第二話 終わりと始まり
家に帰ってからもお父さんやお母さんが心配してくれたが、僕は正気を失ったように布団にずっと横になっていた。
それから何日か経ってから、お母さんがしびれを切らして僕に外に散歩にでも行くように言ってきた。
僕は行くところもないのでただ町を歩いていた。
すると、後ろから声を掛けられた。
「おい、そこのお前!」
振り向くとそこには、僕と同い年ぐらいの少年が三人立っていた。
「お前、『飼育パートナーなし』の男だろ?儀式の日、お前がそう言われた後にパー トナーランクAと契約を果たした二人の内の一人。ゴラギエ・サモンズだ!こいつらは俺の仲間とそのパートナーたちだ。
お前、俺たちと一緒にダンジョンに行くぞ。パートナーなしだったら一緒に冒険する仲間もいないだろう?俺たちが一緒に行ってやるよ。」
僕はその言葉に絶望の暗闇の中一筋の光が差し込んだように思えた。パートナーのおらず冒険するのも絶望的で、ゴートテイマーへの道が閉ざされたと思っていたがそんな僕と一緒に冒険しようと誘ってくれる人たちがいたのだ。
僕はその誘いを喜んで受けることにした。
「本当?ありがとう!僕はエンニオ・ミドル。よろしく。」
「おう。よろしくな、ミドル。」
そういって、僕らは握手をする。
そして、僕らは早速装備を整え、ダンジョンに向かった。
ダンジョンは地下100階層まであり、深くなればなるほど強い魔物がうごめいている場所であり、100階層まで攻略すると新しいダンジョンに生まれ変わる。最下層まで到達することゴートテイマーの条件の一つとされているが、今のゴートテイマーが前のダンジョンを攻略してから誰も最下層に到達できていない。
ゴートテイマーになるためにたくさんのテイマーたちが毎日特訓する場所となっている。
僕らはダンジョンに到着し、受付を済ませて早速一階層から攻略を始めた。
一から五階層はスライムやゴブリンなどの基本的に弱く戦いやすい魔物が出現する。
僕らの前に一匹のスライムが現れる。
「ミドル、お前は後ろの方に居ろよ。」
「うん。」
そういって、サモンズはランクAのパートナーである鷹、イーグルに指示をする。
「イーグル、ウィンド!」
は翼を強く羽ばたかせ、スライムに向かって攻撃する。
スライムは吹っ飛ばされ消滅した。
「俺らの隊長、優しいし強いしすごいんだぜ。」
そう自慢してきたのは、サモンズの仲間の一人のブマル・ハケスでパートナーはランクCの大きなカエル、フロッグだ。
「それに、親も貴族なんだってよ。」
話に加わって来たのは、もう一人の仲間ディニス・レノンでパートナーはランクBのムササビ、スクアラルだ。
「ハケスとレノンのパートナーも凄いよ。僕なんてパートナーすらいないんだから」
「そんなこと言うなよ。隊長についていけばこの先心配ないさ!」
そんなことを話しながら、ダンジョンの下層へ進んでいく。
魔物が現れればサモンズがイーグルで倒し、を繰り返しあっという間に五階層まで来た。
「ミドル!ちょっとそこの穴見てこい!」
「分かった。」
僕は何の疑いもなく見に行き、穴を覗き込む。とても深い穴だった。
「サモンズ、何もないよ。」
僕はそう告げ、振り返ろうとすると後ろから何かに押される。
「えっ?!」
僕は何が起きたのか分からなかった。
時間がゆっくりに見える、感じる。
そして何が起きているのか、理解する。
落とされたんだ。彼、サモンズに。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
サモンズは落ちる僕を見ながら、そんなことを口にし、そして仲間三人と笑っていた。
そして、三人は僕からは見えなくなった。
僕は騙されたのだ。
簡単に信じた俺がバカだったのだ。
僕は死を覚悟しながら、長い長い穴の中を永遠とも感じられる時間落ちて行った。