今夜も眠れない
今年も明日でおしまいですね。
でも投稿はといいますと。
火曜日金曜日の通常投稿に年末年始が重なるから…… うわぁ、明日から4連投。
うん、大丈夫。何とかなると思うの。
冬夜たちがこけしサーバーを囲んで、あーだこーだしているころ──
ハイキングコースからかけ離れた所にある、とある山中にある山荘では、3人の女達が酒盛りの準備を始めていた。まだ陽も高い時間から何事だと言うなかれ。
彼らは彼らなりに十分すぎるほどの仕事をこなしたのだ。
「くふふふ…… VRゴーグルは問題なく作動しているようだねぇ」
「私のこけし丸も完璧よぉ。インターフェイス周りの仕上げに3徹したけど、その甲斐はあったわぁ」
怪しい笑いを浮かべているのは、芹沢と山ノ谷である。2人が軍事技術をこっそりと転用して作り上げたのは通夜が使うVRゴーグルとこけしサーバーだ。
そしてゴーグルやサーバーは昨日のうちに病院に運び込んでいる。
「ええと、松平様がお見えになりましたけど……」
「ねえ2人とも? ちょーっと良いかしらぁ?」
ドアの陰で申し訳なさそうにしている岩本を押しのけて、ひとりの──人の良さそうな女性が、笑顔を浮かべながら芹沢たちの傍らに歩を進めると、がっしりと……。
「あ、知子か。よく来t…… おががががが!」
「あんたたちはぁ! あ・れ・ほ・ど、防衛省のメインコンピューターにハッキングするんじゃないって言ったでしょ!」
「ごめんやめて割れる中身出る……」「あうあうあうあう……」
2人のこめかみには、鋼鉄のタガもかくやとばかりのアイアンクローが決まっていた。
「やかましい! 今日という今日は、その頭を握り潰してやるから覚悟なさい」
平均よりは、やや長身ではあるものの、すらりとしたその体格からは考えられない膂力に晒された2人の頭からは、ミシミシという音すら聞こえそうだ。
「せんぱぁ~い、それ以上は拙いですよぅ」
「止めるな岩本! こいつらこの場で引導「誰が掃除、するんですかっ!」……え?」
「タンパク汚れはなかなか取れないんですよ」
「ん、む……それもそうだが。そうなんだがなぁ……」
岩本の放つ異様な雰囲気に気圧されたのか、彼らの頭を掴んでいた手から力が抜けた。
その隙に殺人的な握力から脱出するのに成功した2人は、どこから取り出したのか、軍用ヘルメットをかぶっている。
「酷いじゃないか、私の頭を握り潰そうとするなんて。科学界の損失だと思わないかね」
「ヲタは黙りなさい! いい歳をしてまったくもう、少しは良識を身につけなさいよね」
「まあ良いじゃないか。私たちがなし得た成果に比べれば、ほんの些細なことだとは思わないかね…… ひっ!?」
及び腰になりながら反論を企てる芹沢を視線だけで黙らせると……
「あんた達…… よりにもよって、うちの会社を経由するなんて、良い度胸じゃない?」
「いっ、いや…… これには深いわけがあるのだよ。はっ、話を聞いてはくれないか?」
ギロっと芹沢を睨み付けた松平は、無言で続きを促した。
「……PSを見つけたんだ。改造種でも近縁種でもない。純粋な男性なんだ!」
「何ですって!? それを早く言いなさいよ」
決して表に出さずに──しかし心の中でニンマリと笑いながら──芹沢は話を続けた。
「出生前の検査結果は近縁種だった。しかし遺伝子解読をし直した結果、彼… 冬夜くんは1億人にひとり、生まれるかどうかのPS。つまり純粋な男性だったのだよ」
一気にまくしたてた芹沢に続いて、岩本が続いて
「それに比べればハッキングなんて…… 先輩ならもみ消してくれますよね?」
「……そういう事情なら仕方がないわね…… なんて言うかぁ! ハッキングしていい理由にはならないでしょうがあぁあ!」
マンガのようなたんこぶをこしらえた芹沢と山ノ谷が、松平女史が手配した空軍の連絡機に押し込められて。そのまま首相官邸に連行される事になる……
……と、まあ。そんなこんなで視点を病室に戻す事にしよう。
「ねぇ、おにい。どぅお、使えるぅ?」「たぶん大丈夫だと思うよ」
ゲームの操作はそれほど難しいものじゃない。本来ならば指で動かすはずのスティックやボタンを、視線入力だけで操作するんじゃなかったらね。
コンパクトに配置された操作パネルとはいえ、視線入力でカーソルを動かして──それも2か所か3か所を同時に──操作するのが大変なだけだ。
VRゴーグルとこけしサーバーをリンクさせると、視界が切り替わった。思ったよりカメラの視界は広いし動きも滑らかだ。まるで自分の目で見ているみたいだ……
「ねえ、おにい。しよ?」
まさかテグダーとは。今となっては古典も古典じゃないか。ふっ、楽勝だね。
「……と言うわけで、おやすみ」
「おにいぃ! 勝ち逃げは許さないよぉ。ね~ぇ、もう1回しようよぅ」
……ネカセテ。タノムカラ、オネガイ……
……ぐう。
大掃除していたらブラックFHというのが出てきたので…… うわ、まだ動く?
ぺなぺなな平べったいCDみたいのをセットして、と……
私:……ねえ、お母さん? 勝ち逃げはダメだと思うの。
母:ふっ、何度やっても返り討ちにしてあげるわよ。
私:ぎゃあああ、また負けた!
父:何をしてるんだ、なにを!?
母:何ってコレだけど?
父:おまっ!? うどんレーザーは禁じ手…… まあいいか。




