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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
夢見るように、ねむりたい
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今夜は寝かさないから

 身体が麻痺したまま動けなくなった僕は原因不明の難病を患った事になったらしい。

 だから最悪の場合は骨がつながっても、身体が動かないという事もあり得るわけで。


「さ~あ、冬夜くん。身体をきれいきれい、しましょうねぇ~」


 今日は週に1回の身体を拭く日だ。こういうのは、嬉し恥ずかし過ぎて死にそう。

 この病室にはお風呂やトイレなんかが、あるのが唯一の救いと言えば救いかも。

 だからと言ってさ、なんで2人とも水着を用意してるんだっての!


 ふりふりがたっぷり付いたパレオはまだいい。だけどさぁ……

 水着にしちゃ、布の面積足りなくない?


「あら、冬夜くん。下着姿の方が良かったのぉ?」「おにいの、えっち♪」

「ちがぁああう!」


 でもさぁ、身体を拭くだけの筈でしょ?

 と言うよりも、だよ。そもそも両足を石膏で固めるなんて大昔のやり方しなければ、介護用クレーンを使って湯船に入れた筈だよね。

 なんだってこうしたのさ。友里さんの提案だってのは知ってるんだよ?


「その方が冬夜くんを逃… 患部をがっちり固定できるんですよぉ?」

「どーでもいいけどぉ、身体を拭かなくていーい?」


 僕は中途半端に脱がされているからエアコンが効いているのに、軽く寒さを感じてる。

 はやく身体を拭き終えて服を着せて欲しいのは山々だけど、服を脱がすのはもう少しだけ待ってくれない?

 せめて心の中で円周率の最終桁を暗唱するまで待ってくれた方が都合がいいんだけど。


「んもぅ、ワガママ言わないで下さいね。今日拭かなかったら、次回…… つまり来週までこのままなんですからねっ!」


 彼女は文句は聞きませんとばかりに、おむつに手を伸ばした。


 ぺりぺり、ぺりぺり。


 やめて、お願いだからぁ。今はホントに拙いんだってば!

 ああああああ…… 


「うふふ、冬夜くんったら♪」「うっわぁ……」


 うん、なんだ?

 美月の反応はまあ、わからんでもない。でも、友里さんの頭がぴこぴこと動いているような…… うん、気のせいか。

 いや、これは気のせいなんかじゃ無い。


「うふふふふ」


 お湯で湿らせたタオルで身体を拭いている友里さんの頭から……

 ぴょこんって…… ぴょこんって出てるんだよ、猫の耳みたいのがぁ。

 前に流行したカチューシャどころか。どう見ても作り物じゃないよね、その耳は。


「…………」

「おにい、どしたん? 気持ちよすぎた?」

「あ、いや。そういう訳じゃないんだけど」


 もう1度友里さんを見直してみても、耳は生えてなかった。

 ……やっぱり気のせいか。そうだよね、人間にネコミミが生えてる筈ないもん。

 まあ、いいか。


 友里さんは、念入りに身体を拭いて寝間着を着せると最後にスキー用のゴーグルっぽいものを手に取った。


「芹沢博士が退屈だろうって、新しいVRゴーグルを作ってくれたのよ」

「新しいのって、それが?」

「そうなの。視線入力システムはあとで調整…… あら、調整済みなのね」


 博士が作ったVRゴーグルは、軍用の視線入力システムが組み込まれているそうだ。

 知っての通り、視線入力システムというのはゴーグルに内蔵されたセンサーが目の動きを読み取って、カーソルの移動やクリックなどの操作をしてくれるという優れものだ。


 病院にあったのは、ゴーグルの裏側が液晶ディスプレイになっていたけど、こいつのはディスプレイがない。

 その代わりに映像は網膜に直接投射されるんだそうだ。


「国連宇宙軍で使っているのを流用したんだって。月着陸船の操縦も出来るそうよ」


 新型宇宙服の開発も進んでいるって話を聞いたことがある。完成予想図が後悔されているけど、ほとんど戦隊ヒーローのコスチュームっぽいんだよね。

 でも完成は何年か先の話になるんだって言ってたかな。なんでも宇宙服の素材からの開発なんだ。


 だから今使っている宇宙服を使い続けるしかない。手の部分は特にゴツいから、それに合わせて操縦装置もかなりでかいからね。

 性能はともかく、見た目が子供用のオモチャっぽく見えるのは仕方が無いのかなぁ。

宇宙服の分厚い手袋で手の大きさが倍以上になると、スイッチ類は相対的に大きくならざるを得ないのです。

だから操縦装置がオモチャっぽく見えるのは仕方が無い事なのです。

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