act.2 バイト開始
「私が所長の西条京子よ。彼方が春樹君ね。よろしく。」
そう言って、手を差し出した相手は、なんとゆーかすごい人だった。
いちおうスーツは着ているが、OLと言うよりはむしろキャバクラ嬢だ。
凹凸のはっきりしたラインが、ピチッとしたスーツのせいで余計際立って見える。
身長も高めで、春樹と同じくらいあるだろう。なによりも、その背中まである、ウェーブのかかったダークブラウンの髪が、もともと整った顔立ちを、さらに引き立てている。
その顔に満面の笑顔を浮かべて言った。
「本当は、履歴書で書類審査とか、面接するんだけど……合格ね。」
「え…?」
「事務だった人が一ヶ月前に辞めちゃってネ。私たちも忙しくて、データ処理とかしてる暇ないのよ。今は誰でもいいから、人がほしくて……。それに彼方けっこう可愛いしね。」
と、さっきとは違う妖艶な笑みを浮かべて言った。
〈可愛い…ね。……あんまりうれしくないけど……〉
「というわけで、今日からヨロシクね。」
そして春樹が、口を挟む暇もなくあれよあれよと事は進んでいった。
とりあえず、事務所のメンバーと自己紹介兼挨拶を済ませ、自分の仕事を聞いていた。
「今言ったことをこのPCでやってね。詳しいことは、杉本さんに聞いて。」
「ああ。さんきゅ。蓮田。……あのさ、ひとつ聞いていいか?」
「うん。」
「蓮田もイレイサーなのか?」
「そうよ。私と慎吾はここのイレイサーだよ。」
「……え?慎吾も……?」
「うん。そう。」
「マジかよ。イレイサーの知り合いがこんな身近にいたなんて……。」
〈なんかいろいろありすぎて頭が混乱してきた。〉
〈でもなんかまずいところに来ちゃったな……。〉
イレイサーの杉本に、話を聞きながら、小さく本日二回目の溜め息をついた。