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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
神様たちは大騒ぎ
22/62

女神たちはお茶会で

 蹴り飛ばされたちゃぶ台をラ-リィが戻して、台ふきできゅこきゅこ、と。

 サーリアは、その上に菓子鉢を置いて。


『フェイねえは何飲む? NTBでい~い?』

『そんな気分じゃないわ。普通の紅茶をちょうだい』


 NTBは、この宇宙の産物じゃないわよ。別の宇宙で暮らすええと……


『メサイア星雲人、だったっけ?』


 そうそう。あの宇宙は私の担当じゃないけど、いちおうご近所だから管理神として、それなりのお付き合いはあるのよ。

 でね、あの宇宙にいる文明種族は数えるほどしかいないんだって。

 管理は楽だって言うけれど、なんだか寂しいわね。


 でもなかなかに活発な種族で、見ていて飽きないんだとか。

 そこの管理神が紹介してくれた面白い飲み物というのがコレ。


『上級神を一発で酔い潰すお酒とは恐れ入ったわねぇ』

『あのあと2人とも潰れちゃったしぃ。あーし、大変だったんだかんね?』


 NTBは、とっても口あたりの良いお酒だけど、それはうわべだけの事で。

 呑んでからしばらく時間が経った頃に、いきなり酔いが回ってくる。一瞬前まではしらふだったのに、がっつーん! って、いきなり酔いが回るの。

 ナギ・タイム・ボム(タイム・ボムは時限爆弾の意)とはよく言ったものね。


『私も紅茶がいいわ。サーリア、お願いしていい?』

『はいはーい』


 待つほどもなくどすっ! と、置かれたティーカップには、少しだけ刺激的な香りのする紅茶が──なみなみと──表面張力の限界まで注がれている。

 加えて言えば、私のティーカップだけがやけに大きいけど。


『梅干しを漬ける用の壺をベースにしたん。あーしって、やっぱ天才かも』


 けっ! 芸妓天の二つ名は伊達じゃないって事ね。

 悔しいけど工芸品の完成度どころか、淹れ方まで完璧よ。


『お茶請けには、こんなの用意しましたけどぉ?』


 にしししとばかりに、ラーリィが取り出したのは……


『おやきとは… 違うみたいね』

『四季島のあんぱんを、圧し潰しながらフライパンで焼いてみましたぁ♪』

『ふぅん? これはまた……』


 口の中に入れると、さくりという歯触りが心地よい。続いてもっちりとした感触が続くと、最後に丁寧に作り上げられた餡の風味をこれでもかとばかりに引き立てている。

 これはいいものよ。


『……って、サーリア?』


 私の冬夜くんに何をしているのかしらぁ?

 指でつんつくするのは良いけど、それ以上やったら怒るわよ?


『姉様が抱きしめてる彼…… トーヤ君だっけ?』『……あげないからねっ!』

『この子ってばぁ、さっきからぴくりとも動いてないって感じ?』


 えっ?


 ああ、そう言えば彼を取られないように、抱きしめていたんだったっけ。

 だってぇ、彼ったら可愛いし、いい匂いがするし、抱き心地は最高だし。

 えへへ……って、サーリア。何をしてるのよっ!


 サーリアは、冬夜くんのズボンのベルトをゆるめて……


『うんうん、元気な男の子だねぇ』『えっ? サーリア。私も見たぁい』

『あなたたち…… いい加減になさい!』


 きゃあきゃあ言いながら、盛り上がっている妹たちを蹴り飛ばしてしまった私は悪くない。ええ、ええ、そうですとも。

 冬夜くんは私のものだと言ったでしょう?


『おねえ。あーし、コレ欲しい!』『やだ!!!』


 ……こんのメスガキ! いくら妹でも、彼は譲れないって言ったでしょ。

 美貌と位階は私よりも遥かに劣るとはいえ、私よりも信者の数が多いんって自慢していたんだから、オトコなんかより取り見取りでしょうが!


『それとこれとは話は別! 美少年は別腹じゃーん?』

『だーめーでーす!』


 まったくもう、油断も隙もあったものではないわね。

 ふたりとも、あとでお仕置きですからねっ。

 だってそうでしょう? ……私だって、見た事が無いのに。


『じゃあ、せめてあーしからの加護を…… えいっ!』


 だから、なんでズボンの上から男の子をポンポンしてるのよ。

殿方の面子はズボンの中でぱんつにくるまって……

さいきんちょっと腐りかけなワ・タ・シ?

いやいや、私はノーマルだ。ノーマルなんだってばぁ……

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