人より生まれし神
番外編(登場人物のまとめ的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、裏設定とかネタバレがあるかも。
みなさまよろしく。
絶望にまみれた妾たちは、子供たちに対して出来る事は何もないように思えたんだ。
悲観した一部の神々の中には、世界のどこかに引き籠ってしまった者もいる。
だけど、妾たちは子供たちには出来る事は何でもした。
あの日、創造神様は…… 仰られたのだ。
──儂はお前たちに与える事はせぬ。だが得た事を咎める事もせぬ、と。
それは自らの努力で感情を取り戻す事が出来る可能性があるということだ。
そこに一筋の光明を見出した。あの子供たちに、妾たちに希望が、ある。
だから妾たちは為すべきことをする。
そして、今。
『よかったねぇ、シャウス』
『うん、うん…… ありがとう、ハーリア』
フェイリアが暴れたのも、蓋を開けてしまえばそういう事なのだ。
魂魄のバージョンアップ──かなりシビアな条件をクリアーしたお陰で、娘はただの装置から感情を持つ存在へと進化を遂げたんだからね。
しかし、運命と言うものは皮肉なもの。
進化の引き金を引いたのは、妾たちではなかったという。
娘が進化するきっかけを与えたのは、魂魄と化した一人の人間だという。
『ふっ、人間も侮れないねぇ』
ようやく分かってきた。
色々な経験を詰んで、無数の条件を満たせば進化を果たす事が出来る。
そのための行動を──神の本分を全うする限りは──創造神様もお怒りになる事はあるまい。むしろ祝福していただけるかも知れない……
『シャウス、いったい何があったのさね』
『おや、リーマも来たのかい?』
妾はここ──ハーリアの神殿で娘たちに座禅をさせていると、そこには別の女神がやって来た。リーマにまで助勢を求めるとは、今回ばかりは軍艦マーチも本気なのだろう。
なにしろ彼女──リーマは、血と殺戮を好む戦いの女神なのだから。
『裏山の果樹園でザクロの良いのが手に入ってね。土産にと思ってカイラス山まで遊びに行ったんだけどねぇ』
『ザクロねえ。子宝に恵まれたハーリアに相応しい果物だこと』
赤い皮に覆われたザクロの実の中には、実にたくさんの種をつける。
それゆえに、子孫繁栄の象徴とされている果物だ。
1000人もの子を持つハーリアには、これ以上に相応しいものはないだろう。
『話にはまだまだ続きがあるのよ。あのパンチパーマ野郎がハーリアの神殿に忍び込もうとしているのを見つけてさぁ。当然、ブチ回しておいたけど』
事の発端は、リーマがハーリアの神殿に忍び込もうとした男。
それは、ただの人間ではない。気が遠くなるような修行の末に神格をゲットした元・人間…… だ。
彼の名はキヤムニと言う。
『性懲りもなく、あの男は! またハーリアの子供に手を出すつもりかぁ』
『ふ、ふふふ… そう、あの男、また私の神殿に。今度こそ滅ぼさなくちゃねぇ……』
キヤムニは、しばらく前に起きた、とある事件の首謀者だ。
神々の時間感覚での事なので、しばらくと言っても神代の御代をわずかに過ぎた時期になるだろうか。
少なくとも西暦と言う時代区分が始まる前の出来事なのは間違いないのだが……
このキヤムニという男神はハーリアが夫神の神殿を訪ねて、留守にしていた隙を狙って彼女の神殿に忍び込むと、ひとりの子供を誘拐したのだ。
神界で最も多くの子供に囲まれ、神界でも指折りの子煩悩で知られる彼女の子供を、だ。
それを知ったハーリアが世界中に捜索隊を派遣したのは言うまでもない。
事件を知ったシャウスも、捜索を手伝ったのは当然のこと。。
あの大戦以来の親友が困っていることをを知ったシャウスは、母親が使っているのと同じような赤い牛に牽かれた車に乗り、世界中を飛び回った。
だが、この誘拐事件はキヤムニが知らないうちに、あっさり解決している。
誘拐された子供の事が、ある藩王家の王子の耳に入ったのだ。
王太子になるべく育てられた彼にとって、たとえ神であろうとキヤムニのしでかした愚劣な行為を善しとする筈がない。キヤムニの弟子たちに人の道はかくあるべきかと説き、無事に子供を取返す事に成功していたのだ。
『攫われたのはこの子だろう?』
『ああ…… シャウス…… ありがとう、本当にありがとう……』
かくして子供は王子の手からシャウスの手に渡り、今に至る。
そう、あの時に妾たちはカイラス山の麓──捜索の拠点にしていた──寺院に降臨していたその場所に。
王子が妾たちの下を辞してから半日ほどが過ぎてから。
キヤムニがやってきたのだ。
ニタニタと下卑た笑みを浮かべながらながら……
蛇足ですが…… この時の王子様も、将来的には人間としての肉体を脱ぎ捨てて、神格をゲットする事になります。
その遺骨は宝石と化したとか、化さなかったりとか。




