act.4 西条イレイサー事務所
春樹が、この『西条イレイサー事務所』で働きはじめて二週間が経過した。
仕事にも慣れ、持ち前の人慣つっこさで所属しているイレイサー逹とも仲が良くなり、もうすっかり事務所の一員になっていた。
ここには、所長を含めた十二人のイレイサーがいる。【事務所】ならこの人数は平均ぐらいだろう。
そして、能力者としても、他の事務所に比べたらレベルの高い者逹が揃っていた。
イレイサーやその他の能力者は、各事務所を統括する“機関”が定めた能力者のものさしに従って、コードA〜コードFに分けられている。
京子さん(本人がそう呼ばせている)はコードBで、機関にいてもおかしくはないほどの能力者だった。
他のメンバーもCやDで、受け持つ仕事も高度なものばかりだった。
ここでは、機関から回ってくる仕事の他に、民間や企業から依頼されるちょっとしたモンスター関連のいざこざも扱っていた。
民間からの仕事なら、E、Fレベルでも出来るが、機関からの仕事は、本格的な退治なので、中、上級イレイサーでなければできない。
「京子さん。機関から仕事です。」
パソコンを、いじっていた春樹が声を上げた。
「わかったわ。こっちに回して。」
「座標は、《14260E》結構近いですね。」
パソコンを操作しながら呟いた。
依頼は中級モンスターの退治だった。
日曜の今日も、事務所に休みはない。いつ、なにが起こるか分からないし、モンスターに休みの日は関係ないのだ。
だから今日も、ほとんどのイレイサーが集まっていた。
「それじゃあ、杉本さんに、狩野さん、慎吾くんとみかちゃん、私で行きましょうか?」
「「わかりました。」」
「春樹君も行ってみる?」
京子さんは、いたずらっこのように、ニヤリと笑って春樹を見た。
「………は?」
「だから、春樹君も行かない?」
「行きません。俺は一般人です。」
春樹は即答ではっきりきっぱりと断った。
「いいじゃない。私逹五人も出るんだから安全だし……それに春樹君、モンスター見たことないんでしょ?」
「そりゃぁ、ないけど………。」
「それじゃ、決定。」
「それとこれとは、話がべつ…………って…ちょっと……。」
京子さんは、Let's Goとか言いながら、さっさと出ていってしまった。
「まあまあ。良い経験になると思うぜ!!」
「慎吾まで……。」
そういって春樹は、溜め息を吐いた。
〈なんでいまさら、そんなものを………。〉