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第11話 再会

 声がした方に振り向くと、そこには見覚えのある美少女が立っていた。


 茶髪のポニ-テール、健康的にスッと伸びた脚に、短パン姿がよく似合う。

1年とちょっと前にアイナ村から旅立った、ティアだ。間違いない、忘れもしない。


 セリアの町に行くと言っていたので、いつか会えると期待していたが、意外と早かった。

それほど大きな町ではないし、同じ冒険者をしていると、自然と同じ場所に集まるのだろう。


「ユウヤ……、よね?」

「ああ、ティア。久しぶり」

「きゃー、ユウヤー!!」


 ティアは叫びながら駆けだすと、俺にガバっと抱きついてきた。


「ちょっ…… ティア?」

「ごめんなさい、懐かしかったものだからから、つい。元気だった?」

「うん、まあ、なんとかね」

「今日は、何しにここへ?」


 自分も冒険者になるために、ここへ引っ越してきたのだと告げると、ティアは「へー、そうなんだ」と笑いながら、ピョンピョンと飛び跳ねた。

 村を出た時よりも、更に元気いっぱいになった感じだ。


「少し合わないうちに、背が伸びたね、ユウヤ」

「それを言うなら、ティアだって」


 そう、ティアは少し背が伸びたようだ。

 背だけでなく、全体的に女っぽくなった。

 さっき抱き着かれた際に当たった胸の感触が、まだ残っている。

 化粧もしているのかな、目元の青や唇の紅が、幼さと大人っぽさの両方を混在させている。


 それに、村にいたころよりも、少し積極的になってないか?


 懐かしさに浸りながら二人で立ち話をしていると、

「よう、ティア。今日も朝から元気だな」

 と、男の声がした。


「あ、ジレットさん! おはようございます」

「おはようさん。そちらのお連れさんは?」

「同じ村出身の、ユウヤよ」


 ティアからジレットと呼ばれた男は、上半身に軽装の鎧を付けて2本の剣を引っさげ、どう見ても冒険者風だ。

 ティアの知り合いなら、挨拶くらいはしておこうか。


「はじめまして、ユウヤ・バイエル・サオトメです」

「どうもです。ティア、もしかしてこちらが、いつもお前が話してた若者か?」

「そうよ。村でよく一緒に遊んだのよ。ユウヤ、こちら、私がパーティでお世話になっている、ジレットさん」


 そうか、ティアは、この人のパーティで冒険者をしているのか。

 年格好は、地球での俺とトントンくらいかな。


 俺が二人をまじまじと見ていると、ジレットが口を開く。

「ティア、今日は少し足を延ばして、北の森の真ん中辺りまでいくぞ。多分2、3日は帰ってこれないだろうよ」

「今度のクエストは、何ですか?」

「魔物調査だ。最近森で魔物の活動が活発化しているようでな。どんな奴らがいるのか調べるんだ。余裕があったら、ダンジョンにも入るぞ」

「ダンジョンですか。久しぶりですね」

「だから、少々人手が足りない。今イワンが、追加の仲間を探している」


 はああ、流石冒険者パーティ、難易度が高そうな依頼だな。


「ねえ、ジレット。ユウヤにも同行してもらったらどうかしら。遠出するなら、荷物の運搬とかも、もう一人くらいいた方が良いかもだし」


 は? 

 おいおい、ティア、いきなり何を言い出すんだ。

 俺なんかが入っても、多分戦力にならないってば。


「それはそうだが。ユウヤ君、君の方はどうだ?」

「あ、いや俺はまだ駆け出しで、お役に立てるかどうか。まだレベル8ですし」

「魔法は使えるのか?」

「はい、火魔法を少しだけなら。あとは、火や氷の魔道具を相手にぶつけることくらいで」

「そうか、ならティアと組んで、荷物運びと後方支援くらいはできそうだな。どうだ?」


 あら、断ってくるんじゃないのか。

 大丈夫かな、俺で。


「ちなみに、クエストレベルはどのくらいで?」

「Dだ。油断すると死ぬかも知れないレベルだが、その分稼ぎもいいし、経験も積めるぞ?」


 おいおい、怖いことをサラッと言ってくれるなよ。

 しかし、ティアは全然怖がってないようだ。昔から俺よりは強かったが、もっと強くなったってことか?


