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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
夢見るように、ねむりたい
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深き眠りより

 次に目を醒ました僕の視界に入ったのは……


 「……しろない天井だ」


 いや、言い間違いじゃないよ。『白い』と『知らない』を掛けてみたんだけど、農業アイドルのおっちゃんが飛ばしていたダジャレよりはマシでしょ。

 頼むから、マシだと言って。おねが……


「あ、泉水君、気が付いたんだ」


 ベッドの傍らに置かれた椅子に座っていたのは、おさげ髪にトンボのような大きな丸眼鏡をかけた看護婦さんだった。

 彼女の名前は菱見 友里(ひしみ ゆり)さん。2年前に看護学校をそこそこの成績で卒業、正看護婦の資格を取って今に至る。

 彼女とは名前や年齢を教えてもらえるくらいには、人間関係が出来ている。


「……友里、さん?」あれ、声がよく出せないな…… まあいいか。

「よかったぁ。痛い所はない? ……あ、先生を呼んでくるからね」


 彼女は椅子から立ち上がると、部屋の外に出ていった。


 顔には包帯が巻かれている。その下の膏薬が、ぶよぶよしているのがなぁ……

 熱さましシートを半日も付けてれば、こんな感じかな。

 口を動かすのは問題ないけど、顔がぶよぶよべたべたしていて、とっても気持ちが悪いんだ。


 その他に違和感があるとしたら、両足かな。

 駅で左足が血だらけになっていたのは見たけれど、右足も駄目だったのかな。

 目玉だけを動かして足元を見たら、両方の足が完全に固定されているみたいだ。

 足が棒みたいになっているのは、石膏か何かで固定されているからだろう。


「……足だけじゃなくて、身体が動かない?」


 壁には僕が着ていた学生服がハンガーにかけられてぶら下がってる。

 それはともかく、ズボンの方はもう駄目かも。買い直さないと。

 右手を見るとチューブが繋がれていた。点滴のパックの中身はさほど減っていないみたいだけど、どのくらい時間は経ったんだろう。


 しばらくすると白衣を着た初老の、これまた顔なじみになっている先生が病室に入ってきた。いつも診断書でお世話になっている桐山先生だ。

 実はこの病院、家の近所と言う事もあって昔からお世話になっている。

 その縁からなのか、今回は院長先生が主治医になってくれたんだ。


「どうかね、泉水(いずみ)君。気分が悪いという事は?」

「身体が──首から下が動かないです」

「ふむ。CTの画像からは問題は見つからなかったが、やっぱりか……」


 脈拍を測り終えた先生は、そう言いながら腕を布団の中に戻してくれた。


「僕はどうなって…… ?」

「体をひどく捻ったのと、両足が何か所か骨折しているくらいかな」


 僕の身体は電車にぶつかって、あらぬ方向に撥ね飛ばされそうになる寸前に駅員の手でホームに引き戻されたそうだ。

 あと一瞬でも引き戻されるのが遅ければ、僕の身体は(けんえつ)になっていたらしい。


 生身の人間が減速してない電車に喧嘩を売ればどうなるか。想像するまでもないよね。


「そんなあ……」


 ふいにフェイリアが見せてくれた映像を思い出した。

 そして、はっきり言っていたじゃないか。


 ──冥府の神でもあなたの蘇生は無理でしょうね


 つまりは、本来ならそういう運命が待っていたという事だろう。

 だとしたら、なんで僕は生きている?

 運命に干渉して、死ななくて済んだ未来を用意してくれた…… いや、今の状況を考えたら死んでいた方がましかも。


「まあまあ、そう気を落とさなくても。あくまで可能性だからね? 午後から検査をするから、考えるのは結果を見てからで良いだろう」


 先生、慰めになってないですよ。

 脊椎にダメージって、最悪の場合は残りの人生は寝たきりになりかねない。

 そうなると、僕はトイレどころか… 下品すら出来なくなってしまうわけで。

 そういう事でしょ?


「あくまでも、最悪の場合だからね? 僅かだが感覚はあるからそっちの心配はしなくても済むと思うけどねぇ。菱見君に手伝ってもらうのも手だぞぉ?」


 そう言って、彼はにやりと笑った。

 骨折したのは両足だけだ。身体が動かないのは、電車との衝突のショックで身体がびっくりしているだけ…… らしい。


 だから、時間が経てば身体を動かす事が出来るらしいけど……

冬夜くんは無事に蘇った(?)らしいです。

そして、彼は無事に退院出来るのでしょうか……


PCのwindows(10→11)更新に成功してからそろそろ1ヶ月が経ちました。

このPCはXp搭載機(それも震災前のモデル)なのに、まともに動いているってすごい?

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