花と団子
桃色の花弁がひらひらと舞い降りてやがては敷物の上へと止まる。
その敷物の上では、会話にも花を咲かせている人だかりがあった。
私は数人の女友達がいるその中で、堂々とお団子を頬張っている。
今年も、やってきた。
「葵ー腹八分目にしとかないともたないよー?」
花見が始まってまだ間もないのにすっかりお酒臭くなった友達が言う。
まるで説得力がない。
「葵は花より団子だよねえ?」
そう言いながら清香が会話に割り込んできた。
そういえば、そういうタイトルのドラマが以前放送されていた気がする。
「でもさあ、いつもよくそれだけ食べて太んないよねえー。おねーさん羨ましいぞー」
最後の方が明らかに棒読みの可愛らしい酔っ払いに少し笑う。
美咲の方が十分綺麗だし細いよ、と口説き文句紛いな台詞を吐きながら。
そんな他愛ない会話がしばらくの間続いた。
「あたしらも、もう二十歳後半だね」
騒ぎに一段落が着き、彩菜のその言葉でみんなの話題が統一された。
「いーや、まだまだうちは現役だい」
横になりながら未だにお酒が全く抜けきれていない美咲が言った。
「そうですね美咲さんちなみにお腹のそれはお餅ですか」
彩菜の悪のりである。
いつも彼女は真顔で冗談を言って周りを笑わしてくれた。
「ぎゃー!人が気にしてることをー!」
じたばたと大人げなく転げ回る彼女を見ていると学生時代を思いだし、懐かしい気持ちになった。
相変わらず、美咲はノリが良い。
「社会人になってもさ、こうして毎年みんなで集まれるってすごいよね」
花弁は少しずつ散り続け、喋る私の視界に映っては消える。
ここは学生の頃見つけたいわゆる穴場で、それ以来、毎年この季節になると花を背景にみんなで騒ぐことになった。
当初はお弁当を持ち寄っての小規模な会だったが、数年前からは飲酒もメニューに加わっている。
「来年もまた集まれるといいね」
「次はもっと団子のレパートリー増やしとくよ」
料理好きの彩菜が嬉しそうに言った。
彼女は私の食べっぷりにいつも喜んでくれる。
「できればおはぎが」
それに容赦なくリクエストをする。
「分かったよ、でもおかずも食べようね」
笑顔で説教をされた。
しかしこれで来年はより楽しめる。
そういえば毎年のようにこんな会話がなされている気がする。
再びみんなが各々で騒ぎ出す中、私だけが団子へと手を伸ばした。
この空気が来年だけでなく、再来年もその次もずっと楽しめるといい。
歳をとっても、こうして団子の味をみんなのいる中で味わう。
私にとっての桜は、団子の味。
いつの間にか敷物は、桃色に染まっていた。
短編執筆にお熱な銀雀です。
「ひなまつり」ということで季節も移り変わるこの季節、私が春に抱いているイメージをそのまま書き綴りました。
陽気なんです。
平和な印象が四季の中で、一番強いんです。
私は残念ながら花見というものがあまり記憶にはないのですが、雑誌やテレビなどのメディアを通じて素敵な景色をよく見かけます。
それらを見ながら友人と満喫する姿を想像させていただいたりと、幸せな気分にさせられます。
要は妄想ですね。←
精神的よだれを垂らしながら書いた作品で、なるべく明るさを意識して仕上げました。
楽しんで頂ければ幸いです。
読んで下さってありがとうございました。
皆様が桃の節句をお楽しみ頂けますようお祈りしています。