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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
神様たちは大騒ぎ
13/20

サヨナラだけが人生さ

 話を聞いていたフェイリアは、僕の話を聞いているうちに、だんだん顔色が青ざめてきた。


『え、え、え…… !?』


 ふっ、いまさらドン引きかよ。

 演技にしても下手過ぎないか?

 邪神なんだから高笑いのひとつもして見せろよ。

 さあ笑えよ。笑えって言ってるだろ!


『……そん… な……』

「じゃあ、僕はそろそろ行かなくちゃ。閻魔様に事情を説明しなきゃならないし、遅れたら心証が悪くなるばっかりだ」


 いかなる理由があろうとも、自殺は──親より早く死ぬ事は、罪だ。

 だから僕と言う親不孝者は、天国には行けないかも知れない。

 でも、あそこまで追い詰められた僕に、他の選択肢はなかったんだ。

 そこの所だけは、はっきりさせておきたいからね。


「……」


 僕は無言で立ち上がると、フェイリアに背を向けた。


『待って、冬夜くん!』


 この部屋を出たら、幽冥(かくりよ)から離れる事は出来ると思う。

 どうやったら、輪廻の輪に戻れるのかは… 何となく分かるんだ。

 それは僕たちに刻み込まれた本能みたいなものらしいから。

 この部屋から、いや、神殿から出たら。

 それだけでオッケーの筈だ。


「じゃあ、さようなら」


 僕はちゃぶ台の向こうに座っているフェイリアに声をかけた。

 思えば、サヨナラだけが人生だったなぁ。

 まあいいや、どうだって。

 さあ、最後の旅に出掛けよう。


『……待って、冬夜くん! 私の話も聞いてよぉ』


 フェイリアはまだ何か言ってる。

 でも、もういいだろ。僕ひとりが、いなくなったって問題ないよ。

 他にも人間(オモチャ)はいっぱいいるだろう?

 僕ひとりに構わなくたって、いいじゃないか。


 僕は、目の前のふすまに歩いていく。

 ここを開けたら──神殿の外に出る。

 あとは輪廻の輪に戻るだけ。

 そこで、ふと、僕は思った。


 僕は、成仏する事が出来るんだろうか。


 ……まあいいや、どうだって。


 とにかく、目の前の神様とはサヨナラしよう。

 あと数歩も歩けば、それでおしまいだ。

 僕がふすまを開けようと、腕に力を入れようとしたら……


 がしゃーん!


 ふっ、イライラが昂じてちゃぶ台に八つ当たりかよ。

 神様と言っても、このあたりは人間と同じなんだな。

 思い通りにならなかったら、何かに八つ当たりか。

 やれやれ、怖いなぁ。ホント、怖いよ。


 さぁて、捕まったら何をされるか分からないし。さっさと逃げ出そうかね。


 魔法とかが飛んできたら、どうなるか分からないもんね。

 神様の使う魔法だから一撃で消滅するかもしれないけど、嬲り殺しにでもされたら、それこそ嫌だ。

 さっきの八つ当たりの様子からすれば、そのくらいは……


「おぶうぅっ!?」


 僕は背中をどやしつけられるような衝撃を受けて、思わずよろめいてしまった。

 ふと身体を見ると、フェイリアの白い腕が身体に巻き付いている。

 身体の中からミシミシって、なんか聞こえちゃいけない音がしてるんだけど。

 そして、背後からフェイリアの声がした。


『行かないで、冬夜くん。私の話を聞いてぇええ……』


 何を今さら──

 そう言おうと振り返った僕が見たものは……


 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったフェイリアの顔だった。

チート系のスキルの持ち主は異世界もののジャンルですかね。

異世界転移とか召喚ものとかの主人公って、ほとんどが超人的なステータスの持ち主かも。

普通の人とは比べ物にならないくらいの体力とかの持ち主に、思いっきりハグされたら……

どうする? どうなる?

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