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瀬尾渚

 私は、小学生の頃までずっと嫌われ者だった。原因は自分でちゃんとわかっている。派手な格好に髪型、そして汚い言葉遣い。何度、先生に注意されたかわからない。でも、どんなに長い説教も全て無視した。私にとっての当たり前を壊されたくなかったから。

 私のママは高校生で私を産んだ。パパもまだ大学生だった。二人は大人になりきれないまま夫婦になった。でも二人は逃げなかった。現実と向き合い、自分達の責任と覚悟を果たすことを選んだ。こうして、二人は私の成長と共に徐々に大人になった。私を愛して見守ってくれる、立派な大人に。

 なのに私達、家族が派手なものを身に付ける度に冷ややかな目で未だに私達を見る大人がいる。格好だけで判断されたくない。派手なものを身に付けて何が悪い?何も知らない人に私の幸せを簡単に否定されたくない。その反抗からか言葉遣いが、いつの間にか悪くなった。そんな私にママとパパは、


「赤の他人が言うことなんて気にするな。周りに認めてもらおうなんてくだらないことしなくて良い。ただ近くで見守ってくれている人を大切に出来たらそれで充分だ。」


と言った。しかし、一度悪くなった口は、努力をしても良くならなかった。

 そんな私に、中学生になって初めて友達が出来た。そして、その三人は私にとって家族のように一番大切な人となった。

 一人目は瑠偉。彼は勉強が出来て、誰にでも優しいクラスの人気者。中学生の頃は先生の推薦で学級委員にもなっていた。友達に困ったことのなさそうな彼は、何故か太陽に執着している。ウザがられても中学の入学式の日からずっとくっついている。どうやら中学に入学する前の春休み、コンビニのレジでお金が足りずに困っていた所を偶然にも店にいた太陽が、


「これ落ちてたよ。」


と言って百円玉を渡したそうだ。その話を私は聞き飽きるほど聞いた。

 二人目は太陽。彼は私の初めての友達。いつも笑顔でいる。そして予測不能な行動をする人。良くも悪くも自分が気になったものや人にすぐ夢中になる。中学一年生の頃、席が近くになった時、


「かっこいいね!その服何処で買ったの?」


とキラキラした目で太陽が聞いて来た。大した用事もなく、私に話し掛けて来る人なんて今までいなかったためとても驚いた。私は面白い人だなと思った。その日から自然に私達は毎日、話すようになった。

 最後は寧音。私の大親友。彼女は女子で初めて私のことを怖がらなかった。初めて自己紹介をしてくれた時、照れ臭そうな顔をして、でも真っ直ぐな声を放つ彼女を本当に、


"可愛い!"


と思った。そして、寧音と話している内に太陽のことが好きなんだと割と早い段階で気が付いた。私は応援したいと思った。大好きな二人だから。太陽の優しい笑顔と寧音の幸せそうな笑顔が重なれば最強にお似合いだ。私は寧音と太陽の二人の時間が出来るように仕掛けた。鈍感な瑠偉を遠ざけるのは苦労したが、食べ物を奢ると言うと簡単に罠に引っ掛かってくれた。

 なのに、高校生になった途端に瑠偉が、


"太陽は恋をした。"


と言い出した。それでやっと気付いた。どうやら太陽も鈍感なようだ。朝早くから寧音の気持ちも何も知らず呑気に恋について聞いて来た二人に腹が立った。だから、


「誰が二人に教えるか!寧音、教室行くよ!」


と寧音を連れ出した。寧音と私は、普段使われていない教室に入った。そこで、寧音は初めて私の前で泣いた。


「辛いよ、苦しいよ、渚…。」


と声を荒げながら。私はただ抱きしめることしか出来なかった。応援すると決めたのに自分が情け無くて申し訳なくて、


"ごめんね。"


と心の中で何度も謝った。

 しかし寧音は暫くすると、嘘のように泣き止んで、


「ありがとう。」


と笑顔で言った。私が、


「大丈夫?無理して笑わなくて良いよ。もっとたよってよ。」


と言うと、


「大丈夫。告白して振られた訳ではないし。太陽を振り向かせるチャンスはまだあるから。」


と言った。私は、


「太陽のこと少し探ってみる。私はずっと寧音の味方だからね。」


と伝えた。寧音は、


「ありがとう。私も渚の一番の味方だよ。」


とこんな時でも思いやりを忘れない寧音の優しさと強さに驚いた。私は寧音のように強くなりたいと思った。そのためにも、もう弱音は吐かないと心の中で誓った。

 それから、昼休みになって太陽達のクラスに行った。少し乱してしまった四人の空気を感じ取り、気を遣って寧音が、


「朝はごめんね。」


と話しの切り出し方を悩んでいた私の代わりに謝ってくれた。それから四人で何事もなかったようにいつも通りの時間を過ごした。私はこの関係性が好きだ。誰かが困っていたら自然とフォローし合える四人の関係。

 だからいつの日か、太陽と寧音が付き合う未来を私がフォローする。


「お節介だ!」


って寧音に怒られたとしても気にしない。私が出来る最低限の手伝いをしたい。

 しかし、最終的な結末を決めるのは寧音と太陽だ。二人が出した答えを私が答え合わせをしてはいけない。二人の物語りの結末の答えは二人にしかわからない。私は私だけの物語りの主人公にならなければならない。だから二人の物語りに関しては脇役だ。

 なので、自分の大切な人と相手の大切な人の物語りを素直に認められる自分でいたい。太陽が私を褒めてくれたように。どんな未来も受け入れよう。

 でも、やっぱり、


"この物語りが寧音にとってハッピーエンドで終わりますように。"


と願ってしまう。欲張りだけど、皆んなが幸せになる最高のハッピーエンドが良いな。

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