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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
神様たちは大騒ぎ
16/19

女神様のお気に入り?

 冬夜くんを始めてみた時に。

 彼の事をひと目で気に入っちゃいましたとも!

 それに彼は何と言っても可愛いし、なんとも甘くて心がやわらぐような不思議な匂いがするんだもの。


『うふふ……』


 今まで不幸だけが友達だった彼の事を、これからは私の手で、でろでろになるまで甘やかしてあげたい。

 私は心の中で、そう決めたの。


 神がひとりの人間に構い過ぎると、色々と問題が出ると言われているけど……

 太古の人類ならまだしも最近の人類なら大丈夫だと思うの。

 そう簡単に、因果律に思いっきり影響を与えるような超人は、生まれない。


 いえね、太古の人類って、今の人間とは全然違うのだから。

 創造神様のおっしゃる事には、彼らはプロトタイプ。それまでに創造した種をとは違うものを… というお考えのようね。

 それで上級神の私でさえ気が遠くなる程の時間をかけて。

 延々とに試行錯誤を繰り返したみたい。


 たしかにこの宇宙を作って最初に創造なさった生命体は、宇宙の法則が定まらない時代のものだったので、ちょっとアレで。

 次のは… 私が管理しているこの──太陽系よりも大きな鉱物生命体。

 3番目はイカタコを進化させた種族だったし。


 4番目が…… あれは惜しかったみたい。

 物質創造の秘密を探り当てて、生物種としての最終段階ににまで進化を遂げたというのにねぇ。今はどこで何をしている事やら……


 そして、試行錯誤の末に創造したのが太陽系人類(テラナー)の原種、ネフィリム。

 恐竜並みに大きな身体と、とっても低い繁殖率。そのあたりを解決したの種を、第5番惑星──今は粉々になった惑星のカケラ──の住人たち。

 その後、内側の軌道にある4番惑星を経て3番惑星で暮らしているの種族が、完成品というところ。


 冬夜くんは、その種族の一員で、とっても…… その……

 何と言ったら良いかしら。

 彼が自分の死を納得していないようだったから、生命を失った瞬間を見せてあげたら、ずいぶんとショックを感じていたようだったけど。


 映像が途切れてからも、しばらくは立ち上がる事が出来ないでいたの。

 彼の魂魄に、これといったダメージは無いから、単純に意思の問題、かも。

 立ち上がりかけて、途中でふらついた彼の身体を抱きとめた時に……


 ──あ……


 私の鼻孔に彼の匂いが流れ込んできた瞬間、時が止まった。

 息が、止まる……


 彼を輪廻の輪──アカシックレコードに吸収させたくない。

 私のものにして、ずっと一緒に暮らして……

 そう。


 ずっとずっと、ずーっと。

 大宇宙が最後の刻を迎える、その瞬間になってもなお。

 そしてそして、その先の世界でも。

 そのまた先の世界でも。


 おかしいでしょう?


 でも、それが私の──偽らざる本心。

 神にとってふさわしくない──どろどろとした欲望、独占欲。

 彼をアカシックレコードに吸収させるなんて、駄目だ。

 大宇宙にとっての損失、だ。


「冬夜、くん……」


 彼の匂いを感じた私は、全身に電流が駆け巡ったかのような衝撃に襲われた。

 だから幽冥(かくりよ)を離れようとした彼の背中を、必死になって抱きしめて。

 思いのたけをぶつけてみた。


「冬夜、くん……


 大宇宙の中心にほど近いこの空間では、物質は存在する事すら許されない。

 全ての物質は情報とエネルギーに還元されて、長い時間をかけてアカシックレコードに──この宇宙の記憶として──吸収される。

 アカシックレコードと『外の空間』の狭間にあるこの空間──幽冥(かくりよ)──は物質は事象の地平線そのもの。


 だからここで言う匂いと言うのは、花の香りとかそういう類のものではない。

 物質界とは隔絶された幽冥(かくりよ)という世界に、物質的な感覚は存在しないのだから。

そう言えば、フェイリア様って仕事一筋に生きてきた干物女神なのです。

ある種の拗らせはあったかも?

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