 いきなりの展開で正直足が竦むが、ここで断ってティアにがっかりされるのも嫌だな。

 腹を決めるか。


「分かりました。よろしくお願いします」


 その後、ジレットのパーティが集合して、目的地に向かって出発した。


 先頭はリーダーのジレット、それに続くのが剣士のイワンに、弓使いのルネ、その後ろで、俺とティアが大きな荷車を運んでいる。

 メンバーみんなの荷物と食料、狩った魔物やアイテムとかを運ぶ役目だ。

 更に後ろに、回復役のバーナントと、このクエストのために臨時で加入した槍使いのアムドが続く。

 総勢7名だ。


 この国、シュバルツ王国の王都ファルバートは、王国のほぼ中心に位置する。

 その西側には広大な平原や森が広がり、海へと続く。


 セリアの町は、王都からやや離れた北西に位置する。

 周りにはアイナ村を含めて他にもいくつか町や村が点在し、その地域一帯はソト公爵家が治める領地となっている。


 セリアの北側には大きな森が茂り、さらに北へいくと標高の高い山々が連なる。

 ジレット一行の今回の目的は、その森の調査だ。


 一行の中で、俺は荷車を前側から引っ張り、ティアがそれを後ろから押している。

歩きながら歩きながら少し話せるかなと思ったが、前後に離れてしかも結構な重労働なので、そんな余裕もない。


 森に入ってから何回か魔物に出会ったが、前衛の活躍でほぼ完結した。

 魔物が落としたアイテムや使えそうな死骸は、全部荷車に積み込む。


 しばらく進んで昼休憩になった。

 簡単な昼食が配られ、全員思い思いに腰を下ろす。

 俺はティアの隣に座り、ひと息ついた。


「大丈夫、ユウヤ? 急に誘ってゴメンね」

「いや、こっちこそありがとう。今日どうしようか、考えていたところだったから。でも、これ結構きついね。いつもやってるの?」

「ええ。最初はきつかったけど、もう慣れたし。結構いいレーニングにもなるのよ」


 俺はパンにかぶりつきながら、ティアに質問してみた。


「今まで、どうしてたの?」

「あ、えっとね。アイナ村からセリアに引っ越して、ギルドで冒険者登録してから、『どうしよう』って感じでウロウロしてたんだ。そしたらジレットさんに『良かったらうちのパーティにどうだ?』って声掛けてもらって」

「へー。じゃあ、それからずっと?」

「大体ね。依頼を受けないような時は、たまに別のパーティに誘ってもらったこともあったけど」

「そっか、良かったね。結構強くなれた?」

「少しだけね。でもまだまだだよ。周りはもっと強い人ばかりだし」


 なるほど、冒険者登録初日で、お誘いを受けたんだな。

 確かに、こんな娘が一人ウロウロしていたら、俺でも気になったことだろう。


「ところで、ユウヤは――」

 ティアが言いかけたところで、『よし、出発―!』の号令かかった。


 配置交代で、荷車は別のメンバーが運び、ティアは前衛、俺は最後尾を歩くことになった。

 森は中心部へ行くにつれて、木々がより鬱蒼と生い茂り、日光を見るのが疎らなっていった。


 しばらく進んでから、先頭のジレットの足が止まった。


「何かいるなあ」

 との呟きとともに、パーティ全体に緊張感が走る。

 先ほどまで魔物と出会った時とは、明らかに違うようだ。

 

 前方の茂みがガサガサと入れ、灰色の4本足の魔物が、ぞろぞろと現れた。


「ウルフか。いや、キラーウルフ……? イワンは右、アムドは左を固めろ。ティアは下がって遊撃。他は後方支援だ!」

 ジレットが即座に指示を出しながら剣を一本抜く。

 このあたり、かなり戦いなれているようだ。


『ぐるるるる…』魔物たちはジリジリと近づいてくる。


 しばしの睨み合いの後、突然に魔物の1匹が先頭のジレットに飛びかかる。


「ぬうん!!」ジレットが斜めに剣を一振りすると、魔物は血を吹き出しながら、脇へ吹っ飛ぶ。

 だが即座に立ち上がり、またジレットへ向かっていく。

 今度は頭上から魔物の頭へ剣を一撃、ジレットの足元にドドッと倒れ伏して、動かなくなった。


「気を付けろ。キラーウルフ、この辺では見かけない奴だ!」


 他の魔物も、一斉に飛び掛かってくる。


 ルネが瞬速で矢を放つと、1匹の魔物に命中する。

 ひるんだところを、アムドの槍が仕留める。


「ぐわ!」

 イワンが魔物の爪の一撃を受ける。

 すかさずバーナントが「トリート!」と叫んで、回復魔法を仕掛ける。


 俺はというと、どうしてよいか分からず、右や左をキョロキョロしていた。

 すると右の茂みから1匹が、ティアの方に近づいて行くのが見えた。


 「ティア、右!」と叫ぶと彼女も気づいたようだが、体を向ける前に魔物が突っ込んでくる。


 「フィガ!」

 と咄嗟に叫ぶと、魔物に向けた手のひらから炎が噴き出し、見事命中した。

 『ギャオオ!』と叫んでもんどりうつ魔物に、ティアが短剣で止めを刺した。


「ユウヤ、ありがと!!」

 いやいや、ティアのためなら。

 しかし、当たって良かった。


 前方に目を向けると、ジレットたちが残りの魔物と睨みあっている。俺は懐から雷玉を取り出すと、前方に向かって投げつけた。

 雷玉は魔物たちの足元で炸裂し、強烈な電撃を発する。


「ナイスだ!」


 魔物たちが怯んだのを見逃さず、ジレット、イワン、アムドが突撃し、首や頭に一撃を加えた。


 こうして――

 負傷者は出たものの大事はなく、俺たちは7匹の魔物に勝利することができた。


 ジレットが俺の方に歩いてきて、

「ありがとうユウヤ、ナイスサポートだ。他のみんなも良くやった」

 と労をねぎらう。


 戦利品を荷車に積み込みながら、このキラーウルフという魔物はどこから来たのだといったことが話題になった。

「稼ぎがよくなるのはいいが、死なない程度にして欲しいよな~」

と、皆で賑やかに笑いあいながら。


読み頂きありがとうございます。私自身ファンタジー大好きで、最近夜深し気味で、日中眠いです。

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