第六話 真実と嘘
太陽がじわじわと顔を出してきて、部屋の窓から気持ちのいい朝日が差し込んでき、僕を深い眠りの中から現実へといざなってくる。
僕が少し寝ずらさを感じ寝返りをうとうとするが、何かにがっしりと掴まれて動くことができない。
だんだん、全身の感覚が目を覚ましてきて全身に何か柔らかいものが当たっていることに気付く。
目を開き何かを確認すると・・・・
「うわぁぁ!!」
「あ、みどるしゃま、おはようこしゃいます」
「おはようございますじゃねーよ。
何で元のサイズに戻ってるんだよ!は、な、せ!」
僕はそう言いながらアストレアを引き離そうとするもびくともしない。
「いーやーでーすー。まだ眠たいし、ミドル様とも離れたくありませーん!」
そんな言葉に少しドキッと感じながらも我を保つ。
そんな中、部屋のドアがノックされる。
「ミドル?起きたの?入るわよー」
そんな声と同時に部屋のドアが少しずつ開かれていく。
僕は慌ててアストレアに布団をかけ隠す。
「どうしたの?そんなに慌てて。朝ご飯持ってきたから食べなさい。」
そう言って、机の上に置かれる。
「お母さん、今日も後でちょっと散歩に行ってくる。」
「あら、ミドルも散歩にハマったの?今日はお父さんと用事があって忙しいから、
明日一緒に散歩に行きましょ!」
「うん!」
僕がそう返事をするとお母さんは来た時よりも少し上機嫌に鼻歌を歌って出て行った。
一つ息をつき、布団をめくるとそこには、僕の苦労も露知らず彼女は気持ちのよさそうに眠っていた。それを見て僕はまた一つ大きなため息を吐いた。
僕はアストレアのことを放っておき、朝ご飯を食べることにした。
今日はアップルパイだった。
一口、口に入れると、リンゴのゴロッと大きめな食感がしっかり残っていて、甘くほどよい酸味があって、パイ生地の香り高く濃厚な味わいと、りんごの甘酸っぱさが口の中で絡み合い、そして優しい味と変化していく。
食べるのに夢中になっていると、アストレアがいつの間にか目の前に座って、こっちをじっと見つめていた。
「一ついるか?」
「いいんですか?」
「うん、パートナーだってお腹は空くだろ?」
そう言って僕は残りのアップルパイをアストレアに差し出す。
彼女はそれを受け取り口に運ぶ。
「なんですか!?この食べ物は!!」
「おいしいだろ?母さん特製アップルパイだ!なかなか食べられないから、
味わって食べろ、よ、?」
僕がそう言い終わる前にアップルパイは無くなっていた。
僕はまたため息が出た。
朝ご飯を食べ終わり、僕は小さくなったアストレアと家を出た。
「ミドル様、これからどちらへ?」
「冒険ギルドに行こうと思う。」
「何をしに?ダンジョンは今閉鎖中ですよ?」
「ああ、ちょっとな。」
冒険ギルドへ到着すると、未だダンジョンの生まれ変わりの騒動は収まっておらずだくさんの人で溢れていた。
僕は受付に到着すると、小さな声で
「ダンジョン攻略について知っていることがある。」
というと、受付の人は驚いた顔をした後僕を奥の部屋へ連れて行った。
僕はアストレアを胸ポケットに隠した。
部屋に入るとそこにはゴートテイマーがいた。
「君かね、ダンジョン攻略について知っていることがあるというのは。
攻略したのは君なのか?」
「いいえ。僕は攻略した人を知っているだけです。」
「ほう。して、その攻略したものの名は?」
「ゴラギコ・サモンズです。」
「あのパートナーランクAのパートナーを持つ者か。」
「はい。」
「根拠は?」
そう、この擦り付けで一番重要なのは根拠だ。しかし、僕はあの時見ていたのだ。決定的となる根拠を。
「ダンジョンが揺れているとき、崩壊し生まれ変わる前にサモンズが『よっしゃー!』と叫びながら走って出ていくところを見ました。あの場面で喜べるのはダンジョン攻略者しかいないと思います。」
「なるほど。」
ゴートテイマーは少し考えると、
「ゴラギコ・サモンズを早急に探して連れてこい。」
と、付き人に指示をした。
「少年よ、名は?」
「エンニオ・ミドルです。
しかし、サモンズに伝えるときに僕の名前は出さないでもらえますか?」
「分かった。ミドルよ、情報提供感謝する。もう帰ってよいぞ。」
「はい。」
僕は自分の作戦がうまくいったことに喜びを感じながら、この部屋を後にし、今日はそのまま真っ直ぐ帰宅した。
ゆっくり書く予定の息抜き作品ですが、評価が高ければ投稿頻度を増やしていきたいと思います。
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