act.1 バイト探し
「なぁ、慎吾。なんかいいバイトない?」
いきなりな春樹の言葉に、慎吾は一瞬虚をつかれた顔をした。
「なんだよ、いきなり。遊ぶ金にでも困ってんのか?」
「いや、こないだまでやってたクラブのバイトクビになっちゃってさ。」と言って春樹は、ハハハとカラ笑いした。
「何やらかしたんだよ?」
「なんにもやってねーよ。ただやっぱり、高校生はマズイってさ。」
「は〜そりゃ災難で。」
「全然そうは思ってないだろ?」
「ぴんぽ〜ん」
慎吾は、面白そーに、ニヤニヤ笑っている。「ったく、ひと事だと思って………。」
「いいバイト紹介しようか?」
突然、背後から声が聞こえた。
「蓮田?」
「みか?」
春樹と慎吾が同時に呼んだ。
春樹の後ろにいたのは、クラスメートで慎吾の幼馴染みの蓮田みかだった。
「なになに?あてあるの?」
「うん。とっておきのがネ。仕事は簡単だし、時給もいいし。」
「マジ???紹介して。」
「いいよ。じゃ〜今日放課後時間ある?」
「?あるけど……。」
「じゃー連れてってあげる。」
「えっ。いいよ、連絡先教えてくれれば…。」
「いいって。まかせなさい。」みかはドンと胸をたたいた。
「それで、どんなバイトなんだ?」
みかと春樹は、街を歩いていた。
「ん〜と。水野君、パソコンできる?」
「?まぁ、少しは…。」
「じゃあ簡単だよ。大丈夫×2。」
そう言って、みかはスタスタと歩いていった。
「えっ…。ちょっと…まっ……。」
春樹は急いで、小柄なみかを追い掛けた。
「着いたよ。」
そこは、ビジネスビルだった。七階だての結構立派なビルを、みかは堂々と入っていく。春樹は戸惑いながらもみかのあとについていった。エレベーターに乗ったところで、みかがやっと口を開いた。
「ここの六階が事務所なの。」
「は?なんの?」
「イレイサー」
「…………………は?」
「だから、イレイサーの事務所。」「イレイサーって退治屋の?」
「そうだよ。他にないじゃない。」
「そうだけど、だって俺能力者じゃないよ。」
「いいの。いいの。水野君には事務やってもらうから。」
「いや……でも……。」
〈まいったな……。〉
「さぁ。行きましょ。」
みかは、エレベーターを降りて事務所の方に歩いていってしまった。
春樹は諦めたように溜め息をついて、みかの行った方に足を向けた。