act.9 学校
週明け。
春樹はバイトを一方的に辞めてから、一週間ほど学校を休んだ。
慎吾達は、先生に風邪だと聞かされたが、あまり信じていなかった。
杉本の言葉と、あの美人二人組。
それと、普段なら考えられない春樹の言動。
何かあると思うのは、必然だった。
「慎吾。今日は水野君来るかな?」
「さあな。基本的にあいつは真面目だからな。何もなければ来るんじゃないか?」
始業20分前、教室の隅で、慎吾達は話していた。
生徒は既に半分程が来ている。
残りは朝練のある運動部員と、いつも遅刻ギリギリの寝坊常習犯だ。
「どういうことかなぁ?水野君。杉本さんの言う通り、水野君はあんなこと言わないよね。」
「そうだな。春樹の奴何か隠してるぜ。自分が能力者だと言わなかったし……」
「バイト始めるときも、結構戸惑ってた。」
バイトを紹介した時、春樹は何か言おうとしていた。
自分達が、イレイサーを珍しいと思って戸惑っているんだと勘違いして、強引に話を進めたから、結局春樹は、この仕事を引き受けたのだ。
今となっては、本当は関わりを避けたかったのかもしれないと思う。
「おっはよ〜。何深刻そうな顔してんの?」
「春樹!!」
いつのまにか、横の自分の席に鞄を下ろして、話しかけてくる春樹がいた。
「水野君……。」
少し、躊躇った感じで、みかが見上げてきたので、春樹は潔く頭を下げた。
「ごめん!慎吾達イレイサーなのに、あんなこと言ってさ。別に貶すつもりは無かったんだ。なんか勢いで……。」
「そんなことは、もういい。それより、先週、なんで学校休んだんだ?風邪じゃないんだろ?」
慎吾の探るような目つきに、春樹は、うっιと一歩下がった。
「いや……それがさ……。」
目を宙に泳いがせながら、春樹はなんとか言い訳を考えようとした。
本当は話しかけて、無視されてもいいと思っていたのだ。
だから、心の準備をして話しかけた。
それがあっさり流されて、あまつさえこんな鋭い質問をされるとは思っていなかったので、春樹は大いに困った。
もちろんこの一週間、本当に風邪を引いていたわけではない。
機関復帰にあたって、いろいろやることがあったのだ。
ついでに、嫌でも彼等を巻き込んでしまう事実を見付けてしまい、下手な事を言えない。
「…………ゴメン。まだ言えないんだ。いつか必ず説明する。」
春樹はバツの悪い顔で謝った。