わかっていた結末
番外編(登場人物のまとめ的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、裏設定とかネタバレがあるかも。
みなさまよろしく。
女神は、冬夜を軽く抱きしめるとおでこをくっつくけた。
『じゃあ、見せてあげますね』
「うぇへへ…… うわあぁぁっ!」
いきなり僕の頭の中に、あの朝に駅で起きた映像が流れ込んできた。
僕のささやかな抵抗は、頭の中に流れ込んできた映像に押し流された。
あの朝、僕が駅で片岡を煽って。そして……
──てめぇ、殺してやる!
片岡に殴られるのと同時に身体を後ろに流した僕の身体は、ホームを越えて線路に向かって飛んでいった。
次の瞬間にはホームを通過中の電車に、完璧な角度で……
「うげっ……」
時速80キロで疾走する電車に飛び込んだ俺の身体が、どうなったのか……
その後の惨状にモザイクがかけられていたのは、ひとえに神の慈悲だろう。
でも、モザイク越しでも俺の身体は(自主規制)になったのが分かる。
たしかに、あれではなぁ。女神様の言った事も頷けるよ。
──冥府の神でもあなたの蘇生は無理でしょう。
ちらりと、女神様の言葉が脳裏をかすめた。
うん、神ならぬ人間だった僕にも分かるよ。
あれでは…… あんなになってしまったら。
神様でも、蘇生出来るようなレベルでは……
『私なら肉体の復元も不可能ではありませんけど』
「……もう、いいです…………」
僕は、へたへたと床に座り込んでしまった。
女神様は、ああなった身体でも元に戻せるって言うけれど。
仮に身体を復元してもらったとしても、すぐに死んでしまうかも。
それ以前に、アレを見てしまったら、まともな生活なんか出来っこないよ。
「は… ははははは……」
一気に気力を失った僕は、乾いた笑い声を出す事しか出来なかった。
僕は、心の奥底では、ちょっとは期待していたんだろう。
瀕死の重傷を負ったとしても、ひょっとしたら…… って。
死ぬ事なんか怖くない。
そう思っていたのになぁ…… でも、アレを見たら心が折れた。
心の中に広がったのは、何とも言えない虚無感と言う名の、闇…… だ。
「まあいいや、どうだって……」
その様子を静かに見つめていた女神は、冬夜に向かって手を差し伸べた。
『あなたの反応を見ていると煩悩はあれど、私への害意は無いようですね』
「もう、何が何だかわからなくなってきた……」
僕はおねえさんの手を借りて、立ち上がる事が出来たけど、あ… だめだ。
バランスを崩して倒れ込んだ僕の身体を、神様は優しく抱きとめてくれた。
「ええと…… ようこそ、神の間へ。冬夜くん』
目の前の神様は、そう言ってにっこりと笑ってくれた。
『あなたがここにたどり着いたのも何かの縁ね。あなたとお話したいわ。
あっ、そう言えば… お腹は空いてない?』
「はぁ……」
神様が軽く片手を振ると、部屋の中がいきなり和風のそれに変わった。
床は畳敷きで、壁や天井はすんごく豪華なものに変わっていた。中学校で西の都に修学旅行に行った時にで見学した御所… みたいな部屋だ。
ひとつだけ違和感があるとすれば、これかな。
部屋の真ん中には、部屋の豪華さに見合わないちゃぶ台が… ある。
それは古びてはいるけれど、大切に使い続けられてきたんだろう。
丁寧に磨き込まれた木材だけが醸し出せる風格を感じる。
ふたたび女神様が腕を振ると、ちゃぶ台にはフードカバー──正式にはクローシュって言うらしい──が、かぶせられたお皿がふたつ。
……うん、これは断れないよね。
女神様に、色々とわからせられた冬夜くんでした。




