も同じように安心した。

彼女の笑顔は癒され見てるだけでもうれしくなってくる。

容姿 言動 行動

そのすべてが俺の心にひっかかってくるような気分だ。

彼女がどんな罪をおかしても許してしまえるとさえ思った。


自分に嘘はつけない。思ってしまっては駄目なことだとわかっていたけど、今回ばかりは偶然。偶然のはず。偶然じゃなければならない。


俺はしなさんに恋をしていた。


灰色の空が頭上に広がる中、寒さを耐え抜いた木々が緑色を作る山に未だ冬の名残がある萎れた稲が生えている田圃に囲まれた田舎道を抜け古き町並みから一転住宅街へ来た俺はわが家へと到着した。

二階建てのごく普通の一軒家である。


ドアを開け玄関を開けるとまず「おっかえりー!」という明るく元気な女声が聞こえる。

リビングに入るとソファにうつ伏せに寝ころび携帯ゲーム機を片手に、もう片方の手の裏を俺に向けてるこの紫色の肩までかかったショートヘアーで無防備にルームウェアの胸元をはだけさせ、太股までめくり上がらせているこの見た目年齢女子高生は霊音(レイン)

さきほどの玄関でのあいさつの声の主。

そしてダイニングテーブルに座って片膝を立て、もう片膝をぶらんぶらんさせながら目薬をうっている白髪で青色のブレザーに赤色のネクタイ、黒色のズボンを履いていてベルトと後ろボケットを動物の毛で編んだ紐を4 、5本繋げて垂らしている見た目年齢男子高校生は喰奴(クラウド)

俺に気づいて笑顔で出迎えた。


「イリスなら桜の部屋でなんかやってるよー」


気楽そうな声で喰奴は俺に報告した。まあこれが日常というわけで、この二人は兄妹であるものの俺の家族ではない。

この二人は多額の金で俺の父親に雇われたボディガード的な人たち。

仕事があまりにも升に合わない結果になったためそのつけ払いとして未だにこの家に残っている。


彼らは妖怪だ。


妖怪"猫又"

年齢は250~300歳らしい。

ただ記憶力は人間とほぼ同等とのことなので過去のことは大きな出来事くらいしか覚えていないらしい。そんな猫又である喰奴がさきほど言ったことが気になり俺は鞄を持ったまま階段を登り自室のドアを開けた。


「モグモグ パリパリ」


ベッドの上で内股になりポテチを食べてる"こいつ"

綺麗で見惚れてしまうほどの銀色の長い髪に整った顔立ちに片目が青、片目が黄緑のオッドアイ。

濃い緑色をし、金色のボタンが首もとから下まで六ついたた軍服のようなものを上にき下はチェックのミニスカート。黒いニーズソックスを履いたこの恨めしいほどの美少女はイリス。年齢は17歳。同い年だ。妖怪を超えもはや神である近い邪神,ヤマタノオロチと人間のハーフ。

そう恨めしいほど美少女。

あまりにも恨めしい。殺してやりたい


こいつは殺し屋だ。

無情で冷酷で行動に一片の躊躇いもない。


「お前人の部屋で何してんの?」

「わたしの部屋にはクーラー無いから桜の部屋でゆっくりしてる」


どうりで部屋の空気が冷たい訳だ。異常なほどに暑さが苦手なこいつはよく冷えた風呂や冷蔵庫の中に潜んでいることが多かったので前に俺が注意したところ今回は堂々と暑さしのぎをしてやがった。


「桜も一緒に食べるか?」

「ん、じゃあちょっと食べる  寒いけど」


そういい俺は近づいたがこいつは俺のベットで手についた油をとっていた。それを行う度に一度俺の方を見てまたそれを行う。


「おい」

「ん?」


俺ははぁーと深いため息をついた。反応すること事態面倒で、注意するのに疲れる。いつも上から目線女王様気分でいるこの銀髪女はたまに幼稚な部分かいま見させる。彼女は俺が何も反応しなかったのでつまらなそうに壁に頭から背を反るようにもたれ掛かり窓の奥の景色を見つめてて眠る直前のように目を少し細めた。


