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百のスミレと千のユリ  作者: 水瀬 悠希
終わりの始まり
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小さな世界の片隅で

 僕…… 泉水 冬夜(いずみ とうや)は、高校に進学する事が出来ましたぁ。

 ばんざーい!


 えええええ? いまどき高校くらい誰でも入れるだろうって?

 健康にも自信があるし、学力も。それなりには自信はあったんだけどさ。

 入院が多かったから内申点には、まったく自信が無かったんだ。


 でも、決して病弱とかそういうのじゃないからね? 薄幸の美少年じゃなくて、単に災難に巻き込まれてばかりだからってだけだからねっ!

 でさ、でさ、この高校に入れるって事は、第2帝大を目指すのも夢じゃない。

 そんな県内でも指折りの──偏差値トップクラスの難関校なんだよ、ここは。

 時代が時代なら、親戚を招いて宴会だ! って学校なんだよ?


 ────はいはい、嬉しいのは分かったから、さっさと話を進めたまへ


 ん? なんだ? 誰か何か言った?

 聞こえない…… だって? まあいいか。時々あるんだよね、こんな事。

 ええと、どこまだ話したっけ…… ああ、そうだった。


 高校の合格証書を受け取って、これだけ舞い上がっているのには訳があるんだ。

 実はね、僕のいちばん身近な友達は──不幸・不運というやつだ。

 小さな時から、どこをどうしたら? ってくらいに災難に遭い続けている。

 それは病気や怪我だったり、時として理不尽な立場に追い込まれたりと様々だ。


 そうだよ。何かにつけ災難に巻き込まれるんだよ、僕はね。

 だから、合格証書を手にするまでは… そりゃネットで発表は見たし、実際に高校の掲示板も見に行ったさ。

 でもね、僕には他の人が持っていない友達… イマジナリー? ちがぁう!

 そいつの名前は──『不幸』というんだ。


 出来る事なら死ぬまで──いや、死んだ後も付き合いは遠慮したいんだけど。

 だってさ、小さい時から、つまらない事でケガしたり病気になったりするんだ。

 そうすると、病院に行くんだけど──それが半端ない回数なもんだから──いまや近所の爺ちゃん婆ちゃん以上の常連さんだ。


 なんだかんだで院長先生や看護婦さんに気に入られちゃってさ……

 今や家族同然のお付き合いをしちゃっている。

 看護婦さんに身も心も癒されたい? 何を言ってるんだ。

 あああああああああ…… 点滴こわい、包帯がぁあああ!


 はあはあぜえぜえ…… ごめん、ちょっと取り乱しちゃった。

 とにかく、僕の日寿生活は災難と隣り合わせ… ってこと。

 こんな僕を支えてくれる彼女…… いや、こっちは『いた』と言おうか。

 うん、あえて言おう。僕はフリーだと!


 ……ぐっすし。


 ……ああ、そうだ。

 ここいらで僕が住んでいるジントア市の事を話しておこうか。

 ジントア市は神代の昔から交通の要衝とされてきた古ぼ、いや… 歴史のある土地なんだ。はるか九州をはじめ、西国からの品々は、陸路回路を問わず必ずここを通って西の都に運ばれる。

 その逆も然りってね。


 そういう歴史があるからだろうか。地図を見ると県の姿はとっくりのような形をしているんだ。日本列島の物流をせき止めているようにも見えなくはないね。


 で、僕が暮らすジントア市は、とっくりの底の部分にあるおしゃれな港町。

 この二つ名は自称なんかじゃない。江戸で発行している『ざぁらん』という旅行誌にも載っているんだからね。


 で、その僕が何をしているかというと、だ……

 医務室のベッドで横になりながら、救急車が来るのを待っていたりする。

 そろそろ来るかな? と思ってはいたんだけど、ホントに来たよ。

 友達の抱擁…… ってやつ。


 実はさっきまで体育の授業でサッカーをやっていたんだけど、そこでね。

 ゴール前にいた僕の前にタイミングよくボールが飛んできたんだ。

 チャンスとばかりに、上半身でボールをトラップしたまでは良かったんだ。

 ボールが足元に落ちたらシュート! というタイミングで……


「うぉらああっ!」


 どがあっ!


「げふうぅぅ!?」


 ……腹を思い切り蹴られた。不安定な体勢でスピードと体重の乗った回し蹴りを喰らった僕が、まともに立っていられるわけもなく、地面に倒れ込んでしまった。

 授業を見学していた女子が駆け寄ってきて…… 蹴ったやつを囲んで……


「かたおかくーん、大丈夫ぅ?」とか、「ケガしなかったぁ?」

「泉水君、彼の足を引っ張らないでねっ!」


 ……だとさ。まったくお優しいこって。

決して冬夜くんがブサイクだという訳ではないんです。

色白小柄で童顔で、お肌がつるつるなだけなんです……

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