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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
神様たちは大騒ぎ
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ニイタカヤマ、ノボレ

ごめんなさい。投稿設定を間違えてしまいました。

 おねえさんは、こつんとくっついていたおでこを離すと、事務的な口調で僕に話しかけてきたんだ。

 ああ、見た目だけじゃなくて声もステキだ。

 決して大きな声で話してるわけじゃなくて。


 いや、どちらかと言うと、声は小さめなんだ。

 それなのに、僕の耳は彼女の声を完璧に拾い上げてくれる。

 ぽぅっと、浮かれた気持ちでいられたのも、そこまでだったけど。


『……あなたは泉水 冬夜(いずみ とうや)さん、ですね?』

「なんで僕の名前を?」

『私にとって、この程度の事なら簡単なのです。簡単すぎますよ』

「……心を読んだの?」


 と言うよりも、記憶の読み出しとかされちゃった?

 やばっ! エッチな妄想してたの、バレたかな……


『悪いとは思いましたが、あなたの表層意識を少々。でも本を手に取って表紙をながめる程度、と思ってもらえれば』

「やっぱり読んだんだ……」


 とはいえ、本の表紙と言ったのは、あながち間違っていないかも。

 心というか記憶というか。そういう部分の表層部分にあるはずの名前や性別、年齢といった情報らしいからね。

 もしも文庫本だったら、あらすじ程度だろうかね。


 でもさ、まさか頭の中身をハッキングされるなんて思わなかったよ。人類の技術では、そこまで高度な事は出来ない。

 この分野で最先端をいっている国連宇宙軍でも思考制御は無理。さすがに不可能じゃないかという意見も出ているらしい。


 ……と言う事は、やっぱりこのおねえさんは、神様?


『そうですよ、冬夜くん。おねえさんは、とーっても偉い神様なのです。もっと崇めてくれても良いのですよ』

「ええと、マジですか?」


 ぱっつんぱっつんのブラウスを着て、芋ジャージを穿いた神様って……

 まさか男の娘神と言う事は…… いや、それはないか。

 男性なら首元にあるべきものが見当たらないからね。

 うん。ささやかだけど、僕にもあるからね?


「え、と…… じゃあ… 女神、さま?」

『そうですとも。おねえさんは正真正銘、まぎれもなく女神なのです』


 彼女は、ふふん! とばかりに胸をそびやかしながら自慢げに言った。

 ひああああ…… 僕は女神様から視線を外す事が出来なくなっていた。

 仕方が無いでしょ。女神様が動くたびに、たゆん、と揺れるんだもん。

 目の前にそびえるのは富士山どころか、新高山(にいたかやま)もかくやとばかりの巨大な山脈がさ。


 そして、だ。


 これだけ間近なところで見れば、嫌でも分かる。これは『本物』だ。

 そりゃ僕だってグラビアアイドルの巨乳さんとか、エッチ系女優さんの画像は見てたもん。

 そして、あの女優さんは偽乳ぽいなぁ… とか思いながらティッシュ……


『こほむ?』

「あっ!?」


 目の前の神様は俺の事を半眼で睨んでいるんだけど。

 僕、何か悪い事を…… まさか!?


「また…… 心を読んで!?」

『冬夜くんの魂魄(こんぱく)が、これほどまでに煩悩まみれとは… おねえさんは少し悲しくなりましたよ』


 彼女の声を聞いた途端に、心の中に湧き上がりつつあったエッチな気分は粉々に砕け散ったんだ。

 心の中では薄々気が付いていたんだけど、目の前のおねえさんにきっぱりと言われて、分からせられてしまったよ。


「僕が、魂魄(こんぱく)だって?」


 魂魄とは生物の持つ根源的なものである。


 うーん、タマシイとか霊魂と言えば、分かりやすいだろうか。

 より詳しく言えば、(こん)は精神を、(はく)は肉体を司る。それらが合わさったものを魂魄(こんぱく)と言う。

 ゆえに魂魄が離れてしまった肉体は、ただの肉塊に過ぎないのだ。


「じゃあ、僕は…… やっぱり死んだの?」


 魂魄が人間の住む世界に留まる事も出来なくはないが、それは2か月にも満たない僅かな期間に過ぎない。

 肉体から離れた魂魄は輪廻の輪に戻り、残された身体は大地に還る。


 それが、創造神の定めた宇宙の法則… だ。

新高山は明治天皇が命名し、日本海軍の暗号電文の由来となった山なのです。

日本の全盛期──領土が最大だった時代に存在した日本で一番高い山でした。

ちなみに標高は3952メートル。富士山より176メートルも高いのです。

余談ですが、陸軍の暗号電文は『ヒノデハヤマガタ』。ヤは8に通じるとか。

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