目が3なだけ
私は、平々凡々な高校一年生。
趣味は漫画を読むこと。アニメを見ること。
いわゆるオタク。
そんなわたしは、最近、恋をしてしまったのである。
ひたすら恋のお相手のページを行ったりきたりするだけ。
「また、その漫画がっこーに持ってきてんの!?」
というような、
友達のまやちゃんに、毎日同じ台詞を言われるのにも慣れた。まやちゃんは私の恋のお相手がこの漫画の男キャラだと知っている唯一のオタク友達である。
「だって彼氏だし?肌身離さず一緒に居たいの!!」
私はそう言うとまやちゃんより上から目線になるため、立ち上がった。もちろん漫画を机に置いて、両手で机を叩いた。
それでも休み時間だから、誰も私を気にしない。
最近の時代はオタク=気持ち悪いが浸透していなくて
みんながみんな他人より自分なので、推しが居ても引かれることがない。
みんなみんな忙しくて、私が学校に漫画を持ち込んでることすらどうでも良いみたい。
まやちゃんもまやちゃんで私に引くことなく、最近はやたらと妄想を具現化しろと勧めてくる。
「その漫画ってさ、主人公としほの推しが一生ラブラブしてるとこしかないでしょ??しほって、それだけで満足なの?!絵が描けないなら描ける人に漫画描いてもらいなよ?しほ目線の新たな漫画を!」
私の好きな漫画の推しはとにかくカッコいい。まず、主人公の女の子に一目惚れされるんだけど、最初はすごくツンツンしていて、いろいろあって、両思いになって、
とにかくツンツンしているときとデレ始めた時のギャップがたまらない。
顔がかっこいいのに目が悪いからだいたい眼鏡をかけていて目がだいたい3になってる。それすらもカッコいい。
作者の手抜きでもカッコいい。
まやちゃんの思うことも分かるけど、私は妄想で充分。
充分だと思ってた。あの日までは!!!
オタクの充実していたライフに、高校生活始まって以来のビッグな事件が起きたのである。
隣の席に転校生が座った。転校生は目が悪いからという理由で前列の私と隣になった。
阿部優という名の転校生は、私の推しと同じくマル眼鏡である。性別男。
(自己紹介のとき、めちゃくちゃみちゃって気まづいんだが・・)
(だって教室入ってきたときから、丸眼鏡でしかも、目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が3!!)
阿部くんは3次元である。目が3な訳あるまいと、何度も阿部くんを見てしまう。
「意味わからないんですけど。そんなに、見てくるの」
チラ見をしていた阿部くんとふいに目が合ってしまい、
私の心臓は破裂した。小声でも阿部くんが明らかに不機嫌なことに、気づいてしまった。
何から何まで、あの漫画と同じ展開に、私は動揺を隠しきれない。フリーズしている私をじっと見つめる阿部くんは、手をグーパーして私の意識を確かめていた。
「山本さん、大丈夫??」
「だ、大丈夫。オールオッケー」
推しと話している錯覚に陥るが、私は大丈夫。
丸眼鏡、目が3、黒髪サラサラヘヤの高身長な転校生なんて、いつでもどこでも出てくるでしょう。
(眼鏡を外したら美形なんて、まぁ無いし。推しと同じ顔は無い無い)