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家に帰ってゲームをしていると誰かから電話(無料アプリ)が来た。片手で通話ボタンを押して、漫画を読み続ける。
「なんでおいて帰ったんだよー! この薄情者~!」
「うるさい、近所迷惑になるからやめろ」
「うう…ふぇ…」
「泣いているの?」
「泣いてはないけど、悲しい気持ちになっています。僕は怒っています」
「なんで?」
「置いて帰ったことにだよ!」
「俺は最初に言ったぞ?」
「僕は了承していない!」
「そうだな」
「この薄情者!」
「それで、どうだっだ? サッカー部。やっていけそうか?」
「それがさ…」
友人は半泣きのような感じで話してくれた。
どうやら明が帰ってからも顧問は来ることなく、部員同士で好きにグラウンドでサッカーをしていたらしい。それも友人以外の部員は既に打ち解けているようであって、なかなか溶け込めなかったようだ。
それだけならまだいいんだが、問題はこの後
友人は部員の人に「ここは俺たちの部活だから、部外者が出て行ってくれない」と囲まれながら言われたそうだ。自分よりも体格の大きい人に囲まれながらだったらしい。どうやら彼らは遊び場に虫が入ることを良しとしないで、友人を追い出したそうだ。
「でもよかったじゃないか。軽症で済んで」
「何を~!」
「だってさ」
一拍おいて、手に持っていた漫画を閉じる。
「もし早い段階でそれを知ることが出来なかったら、このままズルズルと入部させられて、お前多分雑用係でボールを蹴ること自体出来なかったと思うよ。想像してみ。もし気持ち悪い笑顔でようこそとか言ってきた先輩の言うことを聞いて、そのまま雑用全部押しつけられて、顧問が起こったら自分のせいにして、お前のことを一切気にせず遊び続けるような連中と一緒にいること」
「そ、そんなこと」
「あるんだよ、どいつもこいつも面白半分で人をからかって場合によっては隔離までしてきて、少数を攻撃して、手出しできないようにして遊んでくる奴らが。むしろそいつらに感謝するべき。かなり早い段階で本性を見せてくれてありがとうって」
「…」
画面越しに息をのむ音が聞こえる。
「それにお前がその中に溶け込めないって思った時点で、溶け込むのは無理があるんだよ。溶け込めたと思い込んでいるだけ。それよりは、自分が好き勝手出来る部活か関係を作っていけばいいんだよ」
「……そういうものなのかな」
「俺はそう思っている。これはあくまで俺の考えで、お前の考えじゃないから、お前が考えて決めな。サッカー部に入部するかどうか。もしかしたら和解出来て打ち解けるかもしれない。だけど俺はその可能性は限りなく0だと思っている」
「…ありがとう」
「何が?」
「そうして遠慮なくビシっと言ってくれて」
「そうか?」
「…うん、良いのか悪いのか分からないけど、ビシっと言ってくれただけありがとう。少し考えてみるよ…」
「そうか…」
「ごめん、そろそろ夜ご飯だから落ちるね」
「おう、おつかれ~」
電話をやめて、漫画を読み直そうと思ったら部屋の入り口付近から音がした。なんだろうと思ってそっちを見ると
「…不法侵入?」
「違うわ!」
そこには茜がいた。