芹沢博士は○○な人?
それはそうと、芹沢先生ってどんな人なんだろう。液中酸素破壊剤とか言うものを開発した人らしいんだけど。なにやら物騒な響きを感じるのは僕だけかなあ。
そう思いながらも言葉とは裏腹に、妙にワクワクしている僕がいる。
「あーしはよく分かんないけどぉ、なーんか無茶苦茶! って感じぃ?」
「たしかにあの先生はマッド入ってるのよねぇ」
おおいい…… いきなり不安になるような事を話してるけど。
いったい何の先生なんだろう。さっき分子学って言ったよね。それ原子物理学ぽい響きがあるよね。
ベッドに乗せられたまま検査室に運ばれている僕は、博士に会うのを内心、楽しみにしてたんだ。実際に会うまではね……
「お-っほほほ、君が冬夜くんだねぇ? 私が芹沢だ。安心してその身を任せなさーい」
病院の裏手に駐車しているトレーラーハウス… 移動研究室って言ってたな。
そこで待っていたのは、満面の笑みを浮かべた芹沢博士だ。てっきり年季の入った爺さんだと思っていたんだけどね。母さんよりも、ちょい年上ぽいかな。
とにかくヤバそうな人だという事は最初の5分ではっきり分かったよ。
ボンデージ姿に白衣を羽織った姿って、悪の秘密結社の科学者っぽくない?
「あの…… 採血ってそんなに大きな注射器を使うんでしたっけ」
「大丈夫、大丈夫よぉ。痛くしないからねえ?」
ごっそり採血されたら、今度は身体のあちこちに電極を貼り付け始めた。
そしてガビョビョビョ… とプリンターから吐き出されるデーターを見ながら、ウヒヒヒって感じで笑ってるんだよね。
こっちは電気流されて、ビックンビックンしているってのにさ。
こんな身体じゃなかったらソッコー逃げ出してるよ。
「おや、汗をかき始めたね。いひひひひ… 汗も重要なサンプルだからねぇ」
試験管片手にゆらぁ… って博士が近づいてくる。
うひぃいいい。本気で怖いんだよぉおお…… モームリ! ダレカタスケテ……
「…………」
「ふふふ、気絶してしまったか。くくく、その方が都合が良いからねぇ。これで遺伝子サンプルも絞り放題…… おっ、これはまた、たくさん出たものだ。いいねぇ、うん」
……どうやら気絶しているうちに検査は終わったらしい。
気が付いたら廊下の天井が見えるから、多分そう言う事なんだろう。
「おにい、おかえりぃ」「おかえりなさい、冬夜くん」
声のする方を見ると、2人して山のようなタオル… 手ぬぐいか? まあいいか、とにかく洗濯物を畳んでいるところのようだけど。
聞いてみると、これも業務の一環だそうだ。
「今日は美月ちゃんが手伝ってくれたから、早く終わったわぁ」
「だって、いま畳んでるのってぇ、おにいのおむつだしぃ?」
「わざわざ広げて見せんでもいい!」
まさかなぁ、あんな模様が付いているモノだとは思わなかったよ。
えっ? どんなやつだって? うん、3匹の豚とかその手の。幼稚園に入るころに見てただろ、ドンパールームとかママといっしょとかさ。
そこのキャラとかがプリントされてるんだ。
「ねえ冬夜くん、これなんかどう? かわいいでしょ」
「だから、わざわざ見せなくてももいいです」
「つれないなぁ。これはみんなの寄付なんだから、もっと喜んでくれても良いのよぉ?」
美月もすっかり居付いている。最近は夕方になったら家に帰るし、真面目に中学校にも行っている。それ以外の時間は病院にいるんだよね。時々、母さんも見に来てくれるけど、何も言わないでいるという事は黙認… か。
そして面白いことに、あの美月が友里さんには逆らわなくなったらしい。
おかげで連日のように徹夜でゲームとか付き合わされなくなったのは、実にありがたいと思うんだ。それにしてもなぁ……
「ねえねえこれって、新作?」「それは天野さんの手作りだって」
きゃいきゃいと言いながら盛り上がるのは良いけどさ、実況するのだけは勘弁してくれないかな。なんかペリペリと音がしているところを見ると、例によって例のイベントだと思うんだけどさ。
「はぁい、お着替えが終わりまちたよー。いっぱい出まちたねぇ~」
「はいはい、ありがとうございました」
いやはや、慣れってのは怖いね。
もう恥ずかしいとかそういうのは、あんまり無いかな。
冬夜くんの入院生活もいつの間にか4か月が過ぎたようです。
イベントはまあ…… 毎日のことだから慣れるっちゃあ、慣れるかも。