「今日もまた、雨か」


彼女が強弱なく棒読みにそう呟き、俺は立っているのが疲れたので勉強机の前にあるイスに座った。外からは雨の音が止まることなく聞こえてくる。


「ここ2週間ずっと降り続けているな。この街だけらしいぞ雨降ってるの」

「そうか。わたしはやっぱり妖怪の仕業だと思う。雨降り小僧とかその辺」


窓の奥の景色に見飽きたのか頭をかくんと落とすように下に向けた。銀色の髪が不規則的に流れるようにすらすらベッドに足をつけていく。そして上目遣いをして俺を見て口を開いた。


「雨降り小僧はな、人間の願い通りに雨を降らせてあげる妖怪だ。だけどそれをお願いした人間の魂を後から奪いにくる」

「まるで詐欺師だな。雨の代償が自分の命か。」

「他人の命を奪うことなど単なる役割なんだし」


イリス・薙・ゴルゴネス


殺し屋である彼女らしい一言だ。

他人の命を奪うということに何も抵抗がない。いや彼女には道徳という概念が存在しないのかもしれない。だが俺には一つ疑問なことがある。殺し屋であるイリスが現在でも一つだけ殺し屋らしくない行動をしている。

どう考えても、どれだけ考えてもわからない答えが見つからない見あたらない。何回彼女に問いただしても返答は意味不明な言葉で帰ってくる。


「イリス、お前は俺を何故殺さない?」


去年の冬、イリス含め4人の殺し屋がこの傘峰市へとやってきた。

目的は・・・

今ここで話すのはやめておこう。 心が締め付けられ窒息してしまうほど痛くなってしまうから。


この街にやってきた4人の殺し屋は目的を遂行していった。

何の躊躇もなく。




12月31日の夜の惨劇。

父、綱鳶が傭兵として霊音と喰奴を雇い彼らの力により物語は完結した。イリスの殺害の目標には俺も含まれているのだがイリスは一行に俺を殺めようとはしない。

いつも理由を聞くとこう帰ってくる。


「桜を殺す暇がない。暇さえあればいつでもすぐにでも殺すからさ」


それは彼女の口癖になり始めようとしていた。質問するとコンピューターのようにこのセリフをはいてきやがる。

すべてを亡くされた俺を生かすことが彼女にとっては最高に優雅な拷問という名の娯楽なのか?

でもイリスには楽しい,悲しい,悔しい,苦しい,そういう人間にはごく普通の感情が無いように思える。つまらない 

という感情はなんだかあるような気はするけど。


「今だって暇そうじゃないか」

「お腹いっぱいだからそれを消化している。 ほら暇じゃないだろ」

「はぁ•••イリスなら俺なんて簡単に殺せるんじゃないか?」

「桜なら่ゴキブリ並の生命力で逃げ回りそう•••気持ち悪い」

「ちょ、それは傷つくわ」


この殺し屋は俺を殺す気があるのか!?

まあ殺してほしい訳じゃないのだけれどこいつの態度を見てると腹が立ってくる。だだをこねる子供を会いてにしてる気分だ。


俺が怒ってるのがわかったのか、内股で座っている足を一端 中が見えないように膝で立ってスカートを手で上から下にはらって整えゆっくり正座になった。だけど全体的にダルそう。疲れたというオーラと顔的にお腹が空いたというシグナルが伺える。

いくら人間と妖怪のハーフであっても体の構造も心もほとんど同じなのだと思う。

今降っている雨だって一粒一粒に名前があったとしてもそれは雨という名でくくられる。だけど妖怪が人間を全員見たところでそのすべてを同じものとは言えるのは難しいだろう。 人には個性があり感情があり他の人とは明らかに違う。同じものなどない。

ならイリスは、感情が見あたらない彼女にとっては人間は人間なのだから安易に人を殺めることができるのか?

だけどそこに俺というものが邪魔をして答えを見いだすことができない。計算式の中にある難解な数字のせいで方程式が解けない。


「なら俺がお前に俺を殺すことを強要したら?」

「もしそれでわたしが行動を起こしたとして霊音と喰奴が止めにかかるでしょ? それはめんどくさい」


なら・・・

そこまで言うのなら俺の気持ちをさらけ出してまでこれだけは言ってやる。


「じゃあお前を殺す」


「・・・そ」

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