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サッカーを辞めないのはカズ、三浦カズ。

作者: 辛口カレー

三浦和良(カズ)といえば、日本サッカー界のレジェンドである。

現在、御歳57歳。


なんと未だに現役のプロサッカー選手を続けている。

現在は横浜FCに所属しつつ、ポルトガルの二部リーグへレンタル移籍しているらしい。


ちょっと理解が追いつかない。


カズは僕らの世代にとっての憧れであり、紛れもないスーパースターだった。

点取り屋のフォワードとしては小柄であったが、小刻みなステップを繰り返す『またぎフェイント』で巧みに相手を交わし、ゴールを決める姿は観客を魅了した。


Jリーグや日本代表での活躍は誰もが知るところだが、やがて順風満帆だった彼をドーハの悲劇が襲う。


1993年。

翌年のサッカーワールドカップの出場権を賭けたイラクとの国際試合で、2-1で日本がイラクをリードした後半ロスタイム。


ラストのワンプレイさえ凌げば、日本初のワールドカップ本戦出場が決まっていたはずであった。


ところが。


イラクのショートコーナーからの切り返しにカズがマークを外され、ゴール前にセンタリングを上げられてしまう。

そしてそこからドンピシャのヘディング。

最後の最後でイラクに同点ゴールを決められて、日本のワールドカップ本戦出場は夢と消えてしまった。


これについては、僕からいろいろと喝!を言いたい事がある。


あまり指摘される事は無いが、そもそも最後のワンプレイを敵に与えてしまったのは、ラモスの軽率な浮きパスがカットされた事に起因する。

そこは無理せずキープする場面だろ。

喝!


そしてショートコーナーからの切り返しにあっさりマークを交わされたカズ。最後は必死に足を伸ばすが、僅かに届かずセンタリングを許してしまった。

喝!


そして最後はゴールキーパーの松永。

位置どりがニアに寄りすぎており、かつ目測を誤っている。

ゴールの瞬間、ジャンプすらせずにボールを見送っているところを見ると、彼は最後のヘディングシュートが枠から外れたと判断した可能性が高い。


点を取られるにしても、キーパーなら最後までジャンプして食らいつけよ。反応できずにボールを見送るだけなんて、一番カッコ悪い。

喝! 喝! 喝! だ。


そして1998年。

日本は前回のリベンジとばかりにワールドカップ初出場を決めるも、本戦直前でカズは日本代表から外されてしまう。


「外れるのは市川、カズ…三浦カズ、北澤…」


日本サッカー界のレジェンドであり、予選でも活躍していた彼をワールドカップの本戦で日本代表から外した岡田監督のこの発表は、日本中に衝撃が走った。


当時は僕も納得がいかなかった。

日本をワールドカップに出場できるまでに成長させた最大の功労者は、明らかにカズだったからだ。


誰よりも早く世界を見据え、10代の頃からサッカーの本場ブラジルのクラブでプレイして経験を積み、日本に戻ってからは文字通り日本のサッカー界を牽引してきた彼が、ようやくその努力が報われようとした正にその時、突然代表から外されたのだ。


この時のカズの心中は、察するに余りある。


これをディズニーランドで例えると(何でだよ)、人気のチュロスを買おうとしてクソ長い行列に長時間並び、ようやく自分の番が来たと思ったら前の人で売り切れ、みたいな感じであろうか。(実話)


……というのはもちろん冗談で、決してそんなに軽い話ではない。


もしもこの時、彼がワールドカップ本戦のピッチに立てていたとしたら、彼はそれに満足して今ほどには現役続行に拘らなかったであろうか。

それとも、どのようなキャリアを積もうとも、やはり彼は現役続行に強く拘り続けたであろうか。


それは本人にしか、あるいは本人でさえも分からない問題かも知れない。

だが、57歳を超えて未だにプロサッカー選手を続けているというのは、もはや凄いを通り越して苦笑するしかない。


プロレスで言えば、晩年のジャイアント馬場もそんな感じだった。


ジャイアント馬場の全盛期の16文キックは迫力があり、さらに若い頃には32文キック(ま、ただのドロップキックなんだけど)も繰り出して観客を大いに沸かせたものだが、晩年の16文キックは見るからにヘロヘロで、こんなものに当たったところで痛くも痒くも無いはずなのに、当たった相手はワザとらしくもんどり打ってマットに倒れ込み、それを観客が笑って見ているような有様であった。

彼の晩年の試合はプロレスではなく、仕組まれたプロレスコントに成り下がっていた。


これはカズも同様であり、観客の目から見れば、こんなジジイのドリブルなんてディフェンダーがちょっと体をぶつければすぐにでも体勢を崩して楽々とボールを奪えるはずなのに、杖をついたフラフラの危なっかしいジジイが歩道を歩く様子を見守るがごとく、レジェンドに怪我はさせられないという生暖かい忖度が働いて、ジャイアント馬場のプロレスほどではないにせよ、そこには仕組まれたサッカーコントであるかのような独特の()()を見出すことが出来るのであった。


僕が疑問に思うのは、なぜこんな状態なのに、彼はまだプロサッカー選手を続けたがるのかという点である。

20代の選手たちに混じって、還暦に近いジジイがサッカーをしているなんて、とても正気の沙汰とは思えない。


自分がそこに居ることが場違いだと、どうして気付けないのか。

仮に気付いているとしたら、なぜ身を引こうとしないのか。


もしかすると、彼は本当に空気が読めない(あるいは頑なに空気を読まない)、発達障害にも似たある種の精神疾患を患った状態にあるのではないか。


誰だってこんな状況なら、気まずさを感じるのが当たり前の感覚というものだ。

「純粋にサッカーが好きだから」とカズは言うかも知れないが、純粋さも度が過ぎれば一種の狂気であろう。


もうこれ以上サッカー選手を続けるのはやめてくれ、カズ。

サッカーをコントにしてくれるな。


サッカー界のレジェンドである貴方が、老い恥をさらして失笑されている姿を見るのは、痛ましいと同時に残念なことである。

読んで頂き、ありがとうございました。

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