第三話 光と闇
ポタポタと一定の間隔で落ちてくる雫に顔を打たれ目が覚める。
「いててて、」
体をおこそうとすると全身に痛みが走る。
落ちていく僕をただ見つめるだけのサモンズたちの光景がフラッシュバックする。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
「そうだよな。俺なんかと何て組みたくないよな。」
僕はそう呟き、落ちてきた穴を見上げる。穴の先には光すら見えず、まるで今の僕を表しているかのようだった。
「ここ何階層なんだろう。こんなに高いところから落ちたんだし、いっそ死んだほう がマシだったのに。」
死にたいと思ってしまったことが呼び寄せたのか、そもそも死ぬ運命だったのか奥の方から大きな足音と共に何かが近づいてくる。
僕は痛む体を起き上がらせて、その音の方向とは逆にゆっくりとバックしながら様子を伺う。
だんだん音も近づいてきて、ほんのりとシルエットも見えてくるとそれが人ではないことは明確であった。そのシルエットがくっきりと見えるようになるまでには時間は要らなかった。
そして、お互いに相手が何者か分かるとそれぞれに声を上げる。
「うわああああああああああああ」
「グオオオォォォーーーーーーー」
僕は悲鳴を、化け物は咆哮を。
僕の足は死にたいと思っていたからなのか動かなかった、それとも最強の魔物「ミノタウロス」を目の前にして恐怖で動かなかったのか定かではないが、ピクリともしない。
そんなことは容赦なくミノタウロスは持っている大きな金属の棍棒のようなものを僕めがけて振り下ろしてくる。僕は何の抵抗もせず、その攻撃は僕の左腕を持っていった。
全身に激痛が走る。
そして、再びミノタウロスが棍棒を僕に振りかざしてくる。
その光景がゆっくりに見え、これまでのことが走馬灯のように見え始める。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
「君、悲しいことだが君は『飼育パートナーなし』らしい。」
そんな悲しいことが見え、僕はこのまま死んでもいいやと思い目をつぶり、歯を食いしばる。しかし、再び走馬灯が見える。
「「行ってらっしゃい」」
「気を付けていくのよ~」
お父さんとお母さんとの家族との思いでだった。そして、
「僕ね、ゴートテイマーになる!」
そう家族に宣言している、小さなころの僕だった。
僕は死にたくないと思った。強く思った。ゴートテイマーになると。家族とまた過ごしたいと。その心が僕を動かした。
僕は間一髪でその攻撃を躱した。
だが、パートナーもない僕にできることはほとんどない。
ミノタウロスは今度は棍棒をスイングしてきた。
今度こそ死を覚悟した。
せめてもの抵抗として、残った右手を棍棒に突き出す。
「グオオオォォォーーーーーーー」
死にたくない、僕にパートナーがいれば、契約できていればこんなことにはならなかったはずだ。僕は僕自身を恨んだ。
「クソぉぉぉぉぉぉーーーーーー」
すると、右手の方から白い光が輝き始め、そして視界を包んだ。
少しして目を開けると、そこにはミノタウロスの攻撃を指一本で止めるの女性が立っていた。
腰まで届きそうな長い白銀の髪が、ダンジョンの暗さと相まってより際立っている。色素が抜けたような白い肌、尖るような顎先と、襟から覗く細い首筋と胸元が危うい魅力を醸し出している。腰についている剣も不思議と様になっている。そんな女神のような彼女に見とれていると、
「ミドル様、あなたに盾突くこの汚らしい汚物を片付けてもよろしいですか?」
「・・・あ、はい。」
僕があっけにとられながら返事をすると、彼女はミノタウロスの棍棒を軽々と吹き飛ばし、指を鳴らした。その瞬間、ミノタウロスは粉々になってしまった。
「わたくしのパートナーに手を出すのは千年早いですよ」
そう彼女は言うと、僕の方に近寄ってきて僕に魔法をかける。
すると、僕の左腕はみるみる治っていき、体中の痛みも消えていった。
「・・・助けてくれてありがとう。」
「いえいえ、わたくしは当然のことをしたまでですよ。
自己紹介が遅れて申し訳ありません。わたくしはあなたとパートナー契約をした
パートナーランクSの女神、アストレアと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
僕はその光景にただ、見とれていただけだった。
ゆっくり書く予定の息抜き作品ですが、評価が高ければ投稿頻度を増やしていきたいと思います。
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